2017年1月31日火曜日

ホンダ、車両火災の原因を作ったとして訴えられる

普段はこうした事件絡みのニュースは取り扱わないのだが。

無罪の母親がホンダを提訴

毎日放送 1/30(月) 19:19配信
 22年前、自宅に放火し長女を殺害したなどとされる罪で無期懲役の判決を受けたものの再審で無罪となった母親が、火災は軽ワゴン車からガソリンが漏れて起きたとして、メーカーに損害賠償を求める訴えを起こしました。
この不可解な事件は、また続報があったのかと驚いた。良い機会なので、一度整理してみたいと思う。

問題の事件は、wikipediaで「東住吉事件」として紹介されている。

事件の概要はこうだ。
1995年7月22日に、大阪府大阪市東住吉区にある民家で発生した火災により、女児が死亡。この事件に関連して内縁の夫と女児の母親が逮捕されている。

で、この女児の母親が冒頭のニュースに出てくる青木惠子氏である。内縁の夫は朴龍晧氏。
被害者となった女児は、青木氏の実の娘、当時11歳で小学六年生であった長女だ。

事件

この一件、本来であれば単なる住宅火災として片付けられる事件だったハズだが、この火災がそもそも不自然なのである。

火元はシャッター付きの駐車場に停められていた軽ワゴン車だと言われており、隣接する風呂場に入っていた当時11歳の長女が、午後4時だったにも関わらず丁度入浴していて、この火事によって焼死している。


出火状況から見て、警察も不審にに思ったらしい。

7月22日に事情聴取、23日に実況見分、24日には身体検査令状に基づく身体検査を受けている。27日には火災の重要参考人である事が警察から両者に告げられている。
母親と内縁の夫が逮捕された容疑は、放火、殺人、及び保険金詐欺だったようだ。

何しろ、当時11歳だった長女には、受取金額1,500万円の災害死亡保険がかけられていたのである。調べていただくとわかるが、死亡保障1,000万円を超える保険というのは特別な設定をしないと、なかなか見当たらない。この長女にも、生き残った長男にも同様に高額な保険がかけられていて、警察の脳裏には「保険金殺人」という単語が過ぎったことは想像に難くない。

で、事件発生が7月11日、逮捕が9月10日という事で、逮捕までに時間がかかっている理由はよく分からない。が、警察が強く事件性を意識したのは、どうやら両人の借金の他にも理由があったようだ。
実は、被害者である11歳の長女は内縁の夫から性的暴行を受けていた痕跡があった。つまり、強姦されていたのだ。また、警察で逮捕前に行われた事情聴取においても、長女との性的関係について自発的かつ任意に供述している。
また、恐るべきことに妻の自筆の手紙には「朴の精液が娘の膣内から出てきてる」という内容が記載されていたと言われ、日常的に性的虐待があった事が示唆されている。

出火当時、内縁の夫はパンツ1つで部屋にいたとされ、娘は入浴中。内縁の夫が娘に風呂にはいるように指示したというから、何とも怪しい状況では無いか。もちろん、状況だけで当時を測ることは出来ないが。

だが、警察の思い描いたカバーストーリーは、こうした事実から容易に思い浮かぶ。
  • 長女を殺害
  • ⇒ 家屋に放火
  • ⇒ 保険金の請求
実に分かり易いな。
殺害の動機は妻側にあり、長女と内縁の夫が性的関係にあったことを知って逆上、証拠隠滅のために放火、と、そんな流れで推測したのだと思われる。


