2016年12月20日火曜日

”水”商売と似非科学

消費生活センターが発表した内容が衝撃的だとして、少々騒ぎになっている。

「水素水」健康効果うたう表示は問題 国民生活センターが業者に改善求める

2016.12.16 10:22

水素が高濃度に含まれているなどとして販売されている「水素水」やその生成器の一部の商品で、販売する会社のホームページや商品パッケージで健康効果をうたうものがあり、健康増進法や景品表示法に抵触する恐れがあるとして、国民生活センターが業者に文言の改善を要望したと15日、発表した。
まあ、何というか実に当たり前の結果を発表したに過ぎないのだが……。



実のところ、この手の商売は昔からある。
”水”商売だと揶揄されるが、やれ「ナントカ還元水」だとか「高濃度酸素水」だとか「水素水」だとか「海洋深層水」だとか。

だが、こうした商品の多くは、効果を過剰に謳ったモノだ。水分は人間の活動に不可欠だが、何か特別な効果を期待する類のものではない。それでも、毎度毎度、踊らされる人はいるのである。

そして、今回の「水素水」だが、芸能人を使って思いっきり商売展開をしている所があって、まあ、何というか呆れてモノが言えないというか。

藤原紀香「水素水」へのハマり具合がスゴいことに サラダにも、お風呂にも、愛之助にも

2016/5/20 19:11

   女優の藤原紀香さんが今話題の「水素水」にハマっている。水素水を使った美容法をブログで紹介するのみならず、オススメ商品を集めたネット上の公式セレクトショップ「紀香バディ!コム」で水素水の関連商品まで販売している。

水素水芸人として有名になった藤原紀香氏に、アイドルまで幅広く使ってのアピールである。

藤原紀香に続いて嵐・松本潤まで?相次ぐ“水素水アピール”の背景

デイリーニュースオンライン 2016年11月28日 07時06分
 嵐の松本潤(33)が毎朝、水素水を飲んでいることを11月17日放送の『VS嵐』(フジテレビ系)で明かし、ファンの間で話題となっている。話は同番組の冒頭で、櫻井翔(34)の「朝起きて必ずすること」という問いかけに対し、松本潤が「水を飲むこと」と答えたことから始まる。するとメンバーから、松本潤は水素水を飲んでいることを暴露され話は拡大した。
有名人が使っているから「私も」という視点でのユーザーは少なからずいると思う。本人たちの意図がどこにあるかはともかくとして、この手のアピールは実に効果的だ。



しかし、一方で、科学的根拠について疑問視されてきたのも事実だ。

実は、別のブログでも取り上げているのだが、水素水に関する研究というのはそれなりにされているらしいのだが、実際にしっかりとした論文になっているものは多くない。
ここでは、医学雑誌に論文として投稿されている内容を紹介したい。この著者の大澤郁朗氏は東京都健康長寿医療センターの重鎮のようで、水素医学に関する臨床論文を幾つか書かれているようだ。
雑誌に載っているのはその内の1つ。
実は、長寿医療の界隈では水素治療はトレンドのようで、世界中で250報程度の論文は出ているようだ。が、これが多いか少ないかというと……。

まあ、言及は避けて内容に入りたい。
論文の内容としては、水素水によって「多彩な(医学的な)効果が期待できる」とする一方で、「体重 50 kg の人が 2% の水素ガスを吸引した場合、全身が水と仮定すると H2濃度は 0.016 mM、全量で 0.8 mmol となる。これは、1 L の飽和水素水に含まれる H2量と同じで、10 mLkg の水素生食液を腹腔投与した場合も同じ濃度となる。」と指摘されている。
つまり、高濃度の水素を体内に取り込まないと、効果は期待できそうに無いと、そう言及されている。まあ、詳しくは論文を読んで頂ければ良い。



簡単に言うと、高濃度(水素分子で飽和した)飲料水素水を、口から飲んでも、速やかに体外に排出される。
体内に素早く拡散する事が期待されるが、絶対量が少ないと効果は期待できないね、と言う事になる。

それを踏まえて今回のニュースを見ることにしよう。
実は、産経新聞のニュースでは一番重要な点に言及が無い。スポンサーの圧力でもかかったのだろうか?

J-CASTの方が詳しく書いてあったので、そこから引用しよう。
   国民生活センターは水素水に関する相談が11年度以降増え続けていることを受け、容器入り水素水10銘柄と生成器9機種のテストと、事業者へのアンケート調査を行いその結果を2016年12月15日に発表した(テスト期間:2016年9月~11月)。その結果、容器入りではペットボトルの2銘柄で溶存水素(水素ガス)は検出されなかった。また水素ガス濃度表示があり、それに「充填時」「出荷時」時点と記載のあった5銘柄のうち3銘柄は表示値より低い濃度だった。生成器では、水素ガス濃度の表示のあった5銘柄のうち3銘柄が表示値より低かった。
かなり残念な結果だったようだ。
水素水
なんと、多くの商品で溶存水素が記載通りでは無くて下回っており、ペットボトル2銘柄では溶存水素は検出されなかったと言うのだ(注:ペットボトルの溶存酸素に関しては、そもそも溶存酸素を含まないと言及されているらしい。だが、それは既に水素水ではないよね?)。

