韓国で開発されたらしい「スマート原子炉」

えっ?!

韓国独自開発「スマート原子炉」、サウジに輸出へ

記事入力 : 2015/03/04 08:43
 韓国・サウジアラビア両政府は3日、韓国が独自開発した中小型原子炉「スマート」をサウジアラビアに2基以上建設する内容の覚書を交わした。
いつの間にそんな原子炉を開発したというのか?


韓国の原子炉事情はかなりお粗末な状況だったと、個人的にはそう理解している。それなのに、いつの間に韓国は中小型原子炉などを開発したのだろう?驚愕である。
出力10万キロワット級の「スマート」は、大型原子炉の10分の1の規模で、韓国原子力研究院が中東など水不足の国家に輸出するために開発した世界唯一の中小型原子炉だ。
じつは、小型原子炉のアイデアはかなり前からある。
東芝が開発した4S炉はビル・ゲイツが注目していた話は以前にも紹介した。
この記事で紹介した4S炉、東芝の新しく提唱した技術で設計された炉なのだが、残念なことに立ち消えになってしまった模様。発電規模は10MWe~50MWe級の小型原子炉で、かなり有望視されていたはずなんだけど。
ただし、技術的に液体ナトリウムを冷却に使うなどの点から実用化には困難性もあると指摘されている。続報を聞かない背景にはそうした事情は関係あるのかも知れない。
なので、実証実験の噂さえ聞かない韓国がこれをそう簡単にコピーできるとも思えない。


正直、韓国の原発関連技術について、素人の僕が正確に把握する事は困難である。しかし、これまでの経緯を整理すれば、ある程度の状態を推察することは可能だ。
韓国標準型原子炉(KSNP)と呼ばれている加圧水型原子炉は、スイスのアセア・ブラウン・ボベリ・アトム・コンバッション・エンジニアリング社(ABB-CE社)が開発した技術であるSystem80+をベースに開発したAPR1400が最新だと報じられている。
ABB-CE社のSystem80+はコンパッション・エンジニアリング社(現ウエスチングハウス社:東芝傘下)が設計した加圧水型軽水炉で、1996年頃に設計されている。これを元に標準化をしたのがAPR1400であり、2000年頃までに開発が終了しているとのこと。
ただし、このAPR1400も蔚珍原子力発電所(ハヌル原発)で採用されているものの、1号機は2016年6月に完成予定である。
つまり、APR1400ですら営業運転は開始されていないのだ。
なお、System80を標準化したOPR-1000という原子炉は霊光原子力発電所(ハンビッ原発)の5号機と6号機に採用されて2002年より営業運転が開始されているが、2012年に発覚した品質保証書偽造事件で、多数の部品の品質が低い事が発覚しており、営業運転は中止。その後どうなったかはよく分からない。


ちなみにハッキリした情報は得られていないのだが、KSNPと呼ばれる炉は何故か韓国国内に建設されたSytem80やSystem80+の炉も含む模様。よって、韓国内にあるKSNPは以下のような感じらしい。
名称 状態
蔚珍原発 3、4号機 営業運転中
蔚珍原発 5、6号機 建設中
霊光原発 3、4、5号機 営業期(部品偽装で停止)
霊光原発 6号機 建設中
新古里原発 1号機 営業運転中
新古里原発 2、3号機 試験運転期(部品偽装で停止)
新古里原発 4号機 建設中
新月城原発 1、2号機 試験運転期(部品偽装で停止)
かなりの数が建造され、或いは建設中である。この他にも多数の計画があるらしい。しかし、部品偽装事件のがあってから、建設中の原発に使われる部品の品質に問題があると分かり、多くの原発が停止している。
一体、韓国原子炉における「標準化」とは一体何だったのか?