さて、警察の捜査が不十分であったのか、或いは取り調べの際に不備があったのか、本件は裁判で争われることになる。

(裁判)
  • 1999年5月18日 大阪地裁:物証の証拠調べ請求を却下し、二人に対して無期懲役の判決 ⇒ 無実を主張して控訴
  • 2004年12月20日 大阪高裁:控訴棄却 ⇒ 無実を主張し上告
  • 2006年11月7日 最高裁:上告を棄却し、無期懲役が確定
(再審請求)
  • 2012年3月7日 大阪地裁:再審請求により審理開始の決定 ⇒ 大阪地検は即時抗告
  • 2012年3月29日 大阪高裁:職権で刑の執行停止を認める ⇒ 検察側は即時抗告 ⇒ 大阪高裁は決定の取り消し ⇒ 弁護側が特別抗告 ⇒ 最高裁は特別抗告を棄却
  • 2015年10月23日 大阪高裁:即時抗告を棄却と同時に、形の執行停止を決定 ⇒ 形の執行停止に対する異議申し立て ⇒ 申し立ての棄却 ⇒ 二人は仮釈放
(再審)
  • 2016年4月28日 大阪地裁:再審開始
  • 2016年8月10日 大阪地裁:無罪確定、検察は控訴権を放棄し即日確定へ
再審請求後の検察側の反応がどうにもおかしいわけだが、当時の捜査資料に不備でも発見したか、それとも別に理由があったのか。とにかく再審の時には新たな証拠を提出するような事すらせず、「有罪の主張・立証は行わない」などと言う始末であった。
想像するに、物的証拠は無く、警察における自供のみの認定で、主張するに足りないと判断したのだろう。

そして、この再審の結果、無罪となる。

この再審での判断は、「本人らと本人犯行とを結びつける直接証拠は請求人両名の自白調書及び供述書のみ」これがの信用性が揺らげば、有罪認定も揺らぐ、とし、「本人達の自供内容が不合理」で「信用できない」から、「有罪とは言えない」 ⇒ 無罪という、「推定無罪の原則」を踏襲したものである。
状況的には限りなくクロでも、自白内容が信用できないから、自白に支えられた判決も白紙だというわけだ。


「無罪」は「何もやっていない」という事を裏付けるものではないのである。

スゴイ話だが、被害者の長女はやっていられないだろうな。

何しろ、内縁の夫の方も母親の方も、火災発生当時、風呂場にいたはずの長女を救出に行っていない。

調書に基づいた再審の判決文によると、火災発生当時、「請求人乙(母親)が路地に出た後S(息子)と一緒にしゃがんでじっとしており,請求人甲(内縁の夫)との間で大丈夫などと会話を交わしている」や、「表路上に出た後もだれに言うともなく「中に子供がいる」などと口にするにとどまっていたこと」という不自然な行動をしており、裁判官をしても「不自然」だと言わざるを得ない状況であった事が伺える。

消火活動の事実や119番通報(母親の証言による)すら証拠として残されていないのである。

また、火災発生が16時50分頃、消火開始は16時57分頃とされているが、消防車が火災発生後7分程度で到着したとされているのに、浴槽にいたハズの長女を救出にすら行けていないのも、不自然だ。

果たして、消火活動が始まる際に消防署員に長女の存在を訴えたのかどうか疑わしい。

消防車が早い段階で現場に到着したことは、家人による通報があったことを臭わせる証拠とは言えるが……、それだけで長女だけ救出しなかった理由は説明できまい。

火の回りが早すぎて救い出せなかった可能性は当然ある。
が、隣のガレージが激しく燃えていれば、音はするだろうし熱だって壁越しに伝わってきていただろう。逃げ出せずに浴室で死亡するというのは、あまりに不合理である。

保険の受け取りの際には、「煙が風呂場にまわり,入浴中の娘がその煙を吸って気絶した」と説明していたそうだ。が、早々に逃げ出した妻や内縁の夫がどうして長女が「気絶した」と、見てきたかのように説明したのだろうか?実際に見たのか?それとも後から「そうだったのでは?」と消防か警察から説明された?

不可解な部分が多すぎる。

個人的には、長女はすでに逃げ出せない状態だったのではないか?放火はその証拠隠滅ではないか?そのようにすら思う。

ともあれ、話はそこで終わっておけばこのブログで取り上げることも無かった。
が……、なんと、冒頭に紹介したように、この青木氏はホンダを相手取って訴訟を起こしちゃった。

え?証拠は何処なのよ??

