フィリピン大統領が突きつけた日本への課題

ドゥテルテ氏を評して「ぶれない」という印象を安倍政権は持ったようだが、確かになかなかホネのある人物だったようだ。

ドゥテルテ比大統領、自衛隊との訓練に理解 米軍とは「最後」

World | 2016年 10月 28日 09:52 JST
- 来日中のフィリピンのドゥテルテ大統領は27日、記者団に対し、自衛隊との共同訓練には理解を示す一方、米軍との訓練は継続しない考えを改めて表明した。
個人的には、今のアメリカ大統領候補の二人よりも好感度は高いよ。



殊、反米という一点においては、譲れないものがあるようで、インタビューに対してこの様なことを言ったようだ。
ドゥテルテ大統領はこの日、神奈川県横浜市にある海上保安庁の基地を視察。その後に記者団の取材に応じ、「日本との共同訓練は一般的に言って問題ない」と語った。一方で、「米国とは問題だ」と指摘。「我が国の国防大臣に恥をかかせたくはないが、米軍との訓練は今回が最後だ」と、これまでの見解を繰り返した。
日本とは共同訓練をするが、アメリカとはしたくないと。
日本政府にとってドゥテルテ大統領の来日は、米国との同盟の意義を理解してもらうのが重要な狙いの1つだった。26日の首脳会談でも議題となったが、ドゥテルテ大統領は安倍晋三首相に対し、自身が米国非難を繰り返す理由を説明したという。
同大統領は記者団に、「安倍首相には米国に対する私の感情を話した。米国は我々を鎖につないだ犬のように扱う」などと語った。同大統領は「安倍首相は理解を示した」と述べた。
そして、ドゥテルテ氏はここで重大な課題が安倍氏に突きつけたのだ。



ドゥテルテ氏は相当喰えない人物のようで、日本の実情をしっかり理解した上で訪日したようだ。
シーレーン
この図は日本のシーレーンを大雑把に示したものだが、そのシーレーンの要所にフィリピンは存在する。
言わば、日本のシーレーン防衛にフィリピンの存在は欠かせない。しかし、フィリピンはろくな海軍力を有していない。

実利優先、「反米」変わらず=南シナ海「棚上げ」強調-比大統領訪日

(2016/10/27-19:11)
~~略~~
 日本政府は今回、フィリピンの海洋警備能力向上のため、大型巡視船2隻の供与や海上自衛隊の練習機貸与で比側と合意。ドゥテルテ氏の地元であるミンダナオ島の農業支援での円借款供与も決めた。
大型巡視船の必要性をフィリピンが持っていたことは僥倖であるが、それ以上に小型巡視船の数を揃えねばならない。その辺りも含めて日本の懐を狙っていることは想像に難くない。
が、フィリピンの海軍力の増強は日本にとっても望むところなのである。



つまり、日本とフィリピンとの利害は、シーレーン防衛という意味において一致しているのだ。
ドゥテルテ氏がならず者っぽい言動を繰り返し、超法規的な麻薬撲滅運動をやっている人物である点を考慮しても、日本としてはシーレーン防衛を捨ててフィリピンと縁を切る選択肢は無いのである。

メンツを重んじる支那において、ドゥテルテ氏は習近平氏の目の前でガムを噛む真似をしたり居眠りまでする始末。手をポケットに入れて歩く姿はある意味衝撃的であった。
比支会談
確かに訪問の順番は支那を先にしたのだが、その事についてとやかく言う日本ではない事も承知しているのだろう。



そして、不運にも皇居での会見は中止となったが、この対応である。

天皇陛下、ドゥテルテ氏との会見中止 メッセージを伝達

2016年10月27日20時16分
 宮内庁によると、秋元義孝式部官長が東京都千代田区の帝国ホテルを訪れ、大統領に「お会いすることがかなわず残念に思います」との陛下のメッセージを伝えた。大統領は「事情はよく理解しました。陛下の深い悲しみを共有するとともに、心から哀悼を表します」と話したという。
 陛下はメッセージに、1月のフィリピン訪問についての感謝や、1962年に同国を訪れた時の思い出などとともに、「大統領の日本での滞在が実り多いものであったことを希望します」との言葉も添えたという。大統領は「いつか陛下とお会いする機会があると確信しています」とも話した。

