ヘイトスピーチ解消法案は有効か?

ニュースで色々とやっているが、ヘイトスピーチ解消法案が衆議院法務委員会で可決されたようだ。

ヘイトスピーチ解消法案が衆院法務委で可決、来週にも成立へ

2016.5.12 18:41
 参院法務委員会は12日、自民、公明両党が提出したヘイトスピーチ(憎悪表現)解消法案を全会一致で可決した。13日の参院本会議を通過した後、来週にも衆院で可決し、成立する見通し。
一体、何のための、誰のための法案なのか?と考えてしまうな。

タイトルに「有効か」と書いたが、「何に対して」という部分が抜けているのはおわかりだろう。実は、今回のニュースで問題なのは国会は何を求めてこの様な法案審議をやっているか、ということなのだ。

ヘイトスピーチに関しては、数年前からサヨクがかなり興奮している。

推進派集会で福島瑞穂氏「ヘイトスピーチは魂の殺人だ!」 民主、共産などが怪気炎

2015.9.3 18:10

特定の民族などへのヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制を求める市民団体主催の集会「STOP HATE SPEECH~今こそ人種差別撤廃基本法の実現を~」が2日、国会内で開かれ、民主、社民、共産各党などの国会議員が出席して参院で審議中の「人種差別撤廃施策推進法案」の早期成立を訴えた。
福島氏は「人権派弁護士(笑)」なので、こうした話で本領発揮するのも無理は無いが、日本共産党も同じ穴の狢である。日本共産党は部落問題を飯のタネにしてきたので、この手の話に造詣が深いのである。
 
そして、両者では大いに盛り上がっているらしい。
民主党の小川敏夫元法相は「表現の自由は大事だが、ヘイトスピーチが表現の自由に含まれるはずがない」と強調。
そうそう、記事は去年のものなので、今年は念願叶って!と喜んでいるんだろうね(棒。


……まあ、「物足りない」と言うことらしいが。

与党、罰則盛らず…法案提出へ

毎日新聞2016年4月5日 21時20分(最終更新 4月5日 23時38分)
 自民、公明両党は5日、特定の人種や民族に対する差別的言動を街頭で繰り返すヘイトスピーチの解消に向けた法案をまとめた。憲法が保障する表現の自由の重要性に配慮し、禁止や罰則の規定は盛り込まない理念法にとどめた。近く国会に提出する方針だ。
一体何がいけないというのか。
野党はヘイトスピーチの禁止規定を盛り込んだ人種差別撤廃施策推進法案を国会に提出している。与党は取り調べ可視化を規定した刑事訴訟法改正案の審議入りを要求していた。与野党は与党の新たなヘイトスピーチ法案を加えた3法案の審議について協議する。
なるほど、対立法案を出しているのね。


しかし、法案可決は賛成多数で行われ、野党も賛成していたようである。

ヘイトスピーチ法案修正合意 今国会で成立の公算

5月11日 16時35分
いわゆるヘイトスピーチの解消に向けた法案を巡って、自民・公明両党と民進党は、法案の付則に「法律の施行後も実態を勘案して必要に応じ検討を加える」という文言を盛り込むことなどで修正合意し、法案は今の国会で成立する公算となりました。
~~略~~
そして、11日の参議院法務委員会の理事懇談会で、自民・公明両党が新たに「法律の施行後も実態を勘案して必要に応じ検討を加える」という文言を付則に盛り込む考えを伝えたのに対し、民進党はこれを受け入れ賛成する方針を示しました。
ほほう。民進党が妥協した模様。


さてさて、提出された法案だが、ようやくここで一体どのようなものかを紹介していきたい。

先ずは、いわゆるヘイトスピーチ解消法案だが、法律の名前は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」という。
……つまり、日本人は対象から除いている。

この法律は、日本人が外国人からヘイトスピーチを浴びせられることは想定しておらず、主に日本人が外国人に対して行う発言を規制しようという意図で作られているのだ。
法律の目的にもこう書かれる。
(目的)
第一条 この法律は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を実施するとともに、地方公共団体が実施する本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずる責務を有する。
……もしかして移民対策かよ!!


ちなみに、これに類する民主党から提出された(今は民進党所属の議員である)法案は「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」という第189国会に提出されたものがある。
(目的)
第一条 この法律は、人種等を理由とする差別の撤廃(あらゆる分野において人種等を理由とする差別をなくし、人種等を異にする者が相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することをいう。以下この条において同じ。)が重要な課題であることに鑑み、日本国憲法及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の理念に基づき、人種等を理由とする差別の禁止等の基本原則を定めるとともに、人種等を理由とする差別の防止に関し国及び地方公共団体の責務、基本的施策その他の基本となる事項を定めることにより、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策を総合的かつ一体的に推進することを目的とする。
凄く崇高な理念を掲げているものの……、かなりガバガバな法案である。さらに実現も不可能だ。

コレを実現するには、人権擁護法案に謳われていた人権委員会を設置する必要があり、人種差別発言を常に監視しなければならない。
「言った言わない」が争いの火種を生みかねない、かなり問題のある法案が人権擁護法案だったが、こちらの法案も民間団体に連携協力を求め、国や地方自治体に改善のための組織を作るよう求めている辺り、似たような位置づけだな。


