インドネシア高速鉄道受注、敗北の理由

既に書いた記事に追記するか、新たな記事を書くかを迷ったのだが……。

<インドネシア高速鉄道>中国案、用地取得など波乱含み

毎日新聞 9月30日(水)23時12分配信
 【ジャカルタ平野光芳】日本と中国が受注を競ってきたインドネシア・ジャワ島の高速鉄道計画で、インドネシア政府は29日、中国案を採用する方針を日本側に伝えた。
昨日とはちょっと違う切り口で書いて行きたい。


内容としては昨日の記事の補強という位置づけだ。
この記事で、僕はこの様に指摘した。
インドネシアの大統領は、鉄道の性能では無く、支那と付き合うリスクを採ったわけだが、この話はなかなか危ない橋を渡ることになるだろう。
毎日新聞の記事は、まさにその点を具体的に指摘していた。
海外輸出の実績作りのためになりふり構わぬ売り込みを貫いた中国と、インフラ整備で外資に依存せざるを得ないインドネシア側の事情が一致し、日本の新幹線案は撤退を余儀なくされた形だ。ただ中国案にも課題は山積し、予定通りに実現するかは不透明だ。
その中で気になるポイントがいくつかあった。


まずは1点目。
 日本、インドネシア両政府は数年前から協力してジャカルタ-バンドン間(直線で約120キロ)での高速鉄道導入に向け、需要予測や地質調査など綿密な調査を実施していた。ところがこの幹部によると調査結果が「親中派」の関係者を通じて中国側に流出したという。実際、今年3月に中国が突然参入を表明してから、提案書提出までわずか5カ月。中国側が詳細なボーリング調査などを実施した形跡もない。
日本が足かけ7年の歳月を費やし、現地の需要予測、地質調査などを行い、2014年には2億6000万円もかけて事業化し、プランを提示したのに対して、支那はたった5ヶ月でプランを提示した。
今年3月に受注競争に参入表明し、10月に受注したのだから、実質7ヶ月で結果を出し、プラン提示は8月なので、たった5ヶ月でのプラン作成という恐るべきスピードである。
 「ルートも駅の位置も全部同じで、違うのは金額の見積もりだけ。これは明らかに先行する日本案のコピーだ」。中国が8月に提出した案を見たインドネシア運輸省の幹部は、毎日新聞の取材にこう証言した。
で、その内容は、日本の提示資料のデッドコピー。



特に驚くべき話は、ここ。

>ところがこの幹部によると調査結果が「親中派」の関係者を通じて中国側に流出したという。

インドネシアが支那に日本のプランの資料をリークしたというのだ。それも、デッドコピーが作れる程度にほぼ全てをリークしたというのだから、「違うのは金額の見積もりだけ」という話にも納得である。

この時点で、インドネシアの不誠実というか、国内でやれば間違いなく犯罪扱いになるやり方が問題視されるのだが、それは脇に置いておこう。

とにかく、金額の安いそっくりプランが支那から出てきた。
お金のないインドネシアにしてみれば、同じ内容で金額が安ければ、そりゃ、支那案を飲むよね。
中国鉄道
この写真、支那の高速鉄道で、CRH3型と呼ばれる電車のようだ。

CHR3型の基幹技術はドイツのシーメンス社から技術供与を受けたものである。ドイツのシーメンスはICE3という高速鉄道を販売しているが、基本的にCRH3はICE3のデッドコピーだ。いや、正確にはライセンス生産と言うべきなのかも知れないが。

ちなみに、これとは別にCRH2型電車と呼ばれるものもあるが、こっちは日本の川崎重工のE2系1000番台新幹線電車のデッドコピー品である。いや、こっちもノックダウン生産と、ライセンス生産によって作られている。

インドネシアに輸出される高速鉄道は、このどちらかであると言われている。
日本からの提案は、多分700系新幹線ベースの技術だと思われ(台湾に輸出したのもこの型である)、E2系1000番台と比べると技術の差は大きそうだな。