まあ、その様な疑問はともかくとして、韓国の原子炉は加圧水型の原子炉が主流であり日本のように沸騰水型原子炉は皆無であることが分かる。
よって、「スマート」なる原子炉が沸騰水型原子炉という可能性は極めて低い。だとすれば加圧水型か?ということなのだが、これも可能性は低い。
AP1000というウエスチングハウス設計の第3世代+の原子炉が存在するが、加圧水型で現行のものより小型化、簡略化が可能となったものである。現在は、支那にて建設が進められており、2017年から営業運転が行われる予定となっている。
ただし、このAP1000は1000MWe超の電気出力を有している。そもそも、中小型原子炉というのは、技術的観点から見てメリットが薄い。これは、低出力の原子炉でも必要構成要素を備えると建設費用が嵩むため、対費用効果かが薄くなるからである。AP1000の前身のAP600も経済性の問題が指摘され、発電能力を拡大した経緯がある。

上で紹介した東芝の4S炉はこの点を克服した、小型の原子炉だったのだが……。
もちろん、4S以外の技術で小型化を目指した炉もあるが、いずれも実用レベルには至っていないハズ。にもかかわらず、「韓国独自技術」とやらで開発した小型原子炉は、販売できるレベルになっているとは……??


かなり疑問が残るものの、しかし、こうした話が突然出てきた背景は、ある程度推測できる。
1つはこちらの記事が関連する。

朴大統領、中東4カ国歴訪…ICT・医療・金融韓流に足がかり

2015年03月02日16時03分
  朴槿恵(パク・クネ)大統領がクウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールなど中東カ国歴訪のために1日、出国した。
  朴大統領は歴訪期間中に4カ国首脳らとそれぞれ二国間会談を通じてエネルギーや保健医療、情報通信技術(ICT)など高付加価値の新しい成長動力分野での協力拡大を話し合う予定だ。朱鉄基(チュ・チョルギ)外交安保首席は「韓国企業の中東進出50周年を迎えて第2の中東ブームを韓国経済の新たな成長動力として活用するというのが今回の歴訪のテーマ」と説明した。朴大統領も同日の出国に先立ち、三一節記念演説で「今回の歴訪を通じて第2の中東ブームで第2の経済復興のための土台づくりができるように総力を尽くしてビジネス外交を行う」と話した。
実は、現在クネクネ主催のトップセールス外交が中東4カ国で行われているのである。
これは、韓国経済がピンチで、輸入も輸出も縮小傾向にあり、利益が急激に萎んでいるという危機的状況にある中、F1は違約金が請求され、平昌五輪も資金難から開催すら怪しい始末になり、更に各企業の外資債権が焦げ付き始めているという状況からである。
え?韓国では現在、過去最大の貿易黒字だ?トリプルクラウン??
確かに、韓国は現状で過去最大の貿易黒字額をたたき出している。しかしこれは、輸出額より輸入額の減少が加速度的に大きくなっているだけに過ぎない。


そして、クネクネが中東歴訪しなければならなかった理由はもう1つある。
ここいらでちょっとだけ言及しているのだが、実は2009年に韓国はUAEでの原発建設工事を受注している。

韓国、UAEの原発建設工事を受注…計400億ドル規模

2009年12月28日07時28分
   韓電が主導する「韓国型原子力発電所コンソーシアム」が27日(現地時間)、アラブ首長国連邦(UAE)が発注した原子力発電所(原発)建設事業者に選ばれた。
このニュースはオドロキをもって世界に報じられたのだが、しかし、この建設工事受注にはからくりがあったことが後から判明する。
どんな話かというと、受注にあたって以下の条件を付けたのだ。
  • 原子炉建設費用186億ドルのうち、韓国から100億ドルを融資
  • 原子炉の稼働保証60年(事故発生などの際のトラブル対応含む)
  • 原子炉故障時の修理保証
  • 運転、燃料供給などの管理
  • UAE原発警備を、韓国軍の駐留警備によって賄う
  • 2015年9月までに完工しない場合には、遅延損害賠償金を支払う
いやもう、どこから突っ込めば良いのやら……。
これらの条件のどれ1つとっても無理である事は、説明するまでも無い。
つまり、クネクネは好むと好まざるとこのUAE原発問題を何とかしなければならないのである。


