2017年3月30日木曜日

東芝巨大損失の事情から見る、原発リスク

壮大なタイトルを付けたが、東芝の話をよくよく調べると、色々な側面が見えてくる。

WH破綻、米国でも波紋 米紙「電力料金の負担増も」

2017/3/30 13:20
東芝の米原子力子会社ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条の適用を申請した。米原子力産業の雄だったWHの危機に対し、米国でも波紋が広がっている。
東芝が巨額の赤字を計上した背景には、ウエスチングハウス(WH)の巨額損失と連結しているから、という訳なんだが、じゃあ、何故赤字なの?と言う話。

これはアメリカの意向もあるという政治的な問題もあるようだが、僕は技術者的な視点からそうした話を見ていきたい。



米WH社は、高い技術力を持った原子炉メーカーである。

GE社やシーメンス社も原発事業をやっていたが、それに並び立つ老舗といっても過言ではない。
そうそう、シーメンスはドイツの会社なのだが、そう言えばこんなニュースがあったな。

シーメンス社長、原発事業撤退を表明 独誌報道

2011/9/19付
【ベルリン=共同】ドイツ誌シュピーゲルは18日、同国の総合電機最大手シーメンスのレッシャー社長が原発事業から撤退する意向を表明したと報じた。福島第1原発事故以降、世界の主要原発メーカーで撤退を表明したのは初めてとみられる。具体的には原発建設から手を引く。ただ、蒸気タービンの製造は当面続けるという。同誌のインタビューに答えた。
2011年と言えば、日本列島に激震が走り、悪夢が襲った年でもある。この記事にも具体的な言及があるが、福島第1原発の事故はそこまで世界の原発事情に大きな打撃を与えたのである。
 
WH社の方はというと、1998年に英国燃料株式会社へ売却され、2006年に東芝グループ傘下に入った。技術力は高いモノがあったようだが、経営は思わしくなかったようだね。
これは、アメリカでの悪夢、スリーマイル島の事件が絡んでいるようだが、3.11の方も少なからぬ影響がある模様。



で、今回のWH社の破綻によって、米ジョージア州に建設中の原子炉の完成が危ぶまれている。
 ニューヨーク・タイムズ紙は29日、「WHの破産法申請は原子力産業に打撃を与える」と報じた。東芝は2006年にWHを買収したが、WHが米ジョージア州などで手掛ける原発建設の工事は大幅に遅れ、完成のめどはたっていない。親会社である東芝には巨額の損失が発生し、破産法を使って、将来に損失が膨らむリスクを排除せざるを得なくなった。
技術力があったはずのWH社は、何故そんな巨額の赤字を抱える羽目になったのか。

米原発の泥沼に落ちた東芝、工事遅れ巨額損失-背景に米メーカーの影

2017年2月13日 12:00 JST

東芝はなぜ原子力発電事業で巨額の減損損失を計上することになったのか。原因を探っていくと米南部ルイジアナ州でかつて産業用パイプを生産していたメーカーに行き当たる。

そこには、日本企業の海外での事業展開におけるリスクが関係していたようだ。



米ジョージア州での2基の原発建設について、大きな失敗に繋がったのは、その工事を直接受注しているショー・グループが問題であるようだ。
  ショーの創業は1987年。バトンルージュ出身のジェームズ・バーナード・ジュニア氏が経営破綻した産業用パイプメーカーを5万ドルで買い取り、再生させたのが始まりだ。その後幾つかの合併・買収(M&A)を経て規模を拡大。2000年にはかつては有力エンジニアリング企業ながら経営破綻したストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を買収して原子力事業にも参入した。
  S&Wの名前はショーに箔を付け、WHの全ての原発建設を受注することになる。かつてショーで原発建設に管理者として関わっていたジェフリー・ケラーマン氏は「彼らは必ずしもプロジェクトを請け負うに足る技量を備えていたわけではなかったが、やってやろうという意欲はあった」と話す。バーナード氏は今回の取材にコメントしなかった。
~~略~~
 WHは08年に原発建設でショーと契約したが、問題は比較的早く表面化した。12年の早い段階までにNRCの検査官が原子炉下部の鋼材が不適切に据え付けられていたのを発見した。300トンもの原子炉容器が落ちかけていたり、誤った溶接のやり直しが必要だったりもした。ショーが「原子力事業における経験を欠いているのは明らかで、厳格さや細かな点への注意が十分でない」と、州政府から委託を受けた検査官のビル・ジェイコブズ氏は12年後半に当局に報告している。
実は、ジョージア州で建設中の原発は、2017年までに稼働の予定だったにも関わらず、その予定は3年先延ばしになった。
今年稼働予定だったはずなのに、現在の進捗状況は3割程度だと言う。が、その数字も怪しいと言われているから驚くしか無い。



そして、事態は更に悪化。
  ショーは12年7月にシカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン(CB&I)への身売りに同意した。しかし、そのわずか3年後、CB&Iは事業にほとんど進展が見られなかったことからショーの主要資産だったS&Wを東芝に2億2900万ドルという安値で売却。東芝はその見返りにS&Wが絡む全ての法的責任や負債を免除されることになった。だが東芝は16年4月にショーの資産価値が22億ドルも水増しされているとして再交渉を要求。これに対してCB&Iは契約不履行で東芝を訴え、訴訟は今も続いている。
……どれだけ見る目が無いんだよ、東芝は。

ちなみに、こうした話は他にもゴロゴロしている。

あの新幹線メーカーが大赤字に陥った事情

鉄道車両の海外生産に潜む「リスク」とは?

