差し迫る原発廃炉の問題と40年ルール

ちょっと前にも触れたのだが、やはりこのニュースが出てきた以上は、触れていかねばならない。

<関電・原電>老朽原発廃炉を決定 「40年ルール」初対応

毎日新聞 3月17日(火)10時50分配信
 関西電力は17日午前、臨時の取締役会を開き、運転開始から40年を超えた老朽原発の美浜原発1、2号機(福井県美浜町)の廃炉を正式に決定した。関電の八木誠社長は、福井県庁で西川一誠知事と面会し、理解を求めた。
ついに来たと言うべきか。

まずは先日の記事から。

この記事で、最終処分場の問題を加速せねばならないという結論は書いた。この結論に異論を唱える人はあまりいないだろう。だって、現状では国内に放射性物質の中間保管施設も最終処分場も存在しないからだ。

今、日本の国内にある放射性廃棄物はどうなっているのか?と言えば、原発の敷地内に一時保管というの一般的に行われ、一部の使用済み核燃料だけ青森の再処理施設内に「処理を行う」という名目で保管されている。

たったそれだけである。

つまり、放射性廃棄物は行き場が無い為にずっとストックされ続けているのだ。


話は変わって、廃炉の話。

日本の原子力発電所のうち、「40年廃炉ルール」に該当する原子炉はどれだけあるのだろうか?
現在は2015年なので、1975年より前に建設されていれば該当するわけだ。

  • 敦賀発電所 1号機(1970年3月14日運転開始)35.7万kW
  • 美浜発電所 1号機(1970年11月28日運転開始)34万kW
  • 美浜発電所 2号機(1972年7月25日運転開始)50万kW
  • 高浜発電所 1号機(1974年11月14日運転開始)82.6万kW
  • 高浜発電所 2号機(1975年11月14日運転開始)82.6万kW
  • 島根原子力発電所 1号機(1974年3月29日運転開始)46万kW
  • 玄海原子力発電所 1号機(1975年10月15日運転開始)55.9万kW
以上7基が該当する。紫色が今回廃炉が決定された炉である。
このほかに、既に廃炉が確定しているのが10基ほどあるので、日本国内で廃炉技術を進めるのに待ったなしの状況である。

ついでにリーチがかかっているヤツも紹介しておこう。
  • 東海第二発電所 1号機(1978年11月28日運転開始)110万kW
  • 美浜発電所 3号機(1976年3月15日運転開始)82.6万kW
  • 大飯発電所 1号機(1979年3月27日運転開始)342.3万kW
  • 大飯発電所 2号機(1979年12月5日運転開始)117.5万kW
  • 伊方発電所 1号機(1977年2月17日運転開始)56.6万kW

結構な数の原発に「廃炉」までのリーチがかかっているが、コイツラは延長手続きを検討されているのだと思われる。


では、さっさと廃炉にすれば良いじゃ無いか、と言う風に思う訳だが、そう簡単な話では無い。

 美浜1、2号機と敦賀1号機は、1970~72年に運転開始し、老朽化が進んでいる。改正原子炉等規制法では、原発の運転期間を原則40年とし、例外的に1度だけ最長20年の運転延長を申請できる。しかし、原子炉が老朽化していないか厳しくチェックする特別点検を行った上で、原子力規制委員会の新規制基準をクリアしなければならず、多額の安全対策費用が必要になる。3基は出力規模が34万~50万キロワットと小さく、両社は運転延長しても採算が取れないと判断したとみられる。八木社長は、廃炉決定の理由を「工事費用やこれからの稼働期間を総合的に判断した」と説明した。

実のところ、原子炉の対応年数というのは科学的根拠に基づいて決められたものではなく政治的意味合いが強い。

 

技術者でさえ、寿命は10年程度だという人もいれば50年動かしても問題無い、という人もいる。じゃあ何故40年ルールは決められたのか?といえば、メーカーが原子炉設計時に想定した寿命が30年~40年だから、なのである。

あとは、アメリカが40年ルールを使っているから、だろうか。

ただし、アメリカの場合は点検を経て80年まで延長できる法制を採ろうとしている。アメリカの真似っこと言うと聞こえは悪いが、日本のいつもの手であるのも又事実だ。


そもそも40年の寿命自体に問題が無いのか?という議論もあったようだが、現状では10年毎の経年劣化管理が義務づけられている。

そして、アホほど分厚い資料を作って、点検項目を列記し、それを書類的に漏れが無いかを点検し……、って、現物見ろってば(苦笑

 