日本人の感覚からしても実に誠実な対応と言えよう。
歴史にifは無いので、ドゥテルテ氏が天皇陛下に謁見したならばどうなっただろう?という様な事を考える意味は無いのかも知れない。が、或いは支那が難癖を付ける理由になった可能性もあり、両国にとっての救いとなった可能性も否定できない。



つまり、ドゥテルテ氏は日本での外交においての失点はゼロに等しく、そして安倍氏に「シーレーン防衛に本気になれ」とのメッセージを伝えたことになる。

今の日本は、シーレーン防衛において、どうしてもハンデを背負っての対応をせざるを得ない。
安保関連法改正によって、ある程度の事ができるようにはなったが、現実的にはまだまだ法整備は進んでいない。

軍事関係の費用を増額することは難しいし、自衛隊員を増やしたところで艦船を動かせるところまで行くには時間がかかる。
だがそれでも、理想的には日本と日本のシーレーン周辺国によるシーレーンの防衛が可能な状況を構築する必要がある。アメリカに頼らないシーレーン防衛は直ぐには難しいだろうが、アメリカ軍が動き出すまでは時間がかかるケースだって想定しうる。
やはり、自国の利益は自国で守れるようにすべきだろう。
ともすると、円借款による支援の額などに目が行きがちだが、本当に難しいのはこうした課題をクリアすることである。
ドゥテルテ氏は「安倍氏は理解した」と言った。それは、フィリピンが抱えている反米感情のことではあるだろうが、一歩踏み込めば、アメリカに過度に頼らないシーレーン防衛の必要性という側面が見える話だ。日本は重い期待を背負わされたのである。


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コメント

  1. 山田の案山子2016年10月29日 15:43

    1991年に比議会は米比友好安全保障条約締結後、批准破棄したことが中国の侵攻を許したことは否めません。「スプラトリー諸島領有権棚上げ」に関し大統領の意見を聞きたいものです。

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    1. そうですね、その点は気にかかるところです。
      ただ、フィリピンの国民感情を優先するかどうか、という点を踏まえると、なかなか難しい決断かもしれません。
      フィリピンでのアメリカの振る舞いは伝え聞くところによると、けっして褒められたものではなかったようで。

      ……ただ、支那に媚びて得られる利益がどれ程の物か?と言う事を考えると、ドゥテルテ氏の決断が良かったのかは疑問視されるところ。
      今後の舵取りに期待ですかね。

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    2. 山田の案山子2016年10月31日 11:00

      比国は過去、スペイン・米国と二度の植民地政策の被害に逢っているが歴史に学ぶことが無い指導者の責任は重大だ。欧米の植民地政策の特徴として命の糧を与えるが生きる術を与えていないのが特徴でシナのアフリカでの振舞いはこれと同じである。比国の工業化は寧ろタイ・ベトナム等他のアセアン諸国の後塵を拝しているのが実情で比国の将来を展望した場合、日本・アメリカの支援を受けるのがが得策である事は明らかだ。大統領のポピュリズムは、ミンダナオとルソンの経済格差が大きすぎ早晩破綻するであろう。

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    3. ポピュリズムに迎合して政策を実施すると、多くの場合転けて大変なことになりますが、フィリピンの場合は内政が相当ヤバいところまで腐敗してしまっていますので、ある程度は効果があるのではと思っています。
      ただ、外交はそれを待ってはくれないので、バランスを採るのは難しいでしょうね。
      ドゥテルテ氏は早晩アメリカに対する決断を迫られる事にはなるのでしょうが、それは大統領選挙が終わってからでも間に合う様に思えます。色々画策しているのでは無いでしょうかね。その内には分かると思いますので、静観する積もりです。
      いずれにせよ、なかなか面白い人物だと思います。

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