ピースボート護衛と海上保安庁の対応に関する補足

コメント欄で指摘を受けたので、ピースボート絡みの海上自衛隊の護衛に関する経緯をちょっと調べてみた。

なお、オマケ記事程度の話なので、読み飛ばして頂いて構わない。


まず、何のことを調べたのかという話だが……。
先ずは、ピースボートが何なのか?というあたりからちょっと説明していきたい。

リンク先の記事にも出てくる「ピースボート」なる船だが、これは国際交流を目的として設立された日本の非政府組織などの名称である。
元々は、政治家になって現在は民進党の議員である辻元氏などが設立したNGO団体が主催する船旅で、教科書問題が切っ掛けとなって「世界の意見を直接聞きに行こう」というような趣旨で世界一周旅行が毎年のように実施されている。
ただ、現状ではジャパングレイスという会社がこの船旅を運営・実施しており、ジャパングレイス自体は現在これに専念していると言うから、それなりの収益が「何処かから得られている」事業なのだろう(ピースボート事業そのものは赤字が叫ばれ、存続が危ういという話は常にある)。


こういった企画の船旅そのものを僕は否定する積もりはないが、しかし、やっている事はかなり際どいケースも度々報告される。

もともと、設立主体が「教科書問題」を取り扱っていた事から分かる通り、思想はかなり左よりであることは間違い無く、その点は度々指摘されている。
特に近年は、格安の世界一周旅行という建前を前面に出している手前、観光業的な側面が強く出過ぎて、左よりというよりサヨク的発想、パヨクの巣窟といった実態は覆い隠される傾向にあるようだ。

以下に評価の分かれる際どいケースだけピックアップしておく。
  • 国後島への渡航:政府の反対を押し切っての渡航を敢行。(ピースボート側はビザ無しパスポート無しの形で渡航したと説明しているが、その実態は不明)
  • 北朝鮮への渡航:万景峰号などをチャーターしてクルーズするなど、日本と国交の無い北朝鮮へのクルーズを敢行している。これが北朝鮮を経済的に支援する結果となる点は言うまでも無い。
  • ソマリア沖・アデン湾の通過:外務省のサイトでも危険性の告知を行っており、同海域の通過を控えるように注意喚起がなされている(2008年注意喚起、2010年6月失効、その前後でも度々注意喚起がなされている)。その上で通行を敢行し、海上自衛隊の護衛を受けている。ただし、ピースボートは海賊対策での海上自衛隊の派遣に反対している。



続いて、ピースボートが使用している船のトラブルについて。
ピースボートは基本的に船のドッグ整備をほとんどせずに運航するのが常のようで、様々なトラブルがあったようだ。
  • クリッパー・パシフィック号使用の2008年実施第62回世界一周旅行において、ニューヨーク港寄港時に整備不良が発覚して、出港差し止め。この際の出港は許可無しでの出港であったという噂がある。
  • クリッパー・パシフィック号使用の2008年実施第63回世界一周旅行において、整備不良が原因で度重なる航行不能状態が発生。航海中の日程変更が原因で健康被害を引き起こしたとして第62回、第63回の参加者が訴訟を起こす事態に。
  • オセアニック号使用の2012年実施第75回世界一周旅行において、度重なるエンジントラブルで停電、2度の漂流を経てなんとか帰港。
騒動になったのはこの3点だけだが、経験者のサイトなどを渡り歩いて見ると、細かなトラブルは数限りなくあるようだ。まあ、正直、他の民間旅行会社の船旅でもトラブルが出ることはあるのだろうが……、ピースボートのそれはかなり酷い。

この他にも、大麻密輸事件(2013年10月10日)などもあって警察のお世話になった事案がある。
と言うわけで、色々と問題の多いピースボート事業であるが、参加者にとっては素晴らしい思い出となったケースもあるようなので、悪い側面ばかりでは無さそうだ。


