送電分離とガス自由化の意味

思い切ったことをやるねぇ。

20年に発送電分離=ガス自由化、17年―閣議決定

時事通信 3月3日(火)8時47分配信
 政府は3日、電力会社の送配電部門を別会社に移す「発送電分離」を、2020年4月に実施することを盛り込んだ電気事業法改正案を閣議決定した。都市ガスの小売りを17年をめどに全面自由化し、ガスを利用者に送る「導管」の管理・運営事業を22年4月に別会社化するガス事業法改正案も決定。通常国会での法案成立を目指す。
この結果、何が起こるのか?と言う話だな。


政府の目論見は、発送電分離によって発電部門に異業種からの市場参入をさせることによって競争をさせようという話なんだろう。
ガスも同様の扱いみたいだな。
電力会社もガス会社も戦々恐々と言ったところだろうか?

ただ、この方針で本当に問題が無いのかは疑問が残る。

発送電分離とは何なのか

順に考えていってみよう。
まず、「発送電分離」ということについて。
ぶんりいめーじ
イメージ図を引っ張ってきたが、電力事業は「発電」と「送電」の2つの業務内容がある。現在は、これを一律に電力会社が担い、一部の発電会社が電力会社に電力を売るスタイルとなっている。

基本的に、「発電事業」は電力を作るだけの事業で、「送電事業」は送電インフラの整備に関連する事業である。正確には電気を送る「送電」と電気を配る「配電」で分野が微妙に異なるのだが。
日本では送電インフラが未発達な時代に、発電事業と抱き合わせて公共事業という形で整備をしてきた。
理由は簡単。送電インフラの整備は、公共事業的な側面が強く不採算事業なのである。だから、儲けの出やすい発電事業と抱き合わせることで、送電設備の充実化を図ることを義務化させたのである。

発送電分離のメリット・デメリット

じゃあ、「発送電分離」をすることでどんなメリット、デメリットがあるのかという話に言及していこう。
ただ、一般的に言われるメリットについて、僕は懐疑的だ。

電力料金が安くなるという主張

発電会社を競争させて、異業種からの発電事業参入を捉することで、価格競争をさせて電力料金やサービスを競わせようという狙いがあり、これが上手く嵌まれば電力価格の低下が進むのだろうが、現実は厳しい様に思う。


日本において、再生可能エネルギー発電で安価に電力を作る事はほぼ不可能である。何れの発電方法においても、原子力、大型水力、火力の何れの発電方法よりも発電コストを下げることが出来ない。つまり、再生可能エネルギー発電には価格競争力が無いのである。


そして、大型の水力発電や原子力発電は巨大な資金力が必要な上に、行政手続きが煩雑で、用地買収は民間ではほぼ不可能。つまり、火力発電以外の発電方法は民間では絶望的だ。


となると火力発電でコジェネレーションを駆使しての効率化による電力料金値下げというのが現実的な路線なのだが……、燃料の殆どを海外からの輸入に頼っている日本にとって、スケールメリットを生かせない民間電力会社が、果たして電力を安く作る事が出来るかは、非常に疑問だ。


電力自由化で電気が安くなるためには、発電事業に参入した業者が安い電力を供給できることが前提だ。この前提が崩れると、もはや料金が安くなるなんてのは幻想になってしまう。現状は価格が固定されて発電事業者が電力会社に電力を売って一般家庭に電力を供給しているけれども、「送電会社」から「発電会社」に送電にかかる費用を請求され、「発電会社」が電気料金にそれを上乗せしたとしたら、果たして本当にそれでも安価な電力が提供できるのだろうか?


将来的に国内でエネルギーの自給自足が実現すれば、電力自由化のメリットも生かせるだろうが、現状では絶望的だな。
実際に、電力自由化を先駆けて行った諸外国は、軒並み電力価格が上がっているのだとか。

再生可能エネルギー発電の大量導入

再生可能エネルギー発電が発送電分離によって増大するという話は、FITありきの話である。が、FITの前提であった原子力発電での安定的な電力供給が崩れた以上、FITも成り立たないし、再生可能エネルギー発電が増える可能性も無い。つまり、これを語るのは意味が無い。

そりゃそうだろう、FITは電力会社が高い電気を高値で買い取ることが全体の制度である。電力会社が赤字体質になって高値で買うことが現実的でなくなれば、もはやこの制度は成り立たない。


再生可能エネルギー発電のコストは上で説明した通り、現状では採算割れとなっているので、お話にならない。

異業種参入が可能となる

発電事業に異業種が参入できることで得られる最大のメリットは、電力価格の低下だ。だが、これも上で説明した通り、異業種が発電事業で電力会社と勝負できるハズもない。


出来るとすれば、鉄鋼業界のように大量に熱を発生する事業を行っているところが、熱を回収して電力に変えるというスタイルを採ったり、ゴミ焼却場や屎尿処理施設・下水処理施設など、エネルギーを取り出す余地のある場所だ。

だが、これらの業種で発電を行うとした場合、副業として発電する程度の話となるだろう。事実、民主党政権時代に「埋蔵電力を掘り起こす」とか言って自家発電の増強を目論んだが、全体の電力需要から見れば雀の涙ほどの電力しか確保できなかった。
可能性のある業種も、電力発電をメインに仕事をしているわけでは無いので、事業計画によって発電量は増減する。よって、電力の安定供給に対してメリットとは言い難い。


