2016年11月16日水曜日

日立「レンズ無し」のカメラ開発を成功させる

偶にはこういった技術系の記事も紹介しておこう。

日立が「レンズなし」のカメラ開発 フイルムでレンズ代用、薄く軽く低価格に

2016.11.15 17:06
 日立製作所は15日、従来のようなガラスのレンズを使わないカメラ技術を開発したと発表した。国内メーカーとして初となる「レンズレスカメラ」は、代わりに特殊なフィルムを使うため薄く、軽くなり、車やロボットに搭載しやすくなる。低価格化も可能となる。
産経新聞のニュースをソースとしているが、多くのメディアで殆ど同じ記事が垂れ流されている。



技術的ポイントは、以下の通りだ。
  • レンズを使わないカメラの実現
  • 撮影後に画像のピント調整が可能
  • レンズの代わりにフィルムを使うので低コスト化が可能
記事の要点はこんなところだが、これだけではさっぱりどんな話か分からない。新聞記者は内容が分かって記事書いてるのかねぇ……。
ecn1611150023-p1
こんな写真も紹介されているが、これで分かれば苦労はしないワケで。



さて、この技術に言及する前にカメラの原理について簡単に説明しよう。
一般的なカメラは、光学レンズと被写体の像を保存する為の記録装置を備えている。この他にもシャッターやらファインダーやらヘリコイド(焦点調節装置)やらがあるのだが、まあ、詳しい説明は省こう。
デジカメと呼ばれるモノが一般的になり、今ではスマホや携帯電話で撮影出来るレベルに迄なっているのだが、それでもレンズは必要である。
理由は簡単で、レンズで結像しその結像した被写体をイメージセンサーなどを使って電子データに変換して記録する。つまり、レンズが無いと結像しないということになる。
で、この結像させるためにオートフォーカスに代表されるような焦点調節装置(ヘリコイド)が必要となってくる。シャッターは露光時間を決定するのに必要な部品だな。

デジカメ以前は、「イメージセンサー+記録装置」の構成が「フィルム」に露光させる手法を採っていて、銀塩フィルムと呼ばれる媒体に化学反応による記録を行っていた。



で、冒頭のニュースは「レンズ」を無くしちゃったよー、という話。
無論、レンズが無いのでヘリコイドも不要だ。

じゃあ、どうしているのか?
新技術は、画像センサーの前に新開発したフィルムを置き、入ってくる光線がつくる影に処理を加えて画像データにする。データの分析の仕方を変えることで、ピントの調整が可能になる。
何のことやらさっぱりである。
1115
で、これを解説していたのがこのサイト。まあ、日立のサイトなんだが。

用いる特殊なフィルムというのが、同心円パターンを印字したフィルムだというのだから、オドロキであるが、何故これでレンズが不要になるのかといえば、「モアレ」の効果であるようだ。
外側ほど間隔が狭くなる同心円パターンのフィルムを画像センサーの直前に置き、入射する光線が作る影に、画像処理内で同じ同心円パターンを重ね合わせると、光線の入射角に対応した間隔のモアレ縞が生じることに着目しました。このモアレ縞を利用し、フーリエ変換*4と呼ばれる広く普及した簡単な画像処理で撮影画像を得ることができる技術を確立しました(図)。
モアレ(干渉縞)は、物理的に言うと二つの空間周波数のうなり現象であり、例えばカメラでディスプレイを撮影したときには走査線が上下方向に周期的に並ぶ模様が出たりするアレだ。
このモアレは周期的に発生するという特性があるために、その特性を利用した高精度の位置決めに利用できる。この特性を利用して、モアレパターンを通して得た画像を、フーリエ変換を用いた画像処理によって、撮影データが得られるという事になる。



これ、被写体の位置と共に得られるデータなので、後からピント調整を行うことも可能と。
 従来もレンズレスカメラの仕組みはあったが、画像処理に膨大な計算が必要という課題があった。新技術では、フィルムに同心円パターンを重ね合わせることによって生じる「モアレ縞」の原理を活用し、計算量を従来の300分の1に削減。
得られる全ての光を取り込んでデータ化しておいて、計算によって焦点位置を後から変えると言うことはこれまでもアリだと思われていたのだけれど、膨大な量の計算が必要で現実的では無かったのだとか。
これを、モアレパターンを利用することで距離の基準を容易に把握できるようになるため、計算量を減らすことが出来て、一般的なノートPCレベルの性能でも毎秒30フレーム程度の動画が撮影出来るのだとか。



この話から分かるのは、計算量が増えると予想される高画素のデータには未だ向いていないという現実であろう。
今回開発した技術の性能を測定するため、1センチメートル角の画像センサーと、そこから1ミリメートル離した位置に同心円パターンのフィルムを配置して実証実験を行った結果、標準的なノートパソコンで毎秒30フレームで動画撮影できることを確認しました。
ここで重要なのが画像センサーの大きさなのだが、プレリリースでは1cm角だとしている。
10mm×10mmの大きさは、1型のコンデジに採用される13.2mm×8.8mmに近い数字である。
スマホで採用されるのは4.8mm×3.6mm程度の画像センサーであり、動画を撮影するのに30フレーム程度あれば動画として十分(映画は24フレームだそうで)なので、今回の技術はネット動画配信レベルのデータならば十分に扱えることを示唆している。

面白い技術だと思うぜ。



ランキングへの応援クリックよろしく!
にほんブログ村 ニュースブログ 時事ニュースへ

4 件のコメント :

  1. 山田の案山子2016年11月16日 8:38

    モアレを消すのにローパスフィルターだの躍起のメーカーも形無しですね。
    画像の合成を考えるとおいしそうな技術ですね。高増倍率(低ノイズ)センサーが出現すれば画像処理も一変することでしょうね。

    返信削除
    返信
    1. いやまあ、モアレを消す必要は別途必要なわけですが、発想の逆転ですな。

      既に外国では画像を撮って後からピントを合わせる、合成すると言う事ができるカメラが市販されている(レンズレスでは無い)わけで、実用化という意味では問題は少ないでしょう。

      レンズレスで計算処理を高速化できる目処が付いたので、というのが今回のウリの様で。
      寧ろ、現状の技術で薄型・軽量化がメリットとしてはメリットとして大きいんじゃ無いかと思いますよ。

      削除
  2. あるけむ(R.K.M) @fwbc19652016年11月16日 16:16

    まだ、原理を完全には理解できてませんが、面白そうな技術ですね。
    望遠機能とかどうなるのかわかりませんが、スマホに組み込むには良さそうですね。画像処理専用LSIと一体化したほうが便利かな?

    返信削除
    返信
    1. 僕も説明できるほど理解できていませんが、この話なんかが参考になるのでは。
      http://fujifilm.jp/business/material/interferometer/knowledge/howtoread.html

      後はニュートンリングの説明辺りでしょうかねぇ。
      計算のアルゴリズム的な話が出ていないのですが、干渉縞によって距離が同定できるという理屈を逆手にとって、映像から干渉縞データの抽出を行って光源からの距離をFFTによって求める、といった感じかなぁと。

      スマホに搭載すると、多分色々概念が変わりそうですね。計算でガリガリとCPUを動かしますが、オートフォーカスしない分部品点数が減りそうな。

      まあ、小型化が出来るのか?とか色々よく分からないところもありますが面白いですよね。

      削除

お気軽にコメントを!ハンドルネームは面倒でもお願いします。