ホンダ同様、ここでは訴状を確認する術がないので、ここでも憶測を述べるに留まる。だが、多分、再現実験の結果をもって争うのだろう。

大阪小6女児焼死事件 再審開始の裏に徹底再現実験

2015年10月25日 10時00分
1995年に大阪市東住吉区で発生した住宅火災で小学6年生の青木めぐみさん(11=当時)が焼死し、現住建造物放火と殺人罪に問われ、無期懲役が確定した母親の青木恵子元被告(51)と内縁の夫・朴龍晧元被告(49)に対し、大阪高裁は23日、再審開始を認めた。2人は事実上の“無罪”を勝ち取った。
これは再審の結果が出た際の東スポの記事だ。が、内容を読むとスゴイ事が書いてある。
「再審・えん罪事件全国連絡会」によると「この間に弁護側も検察側もそれぞれ火災の再現実験を重ね、供述通りに7・3リットルのガソリンをまけば、まいた本人が火だるまになることが判明し、自然発火だったことが証明された」という。
「7.3Lのガソリンをまけば、まいた本人が火だるまになることが判明」とか言っているが、これが「自然発火だったことを証明」するらしい。
バカじゃないのか?

そもそも、7.3Lのガソリンをまいたという供述そのものが「信用できない」という裁判所の判断があって、「自供が信用できないこと」を理由に無罪になっている。

寧ろ、裁判所も当初は「本件車両のバッテリー等の電気系統,エンジン,燃料タンク及び燃料系配管,車内積載物からの発火の可能性は認められず,排気系統・エアコンコンプレッサーの過熱による発火の可能性も極めて低い」「よって本件車両からの自然発火による可能性は極めて低い」と結論づけている。


ちなみに、再審では、専門家による再現実験の結果を高く評価している。
これは、火災現場を模して作った閉鎖空間におけるガソリンの気化により、風呂釜の種火に引火することを証明する実験だったわけだが、この実験によれば着火後数秒で黒煙が発生し実験小屋内が見えない状態になる事を確認している。

このことに基づけば「自白による」状況説明に基づき放火すると、「ガソリンを床に撒いて、放火」した結果、点火者は火だるまになる可能性が高いという結論に至るのは理解できる。

だから、「自白内容は信用できない」という結論に達した。ソレも分かる。

また、ガソリンによる激しい黒鉛の発生が、自白からは読み取れないという問題も指摘されている。だから、自白の内容は科学的に説明できないというのもわかる。

だがそうすると、ガソリンによる火災で無かったとすると、火災原因は一体何なのか?と言う話になる。
「自然発火」というが、ガソリンを床に撒くような不自然な状況でも作らない限り、発火が起きないことは、多くの人が日常的に車を利用している上で明白な事実である。

注:コメントを頂きましたが、発火現象は「可燃物」「酸素」「熱源」があってはじめて起こりうる現象です。当然、ガソリンを床に撒いただけでも発火には至りません。何処かに種火があってこそ、発火する訳で。事件は夏に起こり、天候は雨天、静電気による影響も除外すべきでしょう。つまり、自然発火する可能性は極めて低かったと言えます。

更に、消防隊員の供述によれば、火災現場において風呂釜周辺は燃えていなかったという事実があり、火事の現場で黒煙を見た人もいない。ガソリン以外の原因に基づく「発火」をより強く疑わざるを得ない。

にもかかわらず、再審の判断の中には不可解な文言が記載されている。
またy町新実験においては,ガソリン蒸気が風呂釜種火に引火した直後,火炎は風呂釜周辺から離れてガソリン撒布機のほうに向かい,ガソリン液体の存在する辺りが燃え上がった状況が認められることや,この状況を説明するI供述に照らすと,本件火災後,風呂釜が原型をとどめているとか,バーナー自体が焼損していないこと,風呂釜と本件車両給油口とが約90センチメートル離れていた位置関係にあることなどは,風呂釜種火が発火原因であることを否定する根拠にはならない。
確かに、理屈としては分かる。
ガソリンが床に存在し、風呂釜が焼損しない可能性は、ある。あるが、ガソリンに可燃性があるように、風呂釜で使用するガスも可燃性があるのだ。そちらは火事に関係無いというのは、ちょっと無理があるのではないか?
本件火災当時少なくとも何らかの原因でガソリン液体が床面に漏れた場合,そのガソリン蒸気が風呂釜種火に引火する可能性を否定することができないこととなる。
そして、床にガソリンが漏れていれば、火が付く可能性はある?「何らかの原因で」って、それは既に「仮定」で、その上で「引火する可能性」を仮定している。