とはいえ、危険地域への航行を敢行するようなスタンスは、かなり問題だと言わざるを得ず、運営側の安全に対する考え方には大きな問題がある。

そして、表題の話はソマリア沖・アデン湾を通過した際に発生した話である。

ピースボート護衛受ける ソマリア沖

2009.5.14 01:38
このニュースのトピックス国会
 海賊対策のためアフリカ・ソマリア沖に展開中の海上自衛隊の護衛艦が、民間国際交流団体「ピースボート」の船旅の旅客船を護衛したことが13日、分かった。ピースボートは海賊対策での海自派遣に反対しており、主張とのギャップは議論を呼びそうだ。
関係ニュースはこの通りだが、この記事の中でピースボート側はこんな事を主張している。
 ピースボート事務局によると、船旅の企画・実施を行う旅行会社が護衛任務を調整する国土交通省海賊対策連絡調整室と安全対策を協議し、海自が護衛する船団に入ることが決まったという。
 ピースボートは市民団体による海自派遣反対の共同声明にも名を連ねている。事務局の担当者は「海上保安庁ではなく海自が派遣されているのは残念だが、主張とは別に参加者の安全が第一。(旅行会社が)護衛を依頼した判断を尊重する」と話している。
どうやら、この言い分だとピースボート事業局は、海上保安庁に依頼したのに、海上自衛隊が出てきた事が問題だと認識しているようなのだ。



なお、このことがあったからかどうなのか、2009年9月15日付けの外務省のサイトでは、この様な一文が付け足されている。

ソマリア沖・アデン湾周辺海域における航行船舶及び乗船者等に対する海賊行為に関する注意喚起

~~略~~
4.平成21年6月19日に、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律が成立し、日本関係船舶のみならず、我が国と関係のない外国船舶についても海賊行為から保護することが可能になったことを受け、同法に基づく船舶の護衛活動を開始しました。
  海上自衛隊の艦船による護衛を受けるためには、国土交通省に事業者及び船舶の基礎情報を事前に登録した上で、参加を希望する護衛活動への護衛申請が必要となりますので、下記の国土交通省海事局のHPをご参照ください。
コメント頂いた内容は、平成21年度6月19日に成立した法案であり、問題を起こしたクルーズが第66回(2009.04.23~2009.08.12)のオセアニック号によるもので、この事案は法案成立前の話、と言う事になる。


法案成立が問題の行動の後であることを考えれば、ピースボート事業部の主張は間違っていないと言えるのかも知れないが、しかし、本当にそうだろうか?

実際にニュースではこの様に言及されている。
 ピースボート事務局によると、船旅の企画・実施を行う旅行会社が護衛任務を調整する国土交通省海賊対策連絡調整室と安全対策を協議し、海自が護衛する船団に入ることが決まったという。
ニュースの内容を信用するとすると、ピースボート事業部は国交省に対して旅行計画を提出して、国土交通省海賊対策連絡調整室と安全対策を協議したことになる。
この時点で、ピースボート事業部側が「海上保安庁を出してくれ」という要求をした可能性はある。
が、国土交通省海賊対策連絡調整室からは「海上自衛隊を出します」と返答があったのだろう。


これは、コメント頂いた内容に記載がある。海上保安庁の海賊事案に関する対応はサイトにこの様に説明されている。これはご紹介頂いたサイトでもある。
(1)ソマリア周辺海域派遣捜査隊の同乗
 海賊事案への対処は、海上における人命・財産の保護、治安の維持等について一義的責務を有する海上保安庁の任務であります。しかしながら、ソマリア周辺海域に巡視船を派遣することは、日本からの距離、海賊が所持する武器、各国では軍艦等が対応していること等を総合的に勘案すると現状においては困難な状況です。
 このような状況を踏まえ、平成21年3月、海上警備行動が発令され、自衛隊が派遣されることとなりました。海上保安庁では、派遣される護衛艦に「ソマリア周辺海域派遣捜査隊」として、海上保安官8名を同乗させ、海賊の逮捕、取調べ等といった、海賊に対する司法警察業務に的確に対処していくこととしています。
このサイトがどの時点で記載されたかはハッキリしないが、少なくともピースボート事業部が相談を持ちかけ、実際に船がその海域を航行する際には、自衛隊が護衛するという国方針は決定していたことはほぼ間違いが無い。

