続、福井地裁の「もらい事故判決」について

福井地裁の事件について、判決文が公開された旨、コメントで指摘頂いたので早速目を通してみた。

平成27年4月13日判決言渡

平成25年(ワ)第51号 損害賠償請求事件(以下「甲事件」という。)

平成25年(ワ)第310号 損害賠償請求事件(以下「乙事件」という。)

主 文1 被告Aは,原告Bに対し,5233万2067円及びこれに対する平成24年4月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

~~以下略~~

判決文は、一般人には読み辛いねぇ。


とはいえ、行きがかり上、これを解説しておく必要があると思われる。

この記事を書いたときは、不勉強なこともあって右往左往してしまったが、色々とご好評も頂いた。

記事を書いた以上は、やはり間違った事実があったりしたことを確認すればそれを訂正する必要があるだろうし、そうあるべきだと思う。

だから、少々お付き合い願いたい。


ネットの世界とは恐ろしい物で、現場の写真がツイートされていたので拝借してきた。

事故現場

これが事故当時の物だという確証は得られないが、そうだとするとなかなか判決の印象も変わってくるなぁ。

こちらが現場付近の地図。

地図

判決文から「あわら市」から「坂井市」へ接続する道路だというから、ここら辺りで間違いなさそうだが、赤いピンのある場所はガードレールが無いので、この道路の何処なのかはハッキリしない。

ただ、印象としては見通しの良い直線道路だが、路側帯などもほぼ無く、狭い道路である。センターオーバーされたら、対向車線に逃げるしか無い状況だった事は間違いなさそうだ。


判決を読んで分かったことは、まず以下の関係である。

  • センターラインオーバーした車G
    • 車Gの運転手A、当時、居眠り運転をしていた
    • 車Gの所有者G(34)、助手席に乗っていて死亡。
  • 対向車線を走っていた車F
    • 車Fの所有者で、造園事業会社の代表取締役E
    • 車Fの運転手で、設計業務や現場監督を行う会社員F(45)

車Gを運転する運転手Aは、所有者Gと一緒に、前日に新潟県長岡市のコンサートに出かけ、不眠の状態で福井市に帰る途中であり、運転は大半が所有者Gが行い、事故より3時間前頃に運転手Aに交代したと説明されている。そして、所有者Gは助手席シートを倒し、シートベルト無しの状態で仮眠していたとのこと。

事故当時、車Gのエアバッグは運転席、助手席共に作動していたとのこと。

 

一方の代表取締役Eは、会社員Fを伴って近くのゴルフ場で開催されるゴルフコンペに参加するために助手席に乗っており、会社員Fは車Fを運転していた。

 

車Fは車Gに正面衝突されて事故を起こした。


事故現場は判決文の別紙に記載されているのだが、ネットには公開されていない模様。

ただ、ストリートビューを見る限り、車Fにとって対向車線に飛び出すしか避ける術は無い状況で(クラクションを鳴らしたり、停車すれば、事故の程度は軽減出来たと認定されているが)はあるが、対向車線に飛び出すにはなかなか勇気が要りそうな道路ではある模様。

 

事故発生時刻2014/4/30 7:14で、通常の注意力を持っていれば、対向車の動向は確認出来たと思われる。

ただし、当時、対向車線を走っていた車Fを運転する運転手Fは、道の脇に通行人を目撃しており、脇見運転を疑われている(裁判の中で、運転手Fの脇見運転であったという事実は認定されていない)。

又、車Fの前には2台の車が走っており、先行車1は車Fより128m、先行車2は車Fより64m以上離れていたと認定されている。そして、先行車1と車Gがすれ違って5秒後に車Gと車Fが正面衝突したと認定されている。

車Fから車Gを認識できたとされる地点は、双方の距離が50m程度離れていたと推定されている。双方の時速は50km/h程度であったとされる。50km/h走行時の停止距離は24.48mである。


……あれ?これ無理ゲーじゃね?

 

気付いた時点でブレーキを踏んだとして、相手側(運転手A)は寝ているのだからノーブレーキである。

 

実際、裁判官も、運転手Fの過失は認められないと判じている。

 

じゃあ、無過失じゃ無いか!!と、言う話にならないのが法律の面倒なところで、過失は認められないが、無過失とも認定できないんだって(汗)

 

自賠法3条は「無過失」であれば「適用除外」と言っているが、「過失」が無くとも適用はされる。

何故ならば、被害者保護を前提とした法律だからだ。


ただ、車Fから車Gを認識可能な距離が認定されていない(認定されたのは、実際に認識したであろうという距離)ため、お互いの車の位置関係や、車Fから車Gが回避可能な位置で認識できなかったと認定されれば「無過失」が認められる可能性は十分にあると思われる。

 

認定された事実から考えれば、判決の内容自体はおかしいものではない。

 

現状の判決では以下のようになっているが、上告すればこれが覆る可能性はありそうだ。

  • 運転手A が 所有者Gの妻B に 5233万2067円支払い
  • 運転手A が 所有者Gの両親C、D に 1500万5516円支払い
  • 運転手A が 会社員F に 1472万4000円支払い
  • 妻B が 会社員F に 981万5999円支払い
  • 両親C、D が 会社員F に 245万3999円
  • 代表取締役E が 所有者Gの妻B に 3112万7992円支払い
  • 代表取締役E が 所有者Gの両親C、D に 893万1998円支払い
  • 他訴訟費用を、持ち分に併せて支払う

あれ、ぶつかられた方はかなり損じゃね?