今回のスマート原発受注に関しても、こうした特殊な条件が設定された可能性はかなり高い。
事実、後追いでこんなニュースが報じられている。

韓国、サウジと「スマート原子炉」合作へ…2兆ウォンで2基建設

2015年03月04日09時50分
  朴槿恵(パク・クネ)大統領は3日(現地時間)、サウジアラビアのサルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ国王と首脳会談を行い、「スマート(SMART)原子炉」輸出に関する了解覚書(MOU)を締結した。
あれ?合作??
記事の中でも言及されているが、この話、かなりおかしな部分が多いのだ。
  青瓦台(チョンワデ、大統領府)関係者は「海外に原子力発電所を輸出するには試験用原子炉を建設して発電力についての証拠を提出するべきだが、現在、韓国内にはスマート原子力発電所が1基もない。このためサウジアラビアとこのような協力を行うことにした」と説明した。
  「スマート原子炉」は韓国技術で開発した10万キロワットの中小型原子力発電所で、大型原子力発電所の10分の1水準だ。同日のMOU締結でスマート原子炉2基の輸出契機を構築したと青瓦台は明らかにした。
現在、韓国の中にはスマート原子炉が1基も存在しない。実験炉や実証炉すら無いのである。


あーあ。
  青瓦台関係者は「早ければ2016年に2基以上の最初の原子炉建設が可能」としながら「両国は共同会社を設立し、サウジアラビアに追加で原子炉を建設することはもちろん、第3国への輸出も推進していく」と話した。サウジアラビアは2040年まで約18ギガワット規模(12~18期)の原子力発電所を建設する予定だ。

そもそも、KSNPですらマトモに機能していない状況なのである。
UAEに輸出する予定と同型の原子炉は新古里原発のOPR-1000と呼ばれる型の原子炉で、その建設中の3号機は2014年12月26日にガス漏れ事故を起こしている。
この事故が起こったこと自体が問題では無く、問題は漏れたガスが窒素ガスで現場にガス漏れ警報器の設置が無かったという点である。又、換気システムも稼働していなかった。
問題は、ガス漏れ警報器の設置が規定や設計図に盛り込まれていなかった点だ。ただでさえ偽装部品問題で建設の遅延が指摘されていたが、設計ミスと思われるような事案が発覚し……、当然これはUAE原発の完工予定である2015年9月の期限に大きく影響するとみられている。



となると、この2兆ウォンで建設する2基のスマート原子炉とやらは、韓国が金を出して韓国の責任で作らねばならない違約金代わりのシロモノなのでは無いか?と、そんな邪推をしてしまう。

影もカタチも無い「スマート」原発は、グーグルの検索ワードでもランキングが上昇中だとか。
実は、秘密裏に開発された原発があった!という可能性もあるので、今後のニュースを見守りたい。

追記

どうやら、スマート原子炉なる話は、IAEAのサイトに紹介されている理論上の存在である様だ。

20150308

20150308-2

簡単に説明すると、蒸気発生器や加圧器、循環ポンプまでも炉心のある圧力容器の中に閉じ込めた簡略化したシステムらしい。

 

一見、ユニット化したことでメリットが大幅に増えるような気がするが、実のところ圧力容器は放射線を遮断する機能も備えているので、蒸気発生器や加圧器、循環ポンプは、原子炉稼働によって放射線によって汚染されてしまう結果に。

 

現在、福島第1原発の廃炉作業に最も苦心しているのは、放射線量の問題である。撤去作業が思う様に進まない理由や、汚染水が処理できていない理由もこの辺りにある(それ以外にも理由はあるが)。

つまり、蒸気発生器や加圧器、循環ポンプなどに何らかの問題が発生した場合、解体不能なこのシステムでは修理すら出来ないという(怖)


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