高速鉄道を持たないインドネシアから見たら誤差レベルかも知れないのだけれど。

まあ、要するにだ、日本から買っても支那から買っても、インドネシアにしてみればほぼ同レベルの列車とインフラが手に入る事になるわけで。まあ、「同レベル」なのは、見積もり上での話なんだけどね。

次、2点目。
 中国が全力を注いだのは資金面での支援だ。数千億円の事業費の大半を融資し、「インドネシア政府の財政支出や債務保証なしで建設できる」との姿勢で最後までインドネシア側の要求をのみ続けた。日本は採算などを考慮して最後の一線でインドネシアに譲歩しなかったため、明暗が分かれた。
そして、インドネシアのムシの良い要求を全て飲んだ上で、更に追加融資も用意したらしい。山吹色のお菓子も用意する勢いだな。
 しかし、リニ国営企業相は同中旬に訪中して追加の資金援助を引き出すなど執念を見せ、最終的にジョコ大統領も中国案で同意した模様だ。
親中派のリニ国営企画相は、相当、支那マネーに塗れているとみて良さそうだが、兎にも角にも、破格の条件を提示して、インドネシアの高速鉄道建設を受注したのは支那だったという訳。

案外、このリニ国営企画相なる人物が、日本の企画書を支那にリークした張本人か、或いはその側近がリークしたのではないのだろうか?

流石に新聞記事からはそれは読み取れなかったのだけれど。



次、3点目。

実は、支那の案では工期も非常に短い。
 中国案では「2018年までに完成できる」としている。
なかなか凄い発言だが、3年で120kmの路線全てを整備するというのだ。間違い無く手抜き工事が発生しそうだな。

日本の出せるマンパワーだけではこうは行かないだろう。几帳面な日本の技術者のことだから、造りの細部にも拘るのだろうし。
中でも大きな課題は線路用地の取得だ。インドネシアでは1998年の民主化以降、人々の権利意識が高まり、各地でインフラや公共用地の取得が難航している。ジョコ大統領は政府がインフラ用地の取得で全面協力していく姿勢を示しているが、いったんこじれると問題解決に時間がかかるのが実態だ。
特に、支那では軽く見られている人権も、インドネシアでは同様の扱いにできる訳も無い。そう考えると、支那案は素人目にも穴だらけである。

ただ、日本側が綿密な調査を行った内容をベースにして建設するという話を考えると、或いは「容易にクリアできる」と判断しているのかもしれない。日本の鉄道と支那の鉄道では技術の発展具合が違うので、果たしてそのまま流用できるのか?という点は非常に不安を覚えるが。

加えて資金面でも不安を残しているようだ。
 また中国案ではインドネシア政府の財政負担を求めない半面、融資の金利が高く設定されているとみられ、いったん計画にトラブルが生じると資金繰りが急速に悪化する危険性がある。「形だけ着工にはこぎ着けても、資金不足で完成のめどが立たない可能性がある」(日本外交関係者)との厳しい見方もあり、今後も曲折が予想されそうだ。
金に汚い支那人のことである。追加費用やら何やらを求める可能性は非常に高そうだし、経費節減のために手抜きを色々やらかす可能性も高い。
加えて、金利面で日本案より不利になっているとすると、途中で「やーめた」という結果にすらなりかねない。

まあ、以上を踏まえてのインドネシアの選択である。日本の国民がとやかく言う話でも無かろう。

ただ、29日の官房長官の記者会見の内容を聞くと、また、違った視点が見えてくる。

内容を聞いたら菅氏が激怒するのも無理は無い。
同日午後の記者会見で語った。菅氏は、同事業計画をめぐり「実現可能な最良の提案をしたと確信している」としたうえ、「日本の提案が選ばれなかったのは極めて残念。『中国案歓迎』は遺憾」と述べた。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/29/suga-indonesia-train-idJPKCN0RT0OJ20150929

