みちびき2号と日本の技術力

日本の技術力に関しては、衰退の一途を辿っている分野もそれなりにあるが、まだまだ捨てたもんじゃ無いと思わせるニュースに触れることも出来る。時々はこういったネタも扱いたいところ。

みちびき2号打ち上げへ…日本版GPS目指す

2017年05月28日 10時33分
 日本版GPS(全地球測位システム)を目指す準天頂衛星「みちびき」の2号機が6月1日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられる。
GPSなんてアメリカの衛星使えばいいんじゃねーの?と思う人も少なくないだろう。ロケット打ち上げにはお金もかかる話だしね。



事実、6月1日に打ち上げが予定されているH-2Aロケット34号は、過去の実績からしても打ち上げ予算が100億円程度かかると思われ、ロケットに使うくらいなら社会福祉に使えとか人権派の皆さんに怒られそうな話である。
 政府は、年内に3、4号機を打ち上げ、世界最高レベルの精度を実現させる。2020年東京五輪・パラリンピック大会での交通案内など、幅広い分野で活用を見込んでいる。
政府の目論見では、オリンピック・パラリンピックでも使えるよね!と宣伝しているものの、GPSの精度からすれば、今、車載されているヤツでも十分に機能する。

じゃあ、何故、今回のみちびき2号が必要なのか?と言う話。
20170528-OYT1I50010-L
読売新聞のこの解説図では、イマイチ意味不明である。
何故、日本の真上を飛行するのか?ということがさっぱり分からないからだ。そこは、こちらの図の方が未だ分かる。
lif1705300059-p1
産経新聞が引用している図だが、「準天頂軌道」というのがキーワードとなる。
赤道上空の静止軌道を傾けたような軌道を周回。地上から見ると8の字を描き、日本の真上付近(準天頂)を長く飛行する特徴がある。このため測定用の電波が高層ビルや山に遮られず、GPSより安定で高精度の位置情報が得られる。
早い話が、アメリカが運用しているGPS衛星とは異なる軌道を飛ぶのだね。



もともと、GPSはアメリカが軍事用に開発した技術であり、約30基のGPS衛星から電波を受信することで、自身の位置を知る技術である。
三次元測位という技術で4つのGPS衛星からの電波を受信することで、正確な受信時刻と受信機座標を求めるものなのだが、まあ、詳細はさておく。
01
まあ、こんな感じの軌道を飛んでいるGPS衛星から受信したデータを使っているという話だね。

全地球をカバーするためにこの様な軌道を通っている訳なんだけど、日本