JASRACの決定、音楽教室から使用料徴収へ

コレに関してはかなりネットでの批判は多い。

音楽教室から使用料徴収へ JASRACが方針決定

2月2日 18時02分
楽曲の著作権を管理しているJASRAC=日本音楽著作権協会が、来年以降、楽器の演奏を教える音楽教室から使用料を徴収する方針を決めました。対象となる教室は9000か所におよび、通知を受けた事業者は「教室での利用は使用料が発生するケースには当たらない」などと反発しています。
ただ、誤解も多いようなきがする。



個人的にはJASRACという団体が好きなわけではないし、音楽業界の足を引っ張っている感じもわかる。分かるが、しかし、今回の件に関しては、僕個人としては、「当たり前の話」だと、そのように感じている。

で、何が問題で、どうなっているのか、という話を少ししたい。
JASRACは300万曲を超える楽曲の著作権を管理し、コンサートや演奏会などで使われた場合、使用料を徴収しています。これまでにカラオケ教室やダンス教室をはじめ、音楽を教えるカルチャーセンターなども対象としてきましたが、楽器の演奏を教える音楽教室についても来年1月から対象に加える方針を決め、先月から教室を運営する事業者に通知をしているということです。
こんなことを書かれても普通の人は分からない。
そもそも、著作権って何?という世界なのである。



突っ込んだ話をする前に、こちらの記事を紹介しておこう。

宇多田ヒカル、JASRACの方針に「学校の授業では私の曲を無料で使って」

2017年2月4日 19時0分
 歌手の宇多田ヒカル(34)が4日、自身のツイッターで日本音楽著作権協会(JASRAC)がヤマハ、河合などの音楽教室から著作権料を徴収する方針を明らかにしたことについて、自分の曲を使う場合は著作権料を気にせず使ってほしいと表明した。
この記事を読んで、好意的な印象を持つ方も多いと思う。
 
だが、これは特殊な事例なのである。

まず、著作権のというものがいかなるものかということが一般の人には分かりにくい。
ここでは音楽に話を限定させて頂くが、実際には美術品だとか、工芸品だとか、文章だとか、あらゆるものに著作権というものは発生すると理解されている。
例えば、子供が壁に落書きをしたとしよう。その落書きにも著作権は発生するのである。そういうものだと、決められている。そう理解してもらって良い。
どんな素人でも、鼻歌でも良い、曲を作ったとする。そこには確かに著作権が発生するのである。
「自らの思想・感情を創作的に表現したもの」が著作物となるので、子供だろうと大人だろうと、素人だろうとプロだろうと、創作した「表現」には著作権が発生するのである。
 
でも、この著作権というのは発生したから何か金銭的な価値が生じるか?というと、そういう訳ではないのが、この著作権のややこしいところなのです。
例えば、ある音楽家が曲を作曲したとする。そうすると、曲自体に著作権が発生するのだが、これを演奏する人はどうなるのか?というとこれまた演奏者が曲を解釈して「自らの思想・感情を創作的に表現」するので、著作権が発生する。なお、この権利には期限が設定されているのだが、多くの人は作曲したら一生その権利は消滅しないものと、そう考えて良いだろう。著作権の保護期間は50年から70年であり、長期に渡って保護される権利なのである。



ここで、曲を作った人と演奏する人が同じであれば、話はまだ分かりやすいのだが、実のところ違う場合のほうが圧倒的に多い。
だから、演奏者にも著作権が発生するのだが、曲を演奏する行為で、作曲者の著作権を侵害するという事態が発生する。
ところで、作曲家にしても演奏家にしても、曲が売れなければご飯を食べていけないので、コンサートとかを開いてお金をもらう。更にこれをCDにして販売する、なんてこともやるのだけれど、これも個人が作って販売するのは難しいので、業者に依頼するわけだが……、これも作曲家や演奏家の著作権を侵害する形になる。

いちいちこの著作権の侵害を論じていたのではきりが無いのだけれど、著作権のややこしいところは、侵害があった時にそれを訴えることをしなければ、権利の行使が出来ないというところにある。

宇多田ヒカルの記事を示したのは、まさにそこなのだが、「学校で使うときはフリーだよ、お金を払わなくてもいいよ」と、言っているので、宇多田ヒカルの楽曲を学校の教室で演奏する分には、文句はどこからも言われない。本人が良いと言っているのだから、当たり前なのだが。



で、宇多田ヒカルが許可しようとしまいと、あっちこっちで彼女の曲を使いたい人はいる。
ところが、作曲家にしても演奏家にしても、それをいちいちチェックなどしてはいられない。