つまり、ピースボート事業部側が何を要求したかは知らないが、国交省側は予定通りに事を進めたことになる。それを拒めば「計画変更を」という話も多分出ただろう。


更に海上保安庁のサイトの別のページにはこの様な記載も。
(3)海賊事案発生時における対応
    日本船舶や日本人が東南アジア海域の公海上で海賊に襲撃されるなどした場合は、必要に応じ巡視船、航空機または職員を派遣し、犯罪捜査等の所要の業務を実施することとしています。
    例えば、平成11年10月に発生した「ALONDRA RAINBOW」号事件においては、海上保安庁は、巡視船及び航空機を派遣し、捜索活動を実施するとともに航行警報を発出し付近航行船舶に情報提供を実施しました。
    そもそも海上保安庁は、海上の警察という位置づけなので、基本的に事件発生に対して対処するというスタンスである。だから海上保安庁法においても警護任務に関する言及は積極的には行っていない。

    そもそも周辺海域をパトロールというのが主な任務で、海外での活動も積極的に行っているとはいえ、これは外国の協力無くして実現し得ない話となる。その理由は簡単で、日本の警察権は他国の領域に及ばないからだ。公海上では国際的ルールに従う必要があるが、日本の領域内で行うような力の行使は出来ない。
    また、そもそも「(1)ソマリア周辺海域派遣捜査隊の同乗」に記載があるように、能力的に困難であるという理由もあろう。


    国交省のサイトにもこの様に説明がある。
     平成21年3月13日、内閣総理大臣に承認を得て、防衛大臣から、海上における警備行動が発令され、同年3月30日から海上自衛隊による護衛活動がアデン湾で開始されました。
    ~~略~~
     国土交通省においては、平成21年1月28日、「海賊対策連絡調整室」を海事局に設置し、船舶運航事業者等からの護衛活動の申請窓口と対象船舶の選定を行っています。引き続き、日本関係船舶の防護に万全を期すとともに、外国船舶に対する国際貢献も果たしていきます。
    http://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk2_000006.html
    つまり、ピースボート事業局がどのような考えを持っていたにせよ、国交省にしてみれば、海上自衛隊を派遣するのが当然であったと、その様に考えて間違いなさそうだ。



    コメントでご紹介頂いた「ソマリア沖・アデン湾における海賊問題の現状と取組」にも、この様に紹介されている。

    (1)我が国のソマリア沖・アデン湾への護衛艦・哨戒機の派遣(2009年~)

    2009年3月より,我が国は護衛艦2隻(海上保安官8名が同乗)を派遣し,アデン湾を航行する船舶の護衛にあたっています。また,同年6月よりP-3C哨戒機2機を派遣し,ジブチを拠点に警戒監視活動を行っています。
     2015年12月31日現在,海賊対処法に基づく護衛艦による護衛実績は656回で,3,640隻(日本関係船舶は675隻,その他外国船舶は2,965隻)。1回あたり平均5.5隻を護衛しています。
    こちらを見ても、海上自衛隊による警護を受ける流れは不自然で無い事は明らかである。

    寧ろ、多くの実績の中の1例に過ぎないと言うことに。


    もちろん、こちらの事案についても、当たり前の対応だったと言う事になる。
    「なんだ、当たり前の対応なんじゃないか。じゃあ、ピースボートが責められる理由は無いよね」と思う方は、冒頭のピースボートとは何なのか、というところにもう一度目を通して頂きたい。

    ピースボートは今なお、自衛隊の海外派遣について、反対を表明しているのである。
    自分たちがその利益を享受してなお、主張を曲げない。

    ……反原発派が、厳罰廃止を唱えながら、電気をどんどん使うのに似ているな。

    あ、ピースボートも反原発派なのだったっけ。

    ともかく、当面の間はソマリア沖・アデン湾の緊張は収まることは無いだろうし、そうなるとこの付近を航行する際には、確実に海上自衛隊のお世話になる事になる。
    つまり、ピースボートが航路を変えない限りは、この様な事態はこれからも続いていくのだろう。だが、彼らはそれをやめるつもりは無いだろうし、主張も止めるつもりは無いだろう。
    その程度の覚悟の集団であり、運営主体も乗客の安全確保に極めて杜撰な思想を持っていると、その様に言わざるを得ない。