危うい40年廃炉 特別点検すれば最長20年延長

2013年4月4日
 原発の運転期間を原則四十年に制限する制度(四十年廃炉)に関し、原子力規制委員会が三日、例外的に最大二十年間の延長を認める場合の基準を明らかにした。原子炉や建屋の健全性を、これまでより詳しく調べる「特別点検」を電力会社に義務づけるという。ただ、老朽化で原子炉がどのくらいもろくなるかなど重要な基準が固まっていない問題もあり、運用しだいでは制度が形骸化する恐れもある。

悪名高くなってしまった東京新聞を引用しておくが、40年ルールはあくまでルールであって、現実に則したモノではない。

まあ、この新聞のアホな所は、比較的新しい原子炉にも40年ルール適用を厳格にしろと結論している所だ。

僕としては逆に炉の消耗に応じて廃炉にすべきだと思っているんだけどね。

何故なら、設計思想や実際に用いられている素材の進歩などを勘案すれば、世代の新しい原子炉程長く保つハズであり、しかし、実際に使ってみたら理論上ではOKでも現実に即していなかった、なんてことは良くある話だからだ。


もちろん、炉毎の評価なんてそんな面倒な事は出来ないという議論もあろう。

が、原子炉の運用手順として1年程運転したら点検して再稼働というサイクルを繰り返すのである。この定期点検で相当多くの項目を点検しているのであり、劣化の程度に応じて補修もされる。

劣化具合が見逃されれば悲惨な結果になるだろうが、これまで日本の原発は40年以上運転されてきて、ある程度のノウハウもある訳だ。過剰な安全対策は何も利益を生み出さない。

 

加えて言えば、日本に立てられている原子炉は数種類ある。類型としては加圧水型と沸騰水型だ。当然、劣化しやすい部分は違うし差が出てくる。一律40年で廃炉という手続き自体がおかしいのである。


ただし、法律で40年という数値が決められた背景の怪しさはともかく、何処かで分かり易いラインを引いて判断するという手続きが必要であったことは理解できる。

 

政治的には分かり易さというのは大変重要だ。

もちろん実際には、40年以上使える炉も沢山あり、アメリカはアメリカの事情もあって再延長可能な方向で動き出しつつある。

日本の40年ルール+延長20年というのは、そうした複数の事情を鑑みた妥協の産物といえよう。良くも悪くも政治的な落とし所がそこだったと言う事である。


で、現実はどうなのか?というと、実際に延長手続きをしたのは、というと高浜原発のみというのが現状だ。

高浜原発で特別点検 運転開始40年、延長へ手続き

2014年12月16日19時52分
関西電力は16日、高浜原発(福井県高浜町)1、2号機で進めている特別点検の一部を報道陣に公開した。特別点検は、運転開始から40年を超えて原発を最長60年運転するために必要な手続きで、高浜原発が全国で初めて。

80万kW以上発電出来る能力があるのならば、もうちょっと使いたいというのが関西電力の本音なんだろう。


さて、次は廃炉の手順などについて。

手順
これが、福島第1原発の廃炉の手順である。想定されている手順のウチ、通常の廃炉手順と違うところは「溶融燃料の取り出し」という作業がある点だ。


しかし、福島第1原発にせよその他の原発にせよ、廃炉にする為には、

  • 廃炉技術の確立
  • 放射性廃棄物処分場の決定と建設
  • 放射性廃棄物処分場の警備方法などの検討

とまあ、これくらいの項目をこなさねばならない。が、今のところ何れも目処が立っていない。


いま、一生懸命廃炉作業がやられているのは東海発電所の日本初の商用原子炉で、16.6万kWの炉である。


日本初の廃炉プロジェクトが始まったのは1998年に営業運転が始まって以降のことで、実は原子炉解体開始は2019年の予定。
2014年から解体が始まる予定だったが……、解体撤去物等搬出装置の導入準備が滞っているため5年予定が延期されたのである。

 

延長理由に、搬出装置云々と書いてあるが、実際は高レベル廃棄物処分場が決定されていないため、と見るのが正しいだろう。
何しろ、搬出装置が出来ても搬出場所が無ければ作業は出来ない。

 廃炉は20~30年かかる長期の作業となるが課題は多い。放射能で汚染された建屋の処分場がないことや、貯蔵プールにある使用済み核燃料の最終的な処分方法は決まっていない。

僕に理解できないのは、こうした廃炉方針が決定しても実際に作業を行うにあたって、最終処分する場所がいつまで経っても決定出来ないことだ。


これでは40年ルールの形骸化にも繋がる

そりゃそうだろう。運転を止めたところで、放射性廃棄物の一部は人間の人生からすれば永遠に等しい時間、無害化されないのである。処分待ちの炉が増えれば、廃炉を先延ばしにしようというバイアスだって働きかねない。