2015年11月26日
~~略~~
2012年11月に仏アルストム、独シーメンス、加ボンバルディアという「ビッグ3」を差し置いて、カリフォルニア州など3州向けのフルダブル車両130両の受注に成功した。追加発注される可能性がある300両も合わせると、総額1500億円という大型プロジェクトだ。
勝因は技術力だけではない。この案件は、米国の景気刺激策の一環として打ち出されたもの。米国製の材料や部品を使い、米国内にどれだけの雇用を生むかといった要件、いわゆる「バイアメリカン条項」への対応が、受注選定のカギとなった。42億円を投じて2012年7月に完成したイリノイ州の工場が、受注の決め手の1つとなったのは間違いない。
~~略~~
だが、この急拡大が裏目に出た。工場開設に伴い、現地で従業員を大量に採用したが、鉄道車両の製造は未経験という人材が多数を占めた。そのため、現地採用した従業員の技術の習熟度が想定したレベルに届いていなかったという。製造現場が混乱し、納期が遅れた結果、日本車輌の2014年度業績は7年ぶりの最終赤字に転落した。




この話は日本車輌の話だが、日本の鉄道メーカーだと川崎重工の方もインドで苦戦しているようだ。

まあ、川崎重工のインドの話は、まず価格面で折り合いが付かないようだけれど。



さてと、そんな訳で、これらの事例をつらつらと挙げたのだけれど、総じて海外での営業リスクというものがあるよという話になるのだろう。

特に、東芝は1兆100億円の損失が囁かれ、その上で更に損失が膨らむような話も出ているので、何ともやりきれないのだが、その実態がWHを通して現地の工事を担当している会社の技術力不足と言うから、呆れるべきか嘆くべきか。

ただ、こうした話は、営業的視点から見れば「気をつけろ」だけなのだが、技術的視点から見ると笑い事では無いのである。

実のところ、アメリカが何故こんな状況であったかと言えば、日本車輌の話もそうであるが、かつてはそれなりの技術者がいたにも関わらず、アメリカ国内の産業が細ってしまったが為に、工事ができなかったり、製造技術が未熟だったりと、そういう状況に陥って締まったと言うことなのだ。

そして、このリスクは、日本でも起こりうる。

今、日本では原発関連事業の工事はほぼストップしている。何しろ、「国内で原発を作るなんてとんでもない」という十把一絡げの放射脳達がわんさか湧き出してしまったからだ。
そうした状態が長年続くと、とてもアメリカを笑えない状況が来る。いや、少子化が進んで後継者不足で悩む日本にとってはアメリカよりも深刻な問題を引き起こしかねない。
寧ろ、施工業者の技術低下は、今、日本の製造業、建設業の現場で現実的に起きている話だ。現場に行けば分かる。トヨタの工場に行けば外国人だらけだ。ソニーの工場は殆どが海外に行ってしまって、国内に残る拠点は僅か。自動車よりも家電の惨状の方が恐ろしいが、建築業もまた他人事では無い。



そうそう、F2戦闘機のラインを閉じてしまったとき、それを指揮したと言われる石破氏が相当非難を浴びたようだ。
石破氏がそうした現場を分かった上で、ラインを閉じ、そして、次の戦闘機を作る職人を失わせるような選択肢を採ったのか、という点は、一部の専門家から疑問視されていた。

実際に、3.11でF2戦闘機18機が使えなくなったときに、新たに作るのと同じかそれ以上の費用をかけて(開発の遅れなどから、1機120億円もする高価な戦闘機と揶揄されていたが、修理費は1機130億円と報道されている。その後、部品の再利用などを行うなどして修理費は73億円まで下がっている)行われている。

冒頭のアメリカの原発は、いつ完成するかも分からない状態だと言い、何が言いたいかというと、技術が失われると言うことは、国家的損失になるということなのである。
今はMRJでも苦戦しているよね。

民進党など、原発を無くすことに全精力を傾けているが、原発関連技術者が失われれば、それは容易に達成される。
だが、同時にそれが何を意味するのか、そこまで考えるべきなのである。もちろん、原発に拘る理由は無いのだが、現実的に考えれば、次の安定的な発電方法が得られていない今、原発脱却にはまだまだ気が早い。

結局、こうした大局を見極めて国の方針を決定するのが政治家の仕事なのだが、今いる多くの政治家、特に野党の連中はそうした視点が一切無い様に思えて嘆かわしい。
そして、そうした視点を鍛えるのは他ならぬ国民の責務でもある。



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4 件のコメント :

  1. タイで目覚めた日本人2017年3月30日 19:23

    日本の原発技術が衰えて、お隣辺りとか大朝鮮辺りから企業を引っ張ってきたいんですかね?
    たしか、どっかの禿社長が南朝鮮から電力の輸入とかなんとか言ってたのを思い出します。

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    1. 特亜に原発技術をばらまいているのは日本ですからねぇ。
      あ、もちろん、欧州も積極的にやっているみたいですけど。

      問題は、その技術を利用して他国に殴りかかろうとするのが、支那の本質だって事ですかね。

      ハゲには本気で頭にきています。……ハゲだけに!

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  2. 山田の案山子2017年3月31日 5:48

    原発からの撤退は原発だけの問題では無く周辺技術や派生技術に及び素材技術にまで及ぼす。 軍事転用を危惧する能天気学者も居ますが日本が日本として在り続けて行く術でもあります。 2位じゃダメですか? と仰る議員さんには解るまいが、アメリカが世界のリーダーであり続けて居られるのは基幹技術の保持者だからだ。

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    1. 軍事技術にしても原発関連技術にしても、裾野は広いのです。
      それが分からないんだよなぁorz

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