で、そうした部分を業務委託して、プロが監視し、作曲家などに著作権料という形でお金を還元する、そうした職業が必要となってくる。実は、これを管理してくれる団体がJASRACなのである。

で、今回の話は、河合ピアノ教室だとか、ヤマハエレクトーン教室だとか、音楽教室で使う楽曲について、お金を徴収しますよ、というのが、ニュースとなっていたわけなのだが……、そんなの当たり前の話なのである。
他人の曲を使っているのだから、それに対して対価を支払う。当然なのだ。



JASRACはお金を取り立てる団体なので、色々と評判が悪くなる。これはもう、避けられない話だ。借金取りが借金をしている人に嫌われるのと同じ理屈である。
しかし、本来、お金を借りた人がお金を返すのは当然の理屈。著作権の発生している楽曲を、勝手に使うというのはまさにそういうことで、本来ならば著作権者にお金を支払ってしかるべきなのである。

現状で、例えばカラオケに行って、アーティストの曲を歌う。そうすると、カラオケ屋が楽曲を提供したという名目で、お金を支払う必要がある(これは有名なカラオケ法理という裁判事例があるのだが、裁判で争われた事例である)。
CDや今はなくなってしまったMDやらカセットにも、結果的に音楽をダビングする目的で買われる事が多いので、実はここにお金が少し課されている。名目は「私的録音補償金」というのだけれど、これはJASRCがお金を全額懐に入れるわけではなく、作曲家などに還元されるお金である。

実のところ、JASRACを通さないでCDを販売するだとか、そういう人たちもいるにはいる。そうした人たちのCDなりDVDは割安になるケースも多いのだけれど、しかし、いざ、侵害が発生したシーンで、果たしてどれだけの正当性をそこに示せるか?というのは、なかなか難しい。
専門家であるJASRACに依頼したほうが色々とメリットが得られるのである。いや、JASRACとしては、少なくともそのつもりで仕事をしているはずなのだ。



JASRACは本来、作曲家や演奏家の味方である。
ところが、取り締まりが厳しかったり、メディアが正確に話を伝えなかったり、或いはJASRACが厳格な運用をするがために、日本で販売されるCDの価格が高くなってしまったりと、作曲家や演奏家の足を引っ張るケースも少なくない。
ただ、これは、しっかり管理されることが良いのか、或いは管理はされていないけれど、誰でもその楽曲を利用できる機会が増えることで、多くの人に聞いて貰える機会が増えるのが良いのか、その辺りのバランスが難しいところがあって、JASRACは少なくともそのあたりのバランス取りがうまく行っていない印象はある。

だが、今回の件に限って言えば、当然払ってしかるべき、という事になる。



実のところ、バイエルとかに乗っている曲が、JASRACのターゲットになるなどということはありえない。著作権の保護期間が切れているからだ。
ただ、音楽教室は、最新の楽曲を引けるようになりたい、という要望が多いがために、勝手に教室でJASRACに登録された楽曲を演奏させ、それで商売をやっているのである。
その事自体が悪いとは言わない。そして、楽譜を買えばそこに著作権料として支払う金銭が載せられている。CDを買えばそこに著作権料として支払う金銭が載せられている。と、結果的に二重取りに思えるような事態が発生しているのもまた事実ではある。

だが、著作権の構成上、曲の配布、つまり、楽譜をコピーするときにも著作権の行使に該当するし、演奏するときにはまた別の権利が発生するわけで、音楽教室でやる以上は、ある程度の対価を支払うべき、というのが今回の話の根幹であるはずなのだ。
もちろん、モーツァルトやバッハが著作権を主張するはずもない。寧ろ、宇多田ヒカルなど、現代のアーティストたちが著作権に対する対価を貰うべきなのである。



ちなみに、彼女の場合は壮大な勘違いをしている。
実は、著作権の学校での使用というのは適用除外があるのだ。
読んでいただくと分かるが、学校で学生が歌を歌ったり曲をひいたりする分には、全く著作権の話は無関係で良い。
除外規定が発生するのである。

だから、彼女が「学校でなら良いよ」と言うまでもなく、それは適用範囲外なのだ。

音楽教室の場合は、そもそもそれが商売としてやられているという実情があり、金銭が絡む話なのであるから、当然にその対価を支払え、という話になってくる。
例えば、宇多田ヒカルの曲がピアノで弾きたい、という生徒さんがいたとする。生徒さんが勝手に弾く分には、著作権云々というのは除外規定により問題にならない。
だが、それを教材にして音楽教室で教える場合には、彼女の曲が無ければ、そもそも「弾きたい」という生徒が来ないという状況になるので、何らかの対価は支払われるべきだ。



メディアの記事を見ると、こんなケースも有る。

JASRAC音楽教室から著作権料徴収に関係者困惑

[2017年2月2日22時13分]

