自民党政権、福島への全員帰還を断念す

うーん。

ある意味、残念な決定ではあるが……。

<政府・与党>福島「全員帰還」断念…困難区域「移住を」

毎日新聞 10月30日(水)7時30分配信

 政府・与党が検討している福島復興加速化案の全容が29日、分かった。年間積算放射線量が50ミリシーベルト超の「帰還困難区域」について、帰還まで長期の時間がかかることを明確にした上で、移住先で住宅を確保できるよう賠償金を手厚くする。政府が事実上、「帰還できない」との見通しを示し、移住による生活再建を促すことにつなげる。避難した被災者の「全員帰還」を原則としていた対策を、大きく転換させることになる。

この決定は、冷静に判断すれば仕方が無いだろう。いや、寧ろ切り方によっては画期的な判断だと言えるかも知れない。


政府与党の福島復興加速案の骨子は以下の通り。

<住民帰還>

  • 早期帰還や移住者の住宅確保に賠償拡充
  • 帰還困難区域は帰還までの年数を明確化
  • 放射線量年間1mSvは長期目標。個人の実際の線量データを基に被曝低減策

<除染・中間貯蔵施設>

  • 除染は帰還可能区域を優先
  • 現行の除染計画実施後は、公共事業などの視点から国による実施を検討
  • 国が費用確保を含めて放射性廃棄物の中間貯蔵施設を建設・管理・復興財源は使わず、エネルギー政策の中で財源確保に努める

<廃炉・汚染水対策>

  • 国の法律的立場や資金拠出規模を明確化
  • 東電の合理化徹底が国の関与の大前提

ざっと見て、民主党政権がやってきた砲身をただし、現実路線に切り替えたと言う事だろうな。


ただ、いくつか気になる点もある。

> 放射線量年間1mSvは長期目標

放射線量1mSv/年というのは、長期目標とは言えイタダケナイ。帰還断念、と言う「苦い」方針を選んだのなら、除染範囲を最小限に留めるべきだ。

除染して、放射性物質を取り除くというのは、実はお為ごかしに過ぎず現実的では無いケースが多々ある。だって、それは多くの場合、放射性物質を移動させるに過ぎないからだ。

例えば、森とその風下にある街があるとしよう。

森の木々や表土に放射性物質が付着している場合、風下の街で幾ら除染をしたところで、風が吹けば街の放射線量は増加してしまう。つまり、街の方を除染する意味は殆ど無い事を意味する。じゃあ、森を除染するのか?というとこれまた困難だ。森にある立木一本一本を除染し、表土を取り除き、下草を刈り……、膨大な作業量となる上に、キリが無い。

そして、この除染作業をすると、大量の土砂や枝、枯れ草、枯葉などが生じてしまう。これは「低レベル放射性廃棄物」として処理せざるを得ず、現実問題はどこかに袋に詰めて保管だ。

壁や屋根、道路などに付いた放射性物質は、洗い流すしか無く、それはつまり下流に放射性物質を移動させる行為に等しい。

 

この事は、例えば自民党の佐藤議員などは十分に承知のハズ(同じ趣旨の質問を野党時代にしている)。

除染をどの程度までやるか、ということを決定するのは非常に難しい問題となる。むしろ、積極的な除染を諦めるというのも一つの手だと考えていると思われる。

 

放射性物質は、半減期が来て、何れは放射線を出さなくなる。解決を時間に任せるというのも、一つの手段だと捉えるべきだろう。そんな無責任なことを、政府は言えないのかも知れないが。

よって、今回の骨子には、「除染をする」、「帰還困難地域を定める」とあるが、除染費用と、帰宅困難者への賠償のバランスを考えて帰宅困難地域を確定するといった手法に走るのでは無いか?と、想像される。

被災者によって、故郷に帰ることは大きな希望なのだろう。だが、寧ろ期限を切っておくことの方がより意味があることとなる可能性もある。

そうであるならば、除染で無限に金を使うよりは、より現実的な判断だろう。


廃炉や汚染水対策に関しては、もうそろそろ東電を関わらせるべきでは無いのかもしれない。 

> 国の法律的立場や資金拠出規模を明確化

> 東電の合理化徹底が国の関与の大前提

こんなことを言って居るが、いつまで経っても出口の無い汚染水対策を東電にだらだらとやらせておくより、税金を投入して短期集中型でカタをつけるべきなのが、汚染水対策なのだ。そして、廃炉もまた然り。

廃炉や汚染水対策など、民間の事業者にとっては何の利益にもならない負の事業なのだから、国が請け負ってさっさと終わらせた方が良いのである。

 

無論、電力事業者から一定の廃炉費用を徴収すべきなのかも知れない。税金をそんなところに投入するということは、異論もあるのかも知れない。が、この辺りの采配はまた別途考えるべき話である。

一番の問題は、汚染水問題と廃炉が風評被害をもたらして、周辺地域の利益を損ねる部分が問題なのだ。

 

安倍氏は、国の責任でやると判断したのだから、いつまでも東電任せ、東電に責任押し付けでは話にならない。

 


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