まあ、そんな訳で野党の提出した法案が余りに酷いので対案にならないことは明白だが、それはそれとして、自民と公明が提出した法案の方はどうなのか、というのが今回の主題である。
(定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。
どうやら、ヘイトスピーチ解消法と呼ばれるソレは、外国出身者に対して差別的な発言をするなと言う話のようなのだが……、かなり対象を絞っているね。


この法律の発効によって、こちらは規制の対象になる模様。

「沖縄だって米にヘイトスピーチ」こころ・中野正志氏

2016年5月11日19時03分
~~略~~
言葉の暴力という表現があるんでありますけれども、やっぱり言論の自由をそんな法律一本でねじ曲げるようなことをしてはかえってダメだと私は思います。まして、新宿でどうのこうのというのがありましたけど、沖縄だってアメリカ合衆国の軍の人たちに「ヤンキー、ゴーホーム」だとか、非常に口汚い、まさにヘイトスピーチそのもの。いわゆる左系統の人たちは、沖縄の人たちのことはヘイトスピーチだと言わないで、新宿だのをはじめとするあれだけをヘイトスピーチって表現しているわけですよ。

だが、こちらは果たして対象になるのだろうか?

被害者インタビュー「心は殺された」

毎日新聞2016年5月9日 20時20分(最終更新 5月11日 21時12分)
 「日本から出て行け」などと叫びながら街頭を練り歩き、在日外国人らへの差別を扇動する「ヘイトスピーチ」。法務省が3月に公表した実態調査によると、2012年4月から15年9月にかけて29都道府県で実施された関連デモは計1152件に達している。川崎市在住の在日コリアンの親子が毎日新聞の取材に応じ、ヘイトスピーチ被害の実態と法整備の必要性を訴えた。
在日外国人は「本邦外出身者」に該当する可能性があるが、在日朝鮮人・在日韓国人のうち、特別永住者にあたる人々は、もともと日本人という扱いだったけれども、戦後処理の関係で韓国籍、朝鮮籍に自動的に振り分けられる事になった際に、韓国籍、朝鮮籍のまま日本に永住する許可を貰っている人々である。
こういった人々は、「本邦の域外にある国若しくは地域の出身」にあたるかどうかかなり怪しい。

まあ、立法経緯から考えれば射程範囲内にしたいという意向はあるようだが……。


毎日新聞は、「コレでコリアンへの差別が無くなる」かのように報じているが、どうにもそれを目的とした法律構成では無さそうである。

寧ろ、専ら「差別発言」を抑制するような方向に、教育機関と連携していこうと言った辺りが主眼にある模様。
 ただ、与党案は野党の求めに応じて、差別的言動の定義を変更。「差別意識を助長する目的で公然と危害を加える旨を告知し、地域社会からの排除を扇動する」とした与党案の規定に「著しく侮蔑する」言動を加えた。付則では、差別的行為の解消に向けた取り組みについて「必要に応じて検討を加える」とした。
 また国や自治体に対し、憲法と人種差別撤廃条約の趣旨を踏まえた適切な対処や、インターネット上で差別的言動を助長する行為の解消に向けた取り組みを求める付帯決議も採択した。
インターネットの規制が何処までできるかは知らないが、この法律を根拠に一部のデモ活動は規制される可能性はありそうだ。
 
今回の法案はその程度の意味づけしか無い、とも言えるね。


そして、冒頭の産経新聞の記事にもあったが、こんな裏事情もあったようだ。
 法規制に慎重な自民党が方針転換したのは、取り調べの録音・録画(可視化)の義務化などを盛り込んだ刑事訴訟法改正案の今国会成立を“人質”に取られたからだ。6月1日の国会会期末が迫る中、民進党に水面下で「解消法案を成立させれば、刑訴法改正案の審議に応じる」と打診され、自民党は取引をのんだ。
これだから政治はキタナイと言われるのだが、こうした駆け引きの上での妥協の産物と言われても仕方が無いような、曖昧な話になっているのは事実だ。

産経新聞は、「将来」「気軽な一言」で「罪に問われる」ことを懸念して記事を結んでいるが、現状では、デモの最中におかしな方向で叫んでいる人々を止める法的根拠、といったレベルのようだ。

だから「有効」か「有効で無い」かというレベルでも無さそうである。罰則も無いしね。



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コメント

  1. なんか、「図書館戦争」のメディア良化法成立の時代みたいだね。

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    1. 又凄いネタを。
      「公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を規制するための法律」というのが、メディア良化法の定義でしたね。
      その実、著作物の表現の規制がやられて、検閲制度が盛り込まれて、それに対する攻防が行われるというのが、「図書館戦争」のベースになった考えだったと思います。

      確かにまあ、「人権擁護」や「人種差別規制」はややもすると「表現の自由」を蹂躙する結果になりかねませんが、無制限な「表現の自由」というのもまた、色々と問題アリでしょう。

      そもそも、これって法律で規制すべきなの?という話ですが……。
      何にせよ、こうした問題はしっかりと見守っていきたいですね。

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