2016年11月29日火曜日

生産現場をアメリカに戻すことは出来ないと主張するクルーグマン氏

うーん、経済学的には正しいんだろうけどさ。

クルーグマン教授、「トランプが何をやろうが生産現場を米国内に戻すことはできない」

Posted 2 days ago, by Thomas Brown
著名な経済学者のポール・クルーグマン教授は25日、トランプ次期大統領が海外に移転した製造業の工場を国内に戻させる計画を進めていることについて触れて「トランプが何をやろうが生産現場を米国内に戻すことはできない」とする考え方を示した。
どうなんすかね、コレ。



次期大統領の予定となっているトランプ氏だが、強いアメリカを取り戻す!と、その様に主張している。

バブルを招いた「レーガノミクス」 はたしてトランプ氏は?

2016/11/24
大型減税、大規模なインフラ投資など、次期アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏が掲げる経済政策は、第40代大統領 ロナルド・レーガン氏の「レーガノミクス」と共通点が多いとの指摘がある。どのような点で共通点が多いと言われているのだろうか。
トランプ氏の方針は、レーガン氏の方針と似ているとも指摘されているが、「かつての強いアメリカ」という表現が、何を意味するのかはハッキリとは分かっていない。
トランプ氏が政治的にシロウトだという風に指摘はされていて、それはその通りなのだろうが、アメリカの零落を嘆くアメリカ人は少なくないだろう。
今回の大統領選挙は、まさにそうした点を突いての選挙戦が展開されたのであり、クリントン氏が明確な政治の方向性を示さなかったのに対して、トランプ氏はひたすらスローガンを展開して、有権者に訴えた。



結果的に、得票数は200万票ほどクリントン氏が獲得したとのことだが、アメリカ大統領選挙の制度によって、選挙人獲得数はトランプ氏が290人獲得したのに対して、クリントン氏が232人。

くすぶる「トランプ降ろし」=選挙人投票で逆転狙う-米大統領選

(2016/11/26-14:19)
 【ワシントン時事】米国で共和党の実業家トランプ氏の大統領就任を阻もうとする動きがくすぶっている。トランプ氏は8日に行われた大統領選の一般投票では勝利したものの、形式的には12月19日の選挙人投票で過半数270人の支持を得なければ、大統領には就任できないためだ。
形式的には12月19日まで結果が分からない事になっているが、19日に結果が覆る可能性はかなり低いと言われている。

はたしてトランプ氏はバブルを招くのか?

レーガノミクスと共通点が多いトランプ次期大統領の政策は「トランプノミクス」と称され、市場は期待を寄せている。その政策はアメリカを、そして日本をどう変えるのだろうか。プラザ合意後の日本では輸出産業が大打撃を受け、それを支えるためにとられた財政出動や金融緩和政策はバブル景気を招いた。その後の成り行きはご存じのとおり、バブル経済の崩壊と「失われた20年」、そして現在も続くデフレ不況に至っている。
よって、「トランプノミクス」が実現するのか?が注目されているようだ。



それをベースにクルーグマン氏は「生産拠点をアメリカに戻すことは出来ない」とその様に提言している。
クルーグマン教授によると、国内の製造業者が、生産の海外移転を進めてきたのは、生産をアウトソースすることが目的ではなく、生産そのものが既に産業としては時代遅れのものになったからだと説明。
経済学には詳しくないので、この人の意見にどうこう言う積もりは無いが、「生産そのものが産業として時代遅れ」というのには異を唱えたい。
アウトソーシングは、部品を安価に造る目的でやるのは良いが、生産拠点そのものを海外移転すると、アメリカ国内に残る生産技術の劣化が始まる。
それは国力が低下することを意味するので、望ましい話では無い。
また、国内の工場の生産性は、オートメーション化の進行により大きく向上すると同時に、オートメーション率の向上により労働力の必要性はなくなってきているとも説明。
この説明も、「オートメーション化」が必ずしも生産効率の向上を示すわけでは無い事を考えると、違和感がある。



例えば、日本がガラケーを主力で売っていた時代。
各電機メーカーが何をやったかというと、オートメーション化を推し進めて、自動化を促進した時代から、ユニット生産という形で人手に頼って生産する時代へと移った事がある。
この話は、ガラケーのモデルチェンジのスピードが速すぎて、生産設備を作っていたのではモデルチェンジに間に合わず、かえってコストダウンに対応できないという問題が発生したからだ。

自動車の生産現場でも似たような事が起こっていて、たくさんある生産工程のうち、人手でやった方が早く、確実に対応できる部分は今でも存在しており、個別に仕様変更が望まれるシーンでは、特にフレキシブルな対応が出来るようなシステムが採用されている。

つまり、「何でもかんでもオートメーション化すれば良い」というのは誤りであり、きめ細かなオーダーに対応する為には、寧ろ国内に製造拠点を残した方が、色々と都合が良い。
「時代遅れ」の一言で片付けられるほど簡単な話では無いのだ。

加えて言うと、設計仕様を理解しないユーザーからの仕様変更オーダーに何処まで対応できるのか?という話もあり、アウトソーシングを進めてブラックボックス化すればするほど、生産現場でも販売拠点でも様々な問題が生じる。

製造から組み立てまで海外でやって、仕様決定と設計をアメリカ国内でやろう!という話は一見理想的に思えるが、実は現場を理解しない仕様決定などクソの役にも立たない。現場から離れれば離れるほど、その傾向は強くなるだろう。これは個人的な経験も踏まえて、そう感じる。