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が音楽教室での演奏について著作権料を徴収する方針を固めたとされる報道を受け、音楽関係者から困惑や怒りの声があがっている。
いや、バカじゃないの?
 音楽評論家の萩原健太氏は「今さら文句言っても聞く耳持ってるとは思えないけど、JASRACは自らの存在意義を根本から見直したほうがいいよ。既得権益の維持ばっかり考えて、音楽の未来を閉ざしてるとしか思えない。これもひとつの老害でしょ。音楽家めざす子供たちには逆に金出せっての。育てろ」と批判した。
この人もアホなことを言っているが、育てることとお金を出すことは違う。そもそも、音楽家を目指す子供達に支払えという話ではないのだ。音楽教室がそれを利用してお金を儲けているから、還元しろと、そういう話なのである。
ロックバンド「くるり」の岸田繁は「著作権に関わらず、~権て難しい。得るものに対し対価を払う心意気があるかどうか、て自分は考えるようにしてる」とした上で、今回のJASRACの方針には「なんだかなー」と釈然としない様子をうかがわせた。
はいはい、君たちはお世話になっている立場だよね。



 ベーシストの伊藤健太は「生徒は楽器の演奏技術を体系的に学ぶためにその対価として授業料を支払っているのであって、『聴衆』として楽曲を楽しむために音楽教室に通っている訳ではない。
この人は、多少、著作権について勉強している人らしいね。「聴衆」という言葉を使っている辺り、聞きかじっている方だと思うのだけれど、根本的なところが違う。
それを利用して、商いをしているかどうかが問題なのである。
例えば、お店で音楽を流し、食事を提供する店があったとする。こういった店では、音楽を提供することで、お客に「より良いサービスを提供」しているのである。音楽がなければそれは成り立たない話だ。
だからこそ、お金を払ってね、ということになる。
JASRACは著作権保護という本来の目的を完全に見失っている…」と指摘。音楽ジャーナリストの宇野維正氏も「音楽文化を根こそぎ絶滅させる気か」と憂えた。
ジャーナリストがこれなのだから、論外だな。
もちろん、彼の言い分にも一理はある。より、音楽に触れる機会が多いほうが、そこから「あ、この曲は良いね、お金を払っても欲しい」そう思う人が出てくる可能性は高い。そういう意味ではJASRACの仕事ぶりに懸念を抱く気持ちは理解できる。
でも、本質はそこではなく、お金を払ってでも曲を流し、広めるという事をすれば良いだけなのだ。
だから、金額設定などについては再考の余地は十分あると思うのだけれど、しかし、「支払わなくてイイ」というのとは違うのだ。



まあ、いろいろな意見はあるだろうし、専門家を交えて考えるべきではある話だろう。

専門家「バランスも問われる」

JASRACが全国の音楽教室から新たに使用料を徴収する方針を決めたことについて、著作権の問題に詳しい福井健策弁護士は、「使用料が発生するかは、教室で生徒が練習することが、著作権法の『公衆に聞かせるための演奏』に当たるかどうかがポイントだ。例えば、お客さんに演奏を聞いてもらうケースなどはこれに当てはまる。一方、音楽教室で、生徒が上達するために繰り返し練習することが当てはまるかというと、法律上、微妙なケースで、カラオケやダンスホールとは違い、思い切った法解釈をしているとも感じる」としています。
そのうえで、「仮に使用料を徴収するという結論になったとしても、さまざまな教室がある中で、一律の割合で徴収できるのか、金額は適切かなど、バランスも問われてくると思う」と話していました。
NHKのニュースの最後の部分では、専門家の意見を引用しているが、「公衆に聞かせる」云々は、判例絡みの話である。
その上で、「生徒が上達するために」と、体系を分けているのだが……、しかし、楽曲を利用して金銭を得ているという事実には変わりが無い。
「一律の割合で」という意見には同意するが、その一方で「支払わなくて良い」というのはナンセンスな話なのである。


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コメント

  1. 「JASRACは本来、作曲家や演奏家の味方である」が機能していなくて音楽業界における既得権益団体(レコード会社、音楽出版社)の利益を保護するような行動が見受けられる団体になっているので本来権利を守ってあげているはずのアーティストから出るはずのない反発を受けているのは自業自得の面もあるかな。(DRM関連ではIT業界からも盛大な反発を食らって敵を作りまくってたし)

     本当は徴収した利用料は団体運営に5%でアーティストに95%支払っているとか言えれば理解も得られるしその条件での反発はただの我儘と言えるけど実態は逆に何なのと言われそうな部分も多いから出来ていないんだろうね。
    (この辺りの事情は平沢唯ならぬ平沢進がJASRACともめた時のいきさつとかがまだネットに残ってますね)