「将来の人の知恵に任せよう」とか暢気な事を言っている場合では無いのである。

 

ちなみに、放射性廃棄物の年間発生量は、原発が再稼働したとして国民一人あたり130g程度だと言われている。原子炉を再稼働すれば、一日辺り40t程度の放射性廃棄物が生み出されるそうな。

単純計算すると、年間1万5千t程度の放射性廃棄物が出てくることになる。

この放射性廃棄物の量は、一般人の感覚からすれば相当な量のようにも思えるが、原子力発電所の原子炉を1基廃炉にすると、20万t程度の放射性廃棄物が出来てしまうと言われており、この量と比較するとたかが知れている。

そして、1日40tという数字は使用済み核燃料だけに着目している数字なので、使用前の燃料もカウントする必要がある。だって、使用前の燃料も放射性物質だからね。で、日本の核燃料の潜在備蓄量は2.35年分あると言われている。

つまり、放射性物質の総量は原発を再稼働しても大きく変動しないと言う事だ。今、全ての原子炉を廃炉にすれば、それらは全て放射性廃棄物になる可能性がある。


得られる結論は至極簡単であり……、今すぐ全て廃炉にしても、再稼働をしても放射性物質の総量はたいして変化が無いと言うことだ。これは前の記事でも触れたね。

反原発派は、やれ「トイレの無いマンションだ」だの、やれ「ホウシャノウガー」だの、やれ「フクシマガー」だの、色々言っているが、放射性廃棄物の処理やら廃炉の話をすると黙ってしまう。

脱原発だろうが卒原発だろうが、放射性廃棄物処理問題は消えて無くならないのにである。


だとすれば、現実的な落とし所は、

  • 40年ルールに抵触しない原発は速やかな安全確認の後、再稼働をさせる
  • 第3世代までの原発は新たに作らない
  • 放射性廃棄物の処分場を作る

と、こんな感じでは無いだろうか?

 

え?再稼働するとリスクが危ない?(笑)

稼働中の原発で事故が発生すれば、停止中の原発で事故が発生した場合に比べて事故が拡大するリスクが高いのは事実だが、福島第1原発の事故の際に1~3号機は稼働中だったが、4号機は分解点検中であった。1~3号機は地震発生により自動停止している。

にもかかわらず1~4号機全てが破損してしまった。離れた場所にあった5号機、6号機は停止中であり、無事だった。そして、全て廃炉の予定となっている。ここから分かることは、地震の被害ではなく津波の被害で事故が発生したことと、停止中だろうが、福島第1原発のような惨状を招くリスクがあると言うことだ。

ちなみに、三陸海岸にあり同じように津波の被害にあい、13mの津波が押し寄せたことが記録されている女川原発は、福島第1原発のような状況にはなっていない。電源喪失も1号機のみであった。

 

つまり、再稼働は絶対にダメ!というのは、感情論に過ぎない。



え?2番目の項目の「第3世代云々」とは何なのかって?
いや、安全性に問題があるのなら、安全性の高い原子炉なら、今の原子力発電所の敷地内に作るのは問題無かろう?という話。
これから建設される原子炉があるとすれば、それはリスクに見合った高い経済性と安全性を備えた原子炉しかあり得ないのだから。現実的にはなかなか難しいんだけどね。

流石に3番目の方針について異を唱える人はいないだろうが、だが、いざ地元に放射性物質の処分場や保管所が出来たら、多くの人が反対するだろうことは想像に難くない。しかし、最終処分場や保管所のリスクは原発とは又異なるのである。

その辺りは国が場所を選定した上で、その場所に理解を求めるしか無い。海外にという意見もあるようだが、更にハードルは高いだろう。現実的には国内に一時保管所を作り、無害化する技術を模索していくしか無さそうだ。


こうした事のためにも、最低限の時間稼ぎ必要な訳で。その為の再稼働である。

時間稼ぎしている間に、高効率の火力発電所の建設だとか、新燃料の模索だとか、核融合の開発推進だとか、色々やればいいじゃないか。

追記

決断は早かったな。

<原発>玄海・島根2基を廃炉…九電・中国電が決定

毎日新聞 3月18日(水)11時18分配信

 九州電力は18日午前、臨時の取締役会を開き、10月に運転開始から40年を迎える老朽原発の玄海原発1号機(佐賀県玄海町)の廃炉を正式に決定した。中国電力も同日午前の臨時取締役会で、既に40年を経過した島根原発1号機(松江市)の廃炉を正式に決めた。

妥当な決断だとは思うが、さらに放射性廃棄物処理の手段を用意する必要が高まった。

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