熊本のコンビニに見るロジスティック構築

お役所仕事の滞りを見ていると、やはり大規模災害の対策というのは地方自治体任せというのがネックなのかもという気がしてしまう。

熊本のコンビニ97%再開 大手3社、過去の教訓生かす

2016年4月20日06時35分
 被災地では多くのコンビニエンスストアが営業を再開している。大手コンビニ3社の店舗でみると、19日午後6時現在で、熊本県内では全体の約97%が再開しているという。
4月14日に地震が発生して19日の時点で97%か。都合4日間はここまで復旧するのに時間がかかったと、そういう事だろう。まだ、余震は続いているのに頭が下がる話ではあるが。


さて、先ずはこちら。

避難所届かぬ物資なぜ 行政混乱、人手も不足 熊本地震

2016年04月19日03時05分 (更新 04月19日 09時07分)
 熊本地震の被災地から、食料や水など支援物資の不足を訴える声が相次いでいる。全国各地から支援物資は向かっているが、受ける側の自治体が分配機能を十分果たせていない。大動脈である九州自動車道が寸断され、陸路で支援物資が集まるほど渋滞を悪化させる悪循環にも陥っている。
支援物資が被災者に行き渡らない状況が続いているようで。
政府は本格的にプル型からプッシュ型への移行を模索し始めたようだ。


タイトルに使った「ロジスティック」という言葉だが、日本語では兵站(Military Logistics)と呼ばれる、後方支援などの意味で使っている。え?素直に兵站、とか後方支援とか書け?
いやほら、兵站といっても分かりにくいし、後方支援だけだと物資供給や輸送網の構築、施設の構築や維持などを含まないから。

まあ、言い訳はともかく、熊本市を始めとした自治体が機能していない理由は、物量に対して人員が足りない、それに尽きる。
 熊本県庁1階のホール。ペットボトルの水や食料、生理用品などの支援物資が山積みになっている。簡易トイレも数多い。
 だが、それが各市町村や避難所になかなか届かない。県の担当者は「物資の仕分けなどを担当する職員が足りず、作業が追いつかない」。別の県の担当者によると、「熊本県庁の混乱、人手不足が著しく、(被災地からの)物資の要望も止まっている」と明かす。
これは、幾つか問題点はあると思われるが、行政が悪いとバッサリやるには少々気の毒な事案である。


現状、災害が発生すると、災害対策本部のトップに座るのは、地方自治体の長である。当然、色々な権限を持ってはいるのだが、こうした災害発生時の経験に乏しいのは、どの自治体も同じである。
そして、実働部隊は市の職員。普段はデスクワークが専門の彼らに、「やれ」と言うのが酷である。

これが、小さな市町村であれば更に人手が足りない事になる。
通常業務ですら人手不足と予算で悩んでいるのに、こうした仕事が発生して、仕分けまでやるなんて事がそもそもオカシイのである。
支援物資の配布には食料や衛生用品といった仕分けが重要だが、行政は「素人」。2011年の東日本大震災でも支援物資の滞留が指摘され、仕分けを民間物流業者に任せることでようやく避難所に物資が届くようになった。今回の物資不足は、5年前の反省が生かされたとは言い難い事態だ。
ただ、こうした事態の想定を、熊本市を始めとした九州の地方自治体がやっていなかったというわけでは無い。


以前も紹介したが、熊本市も立派な地域防災計画書を作っている。
この中には熊本県トラック協会やら、ローソン、ファミリーマート、セブンイレブンなどのコンビニ業界。そして、鶴屋やダイエー、イオン、ナフコといったスーパーや百貨店の経営をやっているところなどと提携をしている。
こうした業者に対して、物資供給の協定を結んでいるのだ。

足りなかったのは、地方自治体の想像力だろう。
 「物資不足」の訴えを受け、主に福岡県の物流拠点から民間業者が市町村に直接、支援物資を送る枠組みが18日、ようやく出来上がった。政府からの支援物資は佐賀県鳥栖市にいったん集め、警察車両が先導することも決めた。九州地方知事会も18日、熊本県内の被災市町村ごとに、各県が担当を決めて支援する仕組みを整えた。
つまり、今回の熊本地震が、これだけの事態を引き起こすことを想定できなかったので、支援のネットワーク構築が滞ってしまったというわけだ。

18日に枠組みが出来上がったと言うことなので、この枠組みでいけるかどうかはそろそろ分かってきている頃だと思う。
が、本格的に動き出すまでにはもう少し時間を要するハズだ。


一方のコンビニ業界は、物流・販売がそもそもの業務であるので、滞っている部分を修復すれば、通常業務へと移行するのはそれ程困難では無いだろう。
まあ、一口に「滞っている部分の修復」と簡単に言ったが、実際のところ交通網を既存の道路に依存しているので、物理的に寸断されてしまえばこれを修復するのはかなり難しい。