     まあ利権団体になってしまうと色々見にくい部分が出てきますが、特にそれが純粋(に見える?)音楽活動と合わさることで反発も大きいのかな、リスナーとアーティストがWIN-WINの関係になる橋渡しとして双方から認められる団体になるのが理想なのですが。

     まあ、JASRACについてはそんなところですが中央日報によるとまたスリオンでメインロータの接続部に7cmのヒビが発生し全機飛行停止したとのことです。
     設計はユーロコプターなので強度計算とか問題ないとするとお得意の冶金技術不足か、これまたお得意のそもそも安価な部材へのすり替えなんでしょうかね?

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    1. JASRACの本業が全うできていないというご指摘はまさにその通りで、ただ、レコード会社や音楽出版社もやはり著作権(正確には著作隣接権)の保護の枠内で守られるべき存在であることを加味すると、強ち的ハズレでも無いのですよね、JASRACの事業は。
      いや、アーティストを第1に考えるべき、そして、そこからの受益する団体(著作隣接権で保護される団体)は、間接的に守られるべき、という考えに立てば、ある意味本末転倒と言えるかも知れません。

      この辺りについてはJASRACの運営方針そのものを見直すべきという、大方の意見にも賛同するところです。

      ただ、今回の記事の力点は、「音楽教室」は対価を支払うべきか?という点でしょうね。
      ……著作権法で想定する範囲内の対価かどうか、というと、実は判例などを加味していくと、微妙な話になるのです。ただ、ここは裁判でシロクロ付ければ良い話でしょうし、本来はアーティストに還元すべき利益が、徴収できていないという点を考えると、JASRACの今回の決定は、「アリ」かなと。

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  2. Rodneyさんのご指摘通り、問題なのはその使用料がアーティスト本人ではなく芸能事務所に入ってしまうところですね。これは日本の芸能界の慣習上、仕方のないことなのですがね。
    著作権管理を強化してアーティストを守るという側面と同時に、芸能事務所の金稼ぎにこうした団体が利用されてるフシがあるのが反発を生んでいるのでしょうね。余りにもCDが売れないため、苦肉の策なのでしょう。

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    1. 古い体質の芸能業界が、色々弊害を生んでいる事は前から指摘されていることですね。
      芸能事務所があまりに力を持ちすぎているという現状が、JASRACの動きそのものにも影響しているのでしょうし。

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  3. 山田の案山子2017年2月6日 8:27

    著作権者の保護より JASRAC への実入りがガタ減りが原因との話も聞きます。JASRAC の YouTube に対する姿勢は如何なんでしょうね? 

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    1. 著作権は保護すべき、という原則論的な話と、「どのように保護すべきか」という方法論的な、混同されガチなのですが、JASRACは後者の方で批判を受けているにもかかわらず、変わろうとしない点はどうしようも無いですよね。

      とはいえ、著作権法そのものも、古い考えを元に作られた法律でありますので、それを建前に保護を推進するJASRACは、立場で気に気の毒な部分があるのも事実です。
      特にご指摘のYouTubeの辺りは、法律が本来予定していない部分での争いですから、論争があって然るべきです。対応はマズい感じですし。

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  4. 今回、音楽業界が反発するのは大手のヤマハ、カワイ等の教室を狙い撃ちにして、個人の教室は取らないという不公平性にあると思います。平等に出来ないならやらない、という判断力の無さが叩かれる原因でしょう。大手の教室の中でも著作権がある曲でレッスンを受けるかどうかの受益者負担になるわけではなく、みなしの一律請求という杜撰な請求方針というのもおかしな話でしょうね。

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  5. まるい552017年2月7日 6:07

    すごいぜ!JASRAC伝説を見れば判りますが作詞者が自著で自分が
    作詞した詞を掲載したら「 金払え! 」ですからね・・・。

    MIDI音源を使ったDTM(デスクトップミュージック)を潰したり
    自分の所に金が入らないモノに対しては徹底的に攻撃する利権屋と私は
    認識しています。
    JASRAC最大の問題は建前と本音(実際の行動)が矛盾している点
    ではないかと思います。

    数年前の話ですが通信カラオケで選択された曲をJASRAC側は集計
    していない、又は把握して無い様な記事を見た覚えがあります。
    その記事ではリクエストされた曲を集計すれば作曲者や作詞者にどれだ
    けのお金が入るのか目安になるのにそれをしていない。
    早い話、JASRACがピンハネしても作曲者や作詞者はそれがわから
    ない状態です。

    せめてJASRACが3つ位に分割されて競争する状態になれば少しは
    変わるかもしれませんが。

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