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    コメント

    1. 色々ネットを見てると一部には護衛なんて海保で良いんじゃという声もあるようですが
      結局沿岸警備隊は沿岸警備隊でしか無いので完全な外洋に出るのは相当な大事ですからね
      日本のしきしまやアメリカのハミルトン級、中国の新型艦のような例外もあるとはいえあくまで例外ですおし
      漫画、海猿でも触れられていましたが結局海保の艦艇やヘリではあの海域での護衛や警戒には明らかに装備不足なので……
      十年前はゲリラが対物ロケット所か対艦ミサイルもつ世の中になるとか誰が予想したことやら

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      1. 護衛を海保に任せるのであれば、海保に護衛できる装備を増やす必要がありますし、何より訓練を専門にやらないとダメですよね。
        そうなると人も時間も予算も足りないという状況に。海上自衛隊に任せるというのは、ある意味当然の流れなのでしょう。

        マンガの海猿読みましたよー。海賊対応任務で一人殉職されるという衝撃の展開でしたが、当然ありうる展開でもありますよね。
        海賊もRPGやAK47で武装する時代というのは、恐ろしい話ですが、それが現実なのですから対応していくより他に無いのでしょう。

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    2. 「……反原発派が、厳罰廃止を唱えながら、電気をどんどん使うのに似ているな。」
      ピースボートと原発の問題を一緒にするべきでない。
       電力小売り自由化により、小売り企業は選べる様になったが、欧州の様に
      どの発電方式で発電された電力か開示されず。その為選択権は無い。
       選択権の有るのと無いのとを同一視するのは問題がある。

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      1. なるほど、欧州ではその様になっているのですね。
        ご指摘を受けてザックリ調べてみたのですが、欧州で「発電方式を選ぶ」というのは、スイスにその様な方式を採用しているといった情報を見つけました。EUでも似たような事をやっているのでしょうかね。

        ただ、電気に色は付いていませんし、発電方式によって電圧が異なるとか、選んだ電力会社から直接送電線が引かれるというような理に合わない話では無いようで、選択した方式に設定されたコストを支払う、というのが現状だと理解しています。

        確かに電力会社に対して、需要者が「どの発電方法が良い」と意思表示をする仕組みは面白いと思いますが、それはあくまで方式を選択しているだけで、選んだところから直接電力を買っているわけではありません。
        「選択権」というのはちょっと語弊がありますね。
        もちろん、割高料金を支払っていただけるのであれば、それは良いことではありますが、それならば日本にもグリーン電力証書取引制度というのがありますので、そちらを利用されれば良いと思います。それでは選択肢にはならないのでしょうかね。

        尤も、僕の表現が良かったのか?と言う点は議論の余地がありという点は、ご指摘としてありがたく頂戴いたします。

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      2. あるけむ(R.K.M) @fwbc19652016年5月20日 18:44

        脱線は承知していますが、あえて...
        電気事業については、日本も家庭向け小売業者を選べるようになり、業者によっては、発電方式を明言している場合があります。
        で、ピースボートの話に戻すと、
        ピースボートの航行経路は、固定されているとは考えにくく、ソマリア沖を経由しないルートを選択することも考えられます。
        事実、客船「飛鳥Ⅱ」の世界一周クルーズでは、ソマリア沖を通過しないルートを採用したり、ソマリア沖は乗客を乗せず回航する(乗客は空路移動)などの対策をとっています。
        ピースボートはなぜ強行するか疑問です。

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    3. ピースボートで使われている客船は建造時期が古い老朽化した船ばかりだから、トラブルが頻発するのも当然の結果なのかも知れませんよ。

      オセアニック号は1965年に建造されたという恐ろしく古い船で、ピースボートから引退したのが2015年……50年前に建造された客船で世界一周航海を企画運営するなんて狂気の沙汰だと思いませんか?

      クリッパー・パシフィック号も1970年建造のボロ船、船内設備があまりにも老朽化し過ぎていてピースボートの参加者から苦情が殺到するほど酷い状態だったらしいです。

      (オセアニック号の方がまだマシ!!…というレベルのオンボロだったらしい)

      現在使用されているオーシャンドリーム号は1981年建造、格安ツアーの客船としては普通レベルだけど建造から35年経過した古い船なのでそろそろ近代化改装しないとダメな箇所が目立ちはじめているみたいです。

      格安料金で世界一周クルーズという無理な運営をしているからこそ、チャーター料の激安な老朽船を使っているのでしょうね。

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