2016年11月17日木曜日

TPP議論とRCEPの噂

興味深いニュースだったので、今回はTPP関連の話を。

TPP発効せずRCEP、中国に9・6兆円効果

2016年11月17日 10時35分
 【ワシントン=山本貴徳】米議会の諮問機関「米中経済安全保障見直し委員会」は16日、ドナルド・トランプ米次期大統領が離脱を唱えている環太平洋経済連携協定(TPP)が発効せず、日本や中国など16か国が交渉中の「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」が発効した場合、中国に880億ドル(約9・6兆円)の経済効果がもたらされるとする分析結果を発表した。
国民にも評判の悪いTPPの議論だが、アメリカはどうやら抜けたがっている模様。



そもそもTPPというのは、環太平洋戦略的経済連携協定などという長い名前が付いているが、簡単に言えば、日本、アメリカ、オーストラリアを中心とした貿易協定のことであり、環太平洋の国々で経済連携をしましょうね、という取り極だ。
ヨーロッパはEUという組織を作って連携を高め、これで大きな失敗になりつつあるけれども、EUの特徴として、人や物の移動の規制を無くそうという試みが盛り込まれている。
TPPでは、関税の撤廃やサービスの共通ルールによって障壁を無くしましょうという理念になっている。

……早い話がブロック経済だ。

え?ブロック経済なんて覚えていない?
高校時代の歴史の授業で出てくる「ブロック経済」は、一部の国が連携して関税同盟を結んで、その他の国との間には高率関税や貿易協定などの関税障壁を張り巡らせて、共同で利益を出そうぜ、みたいな考え方だ。保護貿易圏の形成と言っても良いかもしれない。
経済のグローバル化が進むと、どうしても変数が多すぎで経済効果が予想しにくくなると言う問題が出てくる。で、気心の分かる連中で繁栄しようぜと画策するわけだ。流れとしては、TPPも概ねそんな感じである。



ただ、これは日本にとってもメリットもあればデメリットもある。

TPPは締約国内で関税障壁が基本的に撤廃されるので、関税によって国内の産業を守るという試みが出来なくなってしまうデメリットが出てくる。
この他に、サービスの自由化を目論んでいるので、既存のサービスが外資に蹂躙されるというリスクもあり、国ごとに決められている政策が機能しなくなる可能性も結構あるのだ。

更に日本国内で評判が悪いのは、TPP交渉の内容が殆ど明かされていない点である。秘密主義にも程があるが、しかし、交渉内容を明かさないという約束で締結に向けた動きが進んでいるのだし、明かすとマズい部分もある。これは評判が悪いモノのある意味仕方が無い。

一方のアメリカだが、次期アメリカ大統領のトランプ氏は、TPPに反対する立場にいる。

「TPPは死んだ」トランプ大統領にアメリカの専門家が懸念

投稿日: 2016年11月10日 08時30分 JST 更新: 2016年11月10日 08時35分 JST
 トランプ米大統領は、世界経済にどんな影響を与えるのか。米有力シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」のゲリー・ハフバウワー氏に聞いた。
     ◇
 トランプ氏は大統領就任後、約5千ページとされるTPPの合意文書を文字通り引きちぎるようなことをするだろう。少なくとも米国が参加し続けるかという意味において、トランプ政権下で「TPPは死んだ」と言っていい。


日本にとって、アメリカは最大の貿易相手国でもあり、日本に対してアメリカは高い関税をかけている。アメリカに対して日本は殆どゼロに等しい関税しかかけていないのに不公平極まりない話で、アメリカにとっては死活問題になる可能性は確かにあるのだ。