排熱を利用するという観点から見れば。異業種から電力を安価に供給出来そうな気は駿河、電力需要とのバランスを考えれば、電力価格を下げることに貢献してくれるかは、かなり怪しい。

つまり、自由化によって異業種参入はあるだろうが、その効果は限定的だと思われる。

電力の安定供給を図ることが難しい

これは実際にアメリカなどで電力自由化した結果、停電が多くなったという実績が出ている。よって、電力の安定供給はかなり怪しいだろう。


日本の電力の安定供給っぷりを考えれば、酷いことにはならないかもしれないが、発電する側に最低供給量を設定できないことを考えると、期待薄だろう。
加えて郵政民営化で起こったような、僻地への電力供給サービスが一律料金で行えなくなる為、電気料金の地域格差が激しくなることが予想される。この辺りは法規制の網をかけて緩和出来る余地はありそうだが。


もちろん、僻地ではその場所に作った発電施設で発電すれば良いのだろうけれど、そうした土地に電力を送ることが不採算だと判断した会社が、僻地に発電施設を建ててまで電力を供給するかというと、かなり絶望的だろう。

電力価格の高騰が懸念される

地域格差も起こるり得るが、寡占状態の地域で電力会社が不当に価格をつり上げるというリスクも考えなければならない。これも実際にアメリカで実例があるようだ。
電力供給に市場原理を持ち込むとは、そういうリスクを抱えることなのである。

外資の参入によって市場均衡が崩れる

そして、日本で一番懸念されることは、これだろう。外資の参入による悪影響だ。

エネルギー供給は、現代社会において非常に重要度が高い事業になっている。これが外資に握られると、場合によっては外資の影響によって「価格高騰」「電力の安定供給の阻害」「政治的利用」といった状況も懸念しなくてはならなくなる。

支那や韓国、ロシアなどと電力網をつなごうという発想があるようだけれど、冗談にしてはセンスが無い。政治的理由でエネルギー供給が握りつぶされるウクライナのような状況を(まあ、あれはウクライナが悪いのだが)甘受できなければ、そんな妄言は吐くべきではない。

送電業者に重い負担

送電業務は、基本的にインフラ整備の事業を継続する事になるので、赤字体質になるのは避けられない。
加えて、僻地に発電施設を作った業者に「送電線を作ってよ」と言われ、ホイホイ作る様な今の体制を続けていては、更にコストは嵩むだろう。
更に、発電業者が配電について責任を負わない体制になる(市場原理に任せるので)と、送電業者が配電についてもバランスを考えねばならなくなる。
FIT制度が生き残って太陽光発電施設ばかりが増えると、配電バランスをとるために火力発電なり他の発電方法で不足分を補わねばならず、この分のコスト負担をどう考えるか?と言う点も問題だ。誰も発電しなかったら、電力はどこから調達すれば良いのだろうか?


今は、電力会社が責任を持ってやっているが、発送電分離が進むと一体何処がどのような責任をとるのか?と言う点はかなり疑問である。
現実的には、発送電分離は法的分離という手法が選ばれ、現在の電力会社が発電業務を行う子会社を作り、そこに委託して不足分の電力を補う方式になるだろうが、郵政民営化とは一体何だったのか?レベルに情けない事にはなりそうだ。

 

結局、発送電分離のメリットは殆ど無い

あれ?デメリットばっかりじゃね?と思った方、実はその通りなのだ。


些か悲観的な側面にスポットをあてて検討したので、当然、上手く行く可能性は残されている。だから、発送電分離にメリットが無いとは言わないけれど、冷静に考えればデメリットの方が多くなることは分かるだろう。

この話はガスに関しても似たような事が言えるので、改めてガスについて言及するのは避けておくが、「市場原理」万歳!といった市場原理主義者達の主張を鵜呑みにするのはかなり危険だ。

 自由化により、異業種からの電力・ガス市場への参入が活発化する見通しで、競争による料金低下が期待される。 
安倍政権の狙いは一体何なんだろうか。
現在の電力価格のコントロールが、電力会社からかなり不評なんだろうな、きっと。政治によって電力価格が低く抑えられるお陰で、赤字を垂れ流す現状がある。
 発送電分離をめぐっては「原発が再稼働しない中で進めれば電力経営の打撃となる」といった懸念が与党内から出ていた。経産省は2016年の電力小売り全面自由化前、20年の発送電分離の実施前、分離を実施してから5年以内の3つの時点で検証する。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS17H0G_X10C15A2MM0000/

実際に、電力会社に留意して段階的に検証しながら自由化を進めていくつもりの様だしね。
電力会社は、政府に対して原発再稼働か電力自由化を迫ったのだろう。そして、値上げが自由に行える姿を手に入れたいのだと言うことだという可能性はある。

電力は安定供給が一番大切

確かに、現状の電力事業やガス事業は、半民半官といった具合の立ち位置の業者がやっているので、体質改善が進まないし、不採算部門を抱えているような業務形態になっているのは事実だ。
東京電力はその代表例でもあるが、しかし、「あの東電」ですら電力の安定供給という意味では相当のコストを支払っていまなお維持しているのもまた事実なのである。


これらの企業の体質を改善する必要が無いなどと言うことを言うつもりは毛頭無いが、捨ててはいけない機能もあるのだ。果たして、自由化を実現した時にそれが守れているのだろうか?


国民はそれがどういうことなのか、しっかり考えるべきだ。

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