とはいえ、全体的な傾向としては、大量生産される商品を海外拠点にと言う話は分かるし、その方が効率的であろう。そういったマクロ視点では異論は無い。



そして、製造業の空洞化は食い止められないだろうとクルーグマン氏は指摘している。
そのため、例え、トランプ次期大統領の政策によって製造業が生産現場を国内に戻したとしても、それが国内での雇用の創出にはつながることはないとの見解を示した。
確かに、製造業をアメリカに戻してアメリカ経済の発展、というのは難しいだろうな。ただ、製造拠点を造って雇用促進という意味では、日本がアメリカに製造拠点を造って現地生産するような流れになっている事から考えても、強ちおかしくは無いと思う。

故に、アメリカに製造業は要らない、という話では無くてサービス業をもっと発展させるという話ならば分かる。
その上で、クルーグマン教授は将来の国内経済の雇用の担い手は製造業ではなく、サービス業だとし、経済政策は、サービス業の成長を重視すべきという持論を展開した。
確かに、サービス業の発展はめざましいものがあるし、よりサービスの質を高めることはアメリカ経済にとってもプラスになるのだろう。



だが、その話とトランプ氏の方針は必ずしも相反する話では無い様に思う。
トランプ次期大統領は、中国など海外で生産された製品を国内に輸入する際の関税率を引き上げると同時に、企業が海外の生産拠点を国内に戻した場合には法人税の減税措置を講じるという政策を講じることにより、生産現場を国内に戻すことを計画している。
アメリカ国内の生産拠点は残すべきだし、減税措置を講ずることで国内に製造拠点が維持出来るのであれば、寧ろ歓迎すべき話だろう。

クルーグマン氏の話は、些か極端に過ぎる気がするのだが……。



さて、アメリカの話を持ち出したが、この話は別にアメリカに限った話では無い。
確かに、日本でも製造業だけに固執して国内経済を停滞させるリスクがあるのは同じであり、よりサービス業に力を入れているべきだと思う。
「ものづくり日本」とか言っている場合では無い。日本は特にソフトウェアに弱い伝統があるので、外資に良いようにやられてしまうケースも珍しくは無いからだ。ただ、だから製造業を蔑ろにして良いというのも又違うと思う。

雇用の担い手が製造業ではなくサービス業だという主張は分かるが、それを推し進めすぎて国力が低下するような状況になるというのは、非常に情けない話である。

例えば、自転車。日本はかつて自転車でもトップレベル(よりちょっと下だったようだが)の物作りをやっていたが、今や見る影も無い。台湾あたりに良いようにやられてしまって、日本で誇れるのは自転車のパーツくらいだ。かつて栄えて今では衰退してしまった分野の1つである。

自動車や産業用ロボットなども、今後はそういう話を聞くようになるだろう。

ただ、「あれもこれも」という訳には行かないのも事実。だから、ある程度路線を絞って自国の製造業を保護する政策を打ち出すことは間違いでは無いと思う。

イギリスは金融工学に秀でる国になったが、それ以外はかなり悲惨な状況になりつつある。
アレの二の舞は、やはり良い事では無いと思う。



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4 件のコメント :

  1. 極端な保護主義は逆に技術革新を遅らせる可能性があります。特に日本の自動車メーカーは鉄鋼業界との結び付きが強く、欧米で盛んに行われているアルミ主体の車体が研究出来る環境にありません。外資がもっと参入していればこうはならなかったでしょう。また中国においては、外資は必ず中国国内で合弁会社を作らないといけないので雇用自体は中国に有利ですが外資は極端な中国の保護主義を警戒して核心技術を中国国内に置くことに対しては及び腰です。
    ただ、保護主義のメリットも数多くありブログでおっしゃっている通り必ずしも悪い話しではありません。
    問題なのは製造の質だと思います。日本家電メーカーなんかは完成品から素材や重工業にシフトしつつあります。特に重工業分野は既得層が大きな権威を有しており新規参入は容易ではないですね。MRJなんか見るとそれが大型になればなるほど新規参入がいかに難しいかということがよくわかります。こういった最先端分野を日本国内に置き保護主義を取るというのは悪い話ではないですね。ただ、日本の製造業が他国に追い付かれている今、全てにおいて保護主義にしてしまうと世界との差は開くばかりのような気もします

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    1. 自国の技術を保護することと、外圧を利用してでも競争を高める事というのは、バランスの難しい話ですよね。

      競争ばかりが良いとは言えませんが、保護主義の行きすぎも出口が無くなってしまいます。特に日本の軍需産業はかなり悲惨なので、海外にモノを売ることを前提に色々刺激を受けてもらった方が良いと思います。
      ……バランスが難しいんですけどね。

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  2.  素人考えだが、金利引き上げ前でもドル高に推移している。これはアメリカにとって輸入単価は安くなるが
    輸出単価は高くなる。こんな状況でアメリカに工場を戻そうと考えろと言うのが無理だ。ドル安状況でも
    戻って来なかったなおさらだ。しかも今や工場は人件費の安い国に移動を繰り返してる。どうやったら戻ってるのやら・・

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    1. ご指摘の内容はクルーグマン氏の主張のバックボーンの一端になっているんでしょうね。
      確かにアメリカのドル高は、アメリカの製造業にとっては痛手でしょう。海外から入っていくる製品の方が安くて質が良いなら尚更ですよね。

      ただ、そのこととトランプ氏の目指す強いアメリカとではタイムスケールが若干違う話となるのかと。時間をかけてでも、強いアメリカを取り戻す、って、そういう話なんだと思いますよ。
      ……トランプ氏は一朝一夕で出来ると思ってるのかな??

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