が、5日目にして97%まで開店が可能になったと言うことを考えると、極めて優秀なシステムだと、そう言っても過言ではない。
だが、これは行政と違って「それが本業だったから」という事に他ならない。

阪神淡路大震災の時も、ダイエーやローソンがいち早く店舗の復旧に努め、破格の値段で物資を提供。セブンイレブンなどは、地震発生から3時間以内に救援物資や食料をヘリで空輸。食品の提供を開始。
有名所では、山口組系の暴力団やら宗教団体(崇教真光・PL教団・天理教・創価学会・金光教・オウム真理教)が積極的支援を行っている。
無論、これらの対応は、支援という側面よりも、それぞれの活動に根差す部分が大きいのだろうけれど、その地に拠点を持ち、リソースを持っていることを考えれば、利用しない手は無い。オウムなどは、これより2ヶ月後に地下鉄サリン事件を起こしやがったわけだが……。


また、こうした大規模な兵站構築のノウハウを持っているのが自衛隊である。
今回も要請があることを前提に待機前提に待機していた。
  • 4月14日21時26分に地震が発生
  • 21時31分に防衛省災害対策室設置
  • 21時47分に築城より情報収集を目的としてF-2を派遣
  • 22時02分以降、情報収集のためUH-1等ヘリコプターを派遣
  • 22時19分にはP-3Cを派遣
  • 22時19分には第8偵察隊のFAST-Forceが益城町役場に向け駐屯地を出発。
  • そして、要請が同日22時40分にあり、同日中に人命救助活動を目的とした約400名の隊員が現地に向かっている。
翌日には人命救助活動(約1520名)医療支援及び生活支援活動(約200名)物資輸送(約80名)、その後も徐々に派遣部隊を増やして現状は約22,000名規模になっている。
当然、自衛隊は自衛隊の部隊維持のための兵站を構築しており、彼らは自給自足で救援活動に当たっている。
こういった大規模災害に対応する能力が日本において最も高いのが、自衛隊なのである。


もちろん、警察や消防が何もしていないというわけでは無い。
寧ろ精力的に活動して頂いており、それぞれの分野でそれぞれの活躍をしている。

火事場泥棒許さない 被災地へ県外から私服警察と覆面パトカー投入

2016.4.18 16:28
 熊本地震の発生後、熊本県内で住民が避難した地域を中心に窃盗などの被害相談が増加していることを受けて、警察当局は18日以降、私服捜査員や、覆面パトカーを県外の各警察から投入し、被害の未然防止を強化する。
ニュースは少ないが、大規模な部隊が展開している。

熊本地震 大阪府警・市消防など各地の援助隊が被災地へ

2016.04.16 16:23
 14日夜の発生以来、余震が頻発していた熊本地震で、16日午前1時25分ごろ、震度6強(マグニチュード7.3)の地震が発生。その後も大分県などを含め、震度6弱以上の地震が相次いで発生しており、大阪府や京都府、兵庫県などは16日、緊急消防援助隊を派遣した。また、警察庁も同日、熊本県に15県の警察官を追加派遣し、15日から活動している大阪府警などの隊員らなどと救助にあたる。
被害を最小限に食い止めるためにも頑張って頂きたい。


で、結局何が言いたかったかというと、餅は餅屋だと言う話。
最初から、地方自治体に設置された災害対策本部が物流のまねごとをすること自体に無理があるのだ。

ニーズの吸い上げだけやって民間に丸投げするか、国が専門部署を作って災害時のロジスティック構築をやるか、である。
無論、お役人にやらせるのならば「国が専門部署を作って」では話にならないだろう。こういうのは餅屋に全部丸投げが正しい。
抵抗はあるかも知れないが、自衛隊に任せるというのも一案だろう。表向きはその為の部隊は整備する必要があるが、自衛隊という組織そのものにそうした機能は本来的に必要である。目的は少しズレるが、既にそうした機能は持っているので、それを拡充してやれば良い。制服を別に作れば、「メイサイフクガー」と発狂する人も黙るだろう。

無論、民間に丸投げするのも一案であるが、企業は利潤を追求する組織なので、無駄な部署を常に抱えることはできないし、災害時に本来の業務が麻痺してしまうようでは色々困る。そうした担保は必要になるだろう。

何にせよ、今の地方自治体からプルする形の災害対応は、大規模で長期化する災害に対応するには余りに無力なのである。

じゃあ、国が何も考えていないのか?というと、そうでも無い。
実は災害対策法の見直しについては2012年、つまり東日本大震災の後に議論されている。民主党政権もやるじゃ無いか!と、思うのはちょっと早い。災害対策基本法の一部を改正する法律案は第180回国会で内閣府立案によって成立しているが、結局のところ「即応力の強化」に直結しなかったからこそ今回の状況になっている。