その事から車両火災の可能性を論じるのはどうなのよ。ガソリンの発火点は300度。仮に車の給油口が開いていたとしても、引火し発火するに至るには、事件当日の環境ではハードルが高かったと思われる。
本件車両からガソリン蒸気が漏洩し,本件車両床下の過熱した部品が火種となるなどして本件車両が発火した可能性については,請求人両名の確定審はいずれも,その可能性は低いなどと判断しているが,完全には否定していない。
そりゃ否定は出来ないのだろうけれど、だからといって「車両からガソリン蒸気が漏洩し、風呂釜の種火に引火」というのは、ガソリンの性質を前提としても、あまりに論理飛躍に過ぎるのでは無いか。それこそ、実験事実に支えられていない妄想と言えるだろう。


そもそも、車両火災はガソリンに由来する火災であるために、多くの場合、火災に多量の黒鉛を伴う。

適当な動画を貼り付けてみたが、検索に引っかかる内容では殆どのケースで黒鉛を発生していた。まさか、ホンダのアクティ(本件に関わる車両)は黒鉛を生じないという特殊な事情があるとも思えない。



そうすると、やはり当日の証言と食い違う。



結局のところ、大阪地裁の再審時の判断は、二人が有罪であるとは言えない、と言うことを認定するに留まり、本件火災が車両によるものだと認定する内容では無い。

検察としては、証拠が怪しげな自白だけである以上、公判を維持するのは不可能だと判断したのだろう。況してや事件は22年前の話。新たな証拠など発掘できるはずもなし。それを責められる話では無いが、何ともやりきれない。

一方、裁判所の判断の正当性も、何とも判断しかねるが……、それを根拠に訴えられちゃったホンダはイイ迷惑だろうな。



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6 件のコメント :

  1. まあこの胸糞事件はブログ主の指摘どうり、状況証拠が黒すぎて十人中十人が疑って掛かる内容ですね。
    故に警察も少々強引な捜査を行ったのでしょうがそれがあだとなりした、もっと時間をかけて物証を集めていればと思いますが後の祭りです。
    しかしホンダへの訴状は本当にびっくり、どうせ弁護士に焚き付けられたのでしょうがろくでもない匂いしかしません。

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    1. 状況証拠が揃いすぎて、警察は物的証拠集めを疎かにしたのかも知れませんね。

      とはいえ、娘がどのような状態で発見されたのか?とか、検死の結果だとか、色々と判断材料になりそうな証拠は残っていそうなものですけど。

      余談ですが、この再審の結果を知ったとき「それでも僕はやってない」を思い出しちゃいました。

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  2. いやン、カバン(^^♪2017年1月31日 22:25

    >内縁の夫は朴龍晧氏。
    お察しってやつだ。

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    1. 放火、強姦、詐欺と立派な国技三本立てですからねぇ。

      とはいえ、証拠も無いのに疑うわけにも行きません。
      状況は限りなく黒くても、ですね。

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  3. あるけむ(R.K.M) @fwbc19652017年2月1日 3:22

    自分も、この事件は色々疑わしいと思います...が、この記事への指摘だけ。

    燃焼は三要素(可燃物・酸素・熱源)が無いと発生しません。
    この事件の場合、再審では、可燃物=ガソリン(の蒸気)、酸素=大気、熱源=風呂釜の種火、と言っているわけですよね。
    単に、ガソリンを床に撒いただけでは、発火しません。
    (床に撒いただけで発火したら、ガソリンをこぼす可能性が高いセルフ給油所なんて、危険すぎます)
    事件発生日が1995年7月22日なので、静電気による火花が熱源である可能性は低いと考えます。

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    1. ご指摘の点は確かに「自然発火」がガソリンをばらまいただけで起こりうるみたいな理解ができてしまいますね。
      注意します。

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