溶存水素濃度

  • 開封時の溶存水素濃度を測定したところ、容器入りのパッケージの溶存水素濃度表示に、充填時や出荷時と記載のあった5銘柄のうち3銘柄で、表示値より測定値の方が低い濃度でした。また、パッケージに表示のない3銘柄のうち、ペットボトルの2銘柄では溶存水素(水素ガス)は検出されませんでした。
  • 開封時に溶存水素が検出された容器入り8銘柄を、未開封のまま20℃で1カ月間保管したところ、全ての銘柄で溶存水素濃度がやや低下していました。
  • 開封時に溶存水素が検出された容器入り8銘柄を、開封後に蓋(ふた)を閉めて放置した場合には、溶存水素濃度が5時間後には30~60%程度に、24時間後には10%程度に低下しました。
  • 生成器の取扱説明書等には、水質等により値が変わる旨の記載もありましたが、取扱説明書等に溶存水素濃度の表示のあった銘柄で、表示値よりも測定値の方が低くなったものがありました。
  • 生成器で作った水をコップに移し替えると、1時間後に溶存水素濃度が約50~60%に低下しました。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20161215_2.html
実際に、消費生活センターのサイトを確認しても、期待通りの溶存水素濃度は確認できず、開封後に直ちに水素は抜けていくので、24時間経過すると、ほぼ水素は残らないと指摘している。



早い話が、水素水には十分な水素が含まれていなかったという結論なのだ。

論文では、飲料水が水素分子で飽和する濃度は1.96ppm程度(1mの水に0℃・1気圧下で0.98mol溶けて飽和)とある。では、「高濃度」と謳っている商品は一体どの程度の濃度なのだろうか?
実は、「高濃度」を謳っていても、表記は1.6ppm程度まで。で、消費生活センターの調査で、そこまで高濃度だった水素水は無く、どの商品も1ppm前後、ペットボトル2銘柄に関しては検出されなかった、と、している。

ちなみに消費生活センターの調査はガスクロマトグラフという少量の元素でも検出できる時間のかかる調査方法を採用していて、概ね信用して良いと思われる。

なお、2ppm以上を謳っている商品は、飽和濃度が1.96ppmである以上、詐欺だと思って良いだろう。加圧して水素を加える方法もあるようだが、パッケージされている時点で徐々に抜けていき、開封した時点で大気開放されるので、意味は無い。
水道水にはほぼ水素は含まれていないので(大気中の水素を取り込む傾向にあるが、大気中には微量しか水素が含まれないので、ほぼゼロと考えて良い)、1ppmでもあれば、と思う人もいるだろう。

だが、「高濃度」ではないし、紹介した論文でも水素治療の効果を確認したのは、「腹腔投与」と呼ばれる内蔵に直接投与する手法や「ガス吸引」(直接高濃度の水素を吸引)で、「経口投与」(口から飲む)に関する言及は薄い。経口投与の場合は、0.8mM、つまり1.96ppmの水素で飽和した水を飲んでいる場合に言及している。

水素を水として、つまり水素水を体内に取り込んだ場合に、小腸や大腸では直接高濃度水素ガスを吸った場合よりも水素濃度が一時的に高くなるという指摘はあるが……。

そもそも論文でも、「水素による治療効果」が認められていると言及はしているが、個体差や確認できた効果との因果関係にはハッキリと言っていない。
「効果は期待できる」という程度の話になっていて、具体的な研究はこれからだというのだ。

このこと一つとっても、昨今の水素水騒ぎは、バカバカしい限り、という話になる。
消費生活センターのサイトでも注意喚起しているが、「アンチエイジング」や「悪玉活性酸素を無害化」というのはほぼウソだ。「アトピーに効果あり」とか、「美容に良い」なんてのも真っ赤なウソで、「血液さらさら」とか、どういう理屈でそうなるのか分からないものまで様々だ。



なお、自信満々に「マグネシウムスティックで水素を発生させる」とか、「7.0ppmの高濃度」とか、意味の分からない似非科学を振りかざすメーカーもいるようだが、水素溶存濃度は自然科学で決まる量なので、それを超えるなんてことはちょっと考えられない。

サイトには、水素発生カプセルを入れてボトルを振れば、7.0ppmの高濃度水素水が!とか胡散臭い説明が書かれている。だが、それは水に水素が溶けているのでは無く、混ざっているだけだ。
当然ながら、ボトルの蓋を開けた瞬間に速やかに水素は大気中に拡散する。このプロセスを経て体内にどの程度の水素を取り込めるかは知らないが……、そうした観点での説明が無いので「プロ用」などと説明されても失笑するしか無い。

ちなみにメチレンブルーなどの水素判定に使われる試薬だが、水素で無くても反応する。だからこの系統の試薬は「水素判定試薬」という名前が付いているだけで、溶存水素量が測定できるわけでは無いのでご注意を。

別に商売の邪魔をするつもりは無いが、ウソはダメだ。

消費生活センターの結果を鵜呑みにしろとは言わないが、きちんとした調査方法で調査した結果である事は間違い無い。
こんにゃくゼリー事件の事もあるので、消費生活センターを信頼できるかと言われると、なかなか微妙な気はするが、「水商売」をする連中はもっと信用できない。

色々な意味で、考えさせられるニュースである。



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