そんなわけで、日本ではTPP法案の採決を急いでいるが、アメリカでは暗礁に乗り上げた恰好である。

TPP承認案、衆院通過 与党が採決強行

2016年11月11日 朝刊
 環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案は十日、衆院本会議で与党と日本維新の会などの賛成多数で可決され、参院に送られた。民進、自由、社民の野党三党は採決前に退席し、共産党は反対した。米大統領選でTPPからの脱退を明言するドナルド・トランプ氏が当選したことで協定が発効する可能性が遠のく中、与党は採決を強行。三十日までの今国会の会期を延長し、他の法案と合わせて成立を目指す構えだ。
野党は採決する気が無いので職務放棄をしている。よって、与党によって粛々と採決に向けて色々な議論がなされているワケだが、アメリカでは議論にすらならない模様。

<TPP>議会承認断念、オバマ米大統領「無念」

毎日新聞 11/15(火) 9:50配信
 【ワシントン清水憲司】オバマ米大統領は14日の記者会見で、日米など12カ国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について「成功はしなかったが、米国の労働者や企業のためになると訴えた」と言及、TPP離脱を掲げた共和党ドナルド・トランプ氏(70)が米大統領選で勝利したことにより、TPPの議会承認を断念せざるを得なくなったことに無念さをにじませた。
そんな感じのTPPなのだが、当然他国も色々画策している。



TPPの枠に入り損ねた支那はというと、冒頭のニュースで報じられている東アジア地域包括的経済連携(RCEP)というものを形成しようとしている。

RCEPにも日本は参加しているのだが、東南アジア連合10カ国+インド、オーストラリア、ニュージーランド、支那、韓国と合計16カ国でのFTAがその正体である。
余り馴染みの無いRCEPだが、一応、話は進められているのである。
 首相は「知的財産の保護はTPPでは守られる。RCEPはどうなのかは、これからの交渉次第だ。TPPが一つのモデルになるべきだ」とTPPの意義を改めて強調した。RCEPの交渉には日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国などが参加している。
日本にとってRCEPだと、知財関連の主張が通らないという問題もあるのだが、最大の問題は支那をどう攻略するかである。
この他に、日本はEUとのEPAにも触手を伸ばしている。

トランプ新大統領でTPPピンチ→EUとのEPAに活路 政府が閣僚級会議を設置へ

2016.11.16 22:12

政府は16日、欧州連合(EU)と交渉中の経済連携協定(EPA)締結に向け近く、閣僚級会議を発足させる方針を決めた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)脱退を主張してきたドナルド・トランプ氏が米次期大統領に就任することを踏まえ、自由貿易推進の立場を改めて鮮明にすることが狙い。
こちらも何年も前から目立った動きが無いので、しばらくは進まないだろうが、こうした動きは色々と行われてはいる。



日本としては、アメリカと組んで支那包囲網を形成できるのが、一番現状において望ましいと考えている。しかし、その対抗馬としてのRCEPについても進めておかなければ、見せ札としては使えない。そしてEUとのEPAについても、あわよくば、というところだろう。

どちらが重要でどちらが単なる牽制なのかは、誰にでも分かる話だが、しかし次善の策を講じてこそ外交と呼べるものだ。

外務省や財務省は又別のことを考えているのだろうが、少なくとも安倍政権はTPPの事をトランプ氏に口説きにかかるのだろう。
「アメリカとしても損ばかりじゃありませんぜ」と。
日本としても、得ばかりでは無いけれど、これを奇貨として色々画策する積もりであるようだ。

今後どうなるかは、なかなか見物である。



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2 件のコメント :

  1. トランプ本人は大統領当選後はTPPに関してはいまだに沈黙を貫いていますね。たぶん影響を精査しているところでしょう。
    トランプの政策顧問からもこの件に関しては一切コメントしてませんし、騒いでいるのは周囲ですね。トランプは公約を次々と変更してますから、もしかしたらどんでん返し、あるかもしれませんよ

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  2. 山田の案山子2016年11月18日 2:31

    知的財産権を認める国・地域でのTPPやRCEPには一定の意義がある。現時点ではTPP・RCEP共に中国をはじめ新興国との間で知的財産権の折り合いが見られず日本にはメリットがなく、技術水準が一定のレベルに無い相手との協定にはリスクが高まる。

    返信削除

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