ロイターはこの様に報じているが、9月29日の記者会見ではもう少し踏み込んだ話をしている。

菅氏「インドネシアの高速鉄道事業で、過日日本は実現可能な最良の提案を行ったが、日本の提案は選ばれなかった」「ここは極めて残念であると考えている」
菅氏「当初、インドネシア側から本件事業の見直しをして、中高速鉄道として実施する事業の詳細を作成し、日本を含む各国企業に参加機会を公平に説明する、と言う説明があった」「しかし、今回その方針が急遽変更となり、インドネシア政府として中国提案を歓迎することとなったという説明があった」
菅氏「そうした事について全く理解ができない、極めて遺憾であるということを、(インドネシア側に)率直に伝えた」
記者「受注競争に負けたと言うことか」
菅氏「負けたと言うより、条件が、インドネシア政府の財政負担や債務保証を伴わない新たな提案ということで、我が国では全く考えられない提案で、インドネシア側としてそうした提案を歓迎したいというそういう説明があった」「それはインドネシアに聞いて欲しい」「我が国ではそうした条件で臨むことはできない、そういうことだ」
記者「今後、同じようなケースがあった場合、日本はどう対応するのか」
菅氏「全く、常識では考えられない」「財政負担や債務保証を伴わない事業は、我が国としては受け入れられない」
以下略。
福山氏の結婚の話もあったのだが、本気でどうでもイイ。


ともあれ、日本は負けたと言うより、その条件ではそもそも提案ができないという話らしいね。

つまり、支那のやり方は、明らかにリスク度外視の事業として成立しそうも無い提案であり、それは政府として提案できる範囲を超えている、という話である。
インドネシアが「政府の財政負担や債務保証をしない」等と言い出したのも、支那の影響なんだろうね、きっと。

なるほど、そうなると今後またこうしたケースが出てきても、日本としてはベタ下りが基本だという事になるわけだ。

確かに、焦げ付く可能性の高い案件を政府として斡旋するのは間違っているわけで、日本の姿勢は正しいのだろう。

が、支那としてはAIIBにしても、非正規手段というか、これまでの常識では考えられなかったヤミ金融的な立ち位置を確立する狙いがあるらしく、実現すれば厄介な動きになる可能性は否定できない。

同じ土俵で勝負する必要は無いが、何らかの対策は考えるべきだろうね。

追記

ここまでぶっちゃけると清々しいな。

インドネシア 高速鉄道で技術は最重視せず

10月2日 6時15分

インドネシア政府の閣僚は、自国の高速鉄道計画で中国の案を採用することについてNHKのインタビューに応じ、「最も大事なのは技術ではない」と述べ採用にあたって最も重視したのは日本が強みとした高い技術ではなかったことを明らかにしました。

つまり、日本が採った方針はハナから間違っていたと言うことを意味する。

ある意味マーケティングの失敗だが、しかし、これでは日本は土俵に上がる前から敗北、という状況である。もちろん、実際には日本が先に土俵に上がったら、主催者のインドネシアが別のルールで試合をやると宣言し、エントリーは終了したと言ったに等しいわけだが。


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コメント

  1. 山田の案山子ちゃん2015年10月2日 0:37

    中国は歴史的に弱小国に支援する形で軍事拠点を作り勢力拡大を謀ってきた。ラオスに対し「アジア大会開催」費用の殆どを支援する替りに首都ビエンチャン中心部に土地を50年間に亘り借用(無償?)し中華圏を作り上げラオスの総人口の約10%が中国系で占めるに至っている。当該地はオーストラリア・インドにも近く海路の要衝でもあるオイシイ場所だ。

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    1. 華僑が使う手口ですな。
      難民、移民もこうした問題があるので、安易に人道支援できないんですよね……。

      アフリカ辺りでも、銀行のシステムから通信システムまで全部支那製で、人民元が使える街があるとか……。

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