問題点はある程度把握していたものの、東日本大震災の時のように、行政が跡形も無く消し飛んでしまうような場合に迅速に対応をすることを目指していたのが、この時の法律改正で、今回のように行政の機能が生きていても、機能しない事態を想定していなかっただけなのだ。

しかし、現実問題として、災害が持続した状況での災害対策本部の機能維持というのは、今後の課題となるだろう。

今後、この辺りはもっと整理していくべきなのだ。


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コメント

  1. あるけむ(R.K.M) @fwbc19652016年4月20日 20:50

    現代では「ロジスティクス(logistics)」は「物流」と訳されますね。もちろん「兵站」「補給」というのが元来の意味であることは承知してます(「後方支援」は、もう少し広い範囲を示すような感じです)
    大災害での支援物資の物流については、運送業者の活用が必要な気がします。
    支援物資の物流に絞ると、こんな分担かな?
    ・地方自治体=避難者数や避難場所の確認←地元を知っていないと
    ・運送業者=安全地域から集積地への輸送(戦略輸送)+物資の分配立案
    ・自衛隊=集積地から避難場所への輸送(戦術輸送)←危険地域は
    ただ、左巻きの連中が「徴用だ!」とか騒ぎそうですけど...

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    1. そうでしたか、勉強になりました。

      ご指摘の通り、運送業者の活用は必要でしょうね。民間の運送業者の拠点が九州各地にあるはずなので、十分に機能するはずなのです。
      道路が寸断されている部分は自衛隊に頼めばいいですし、集荷、分別、配送は正しく運送業者のテリトリーですよね。

      地方自治体は情報の集積だけをやればイイのですが、それができていないからこその熊本の現状なのでしょう。

      削除
  2. 問題行動を起こしている民間の支援団体がなんとか町にて配布物を仕切っている。
    支援団体の長は暴力事件を起こした過去有り。町の役員を押しのけ配布物を(配付金を横領の疑い有り)仕切っているという話。
    ひどいのは、この連中を町長が招いた事。東北の地震で悪評を高めた支援ゴロを何故に招聘したのか?

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    返信
    1. あるけむ(R.K.M) @fwbc19652016年4月22日 5:25

      熊本県御船町の話ですね。一般社団法人「TSUNAGARI」(つながり)という団体だそうです。
      町長がFacebookで救援要請をしたのが発端とされてます。
      Twitterのまとめもあります。
      http://togetter.com/li/963483
      暴行事件については、こちらのほうがわかりやすい。
      http://matome.naver.jp/odai/2146108413074300201
      益城町の避難所にも入り込んでいるという情報は気になるところ。
      ※NPOと一般社団法人の違いは、NPO=所轄省庁の審査あり、一般社団法人=審査なし、とのこと。

      削除
    2. 御船町のアレは、未だコトの推移がよくわからないのですが……。
      「町民から提案のあった民間のボランティア団体の支援の受け入れ」 
      ⇒ 「TSUNAGARI」が入り込む
      ⇒ 「一旦これまでの体制を終了し、本日4月21日より、御船町社会福祉協議会によるボランティアセンターで対応することになりました。」

      といった流れになっているので、事態が解消されたのか、或いはさらなる混乱を生むのか……。
      http://portal.kumamoto-net.ne.jp/town_mifune/life/pub/detail.asp?c_id=19&id=1559&type=top

      「何分慣れていないもので」と町長が言い訳をしている辺りが、なんとも。出来ないなら最初からやるなよ、町長。
      大災害に慣れていない首長なんて一杯いる中で、それぞれ努力されているんだから。

      まあ、人手が足りないという事情は多分事実なのでしょうし、今後も起こりうる問題ではあるのでしょうが……。

      削除
  3. 今日、八代ICから大津まで行ってきました。築30年くらいの
    家は崩壊していましたが、八代松橋地区は無傷に近い状況。
    市内も見た目はあまり変化無く、ラーメン屋や外食店が営業再開
    をしていました。ただ、道路においてあるゴミの量がすごく、外側
    と内側の差は違うと感じました。 市内は水道ガスがまだ不通で
    これが直ればかなり前進です。 コンビニはおにぎりパン、水も
    十二分にあります。 会社の連中はみんな目にクマがあり、夜が
    怖くて寝られないとの事。何が困っているかはお風呂。
    それと、逮捕歴のある某市長さんの無能ぶりには相当切れている。
    住まいは余震が納まったら耐震補強を国や県が補助金を出せば、
    元に住む事ができるので是非お願いしたい。
    みんな、今と今後に悩みを抱えています。
    もう・・・水やオムツではないのだよ・・民進君

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    1. おお、貴重なお話をありがとうございます。
      現地は非常に苦労しておられるのですね。

      お風呂は水とガス又は電気が供給されないとなかなか難しいですからねぇ……。
      インフラと、ごみ処理、そして耐震補強に関する工事ですか。補助金の一部は国や県から支給されるそうなので、一刻も早い住む場所の確保が実現するといいですね。

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