 

いやいや、そうでは無いのだ。

一方の死亡した所有者Gの受けた損害が大きいことと、他方のぶつかられた方の会社員F、代表取締役Eの受けた損害はそれ程大きくなかったことで、この様な金額の算定になった訳で、事情を勘案して会社員F、代表取締役Eの支払い額は減殺されている。

そして、運転手Aの分以外は何れも保険から支払われるのだろうと思われる。(コメントを頂きましたが、妻Bや両親C,Dに関しては、保険適用外になるかと思います)

 

あくまで相手側の被害に遭わせて、額が算定されるのであるから、並べてみたら理不尽であったとしても、判断され内容はおかしな話では無い。

まあ、理屈は分かるが、ぶつかられた上「過失」も無く、それでも支払いが発生するという、理不尽な印象は拭えない話ではあるよね。

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コメント

  1. まだ争う余地がありそうですが、少なくとも原発差し止めの例のトンデモ判決と同類などではないようですね。
    当初の、センターラインオーバーは無過失じゃん、という世間の反応も無理からぬものですし、結局福井新聞のミスリードということになるのでしょうか。
     ともあれ・・・・お疲れ様でした(笑)

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    1. 原発差し止めの裁判と続けてのあの記事でしたから、福井新聞の悪意は感じますが……、でも、ぶつかられた方は「やってられねぇ」と、そんな気がするのは確かですね。
      「過失」が認定できないなら「無過失」で良いだろう、という理屈は通用しないのが、分かりにくいと言うか何というか。
      今後、どう転ぶかは分かりませんが、注視していこうと思っています。

      削除
  2. わかりやすくまとめていただき、ありがとうございます。
    私も判決文をよみましたが、次の点が気になります。

    「車Fの所有者で、造園事業会社の代表取締役E」とまとめられている箇所ですが…
    判決文からは「車Fの所有者で、造園事業会社のE」と「車Fを運転していた、造園事業会社の代表取締役F」というに私は解釈しました。
    『【暫定版】福井地裁の交通事故判決の判決文が公表されましたので説明します』 https://note.mu/sho_ya/n/n716856494019 でも私と同様の解釈になっているようでした。

    あと「運転手Aの分以外は何れも保険から支払われるのだろうと思われる」とおっしゃられていますが、車Gの自賠責保険と任意保険は所有者Gに対しては使えないのと、妻Bと両親C,Dは、所有者Gの運行供用者としての賠償責任を相続したようなので、こちらも保険の対象外と思われます。なので、使える保険は車Fにかけてある保険のみ(つまりEとFの支払い分のみ)のように思います。

    いずれにしても、なんともやりきれない気分にさせられる事故だなあ、と思いました。。。

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    1. 前段のFとEの関係なのですが、僕も判決文を読んでずいぶん混乱しました。
      しかし、判決文の中にはこのような記載があります。

      >原告Fは、本件事故当時、被告Eの代表取締役の地位にあった者である。(p4)

      >被告Eは、F車を運転していた原告Fの使用者であり、原告Fは、本件事故当時、被告Eの業務に従事していた。(p7)

      被告Eが使用者であり、原告Fは被告Eの業務に従事していたと書かれていますので、やはりEが代表取締役で、Fが会社員と理解するのが正しいように思います。

      保険の関係については、分かりにくいですね。あとの方のコメントに頂いていますが、車Gの自賠責は車Fに使われたことは言及されていますから、たぶん支払われたのだろうと。
      妻Bと両親C、Dに関しては、ご指摘の通り保険対象外の可能性はありそうです。ここは訂正しておきます。

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    2. 私も判決文を読んで、EとFの関係についてはかなり混乱しました。
      さらに、原告B~Dの代理人(弁護士)のFacebookでは、車Fの保険契約は法人と言及されていたため、保険契約者=法人=造園事業会社と考えたので、もっと混乱した次第です。

      …ついつい、車Gの任意保険に家族限定特約がついていなくて、かつ車Fの任意保険に人身傷害と無保険車傷害がついていれば、裁判にならなかったように思ってしまいます。

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  3. 私の書いたコメント、少し間違ってました…
    今回の事故で使える保険は、車Fにかけてある自賠責と任意に加えて、車Gの自賠責が車F(の運転者)に対して使えました。判決にも車Gの自賠責から支払されたと書いてありました。

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    1. わざわざ訂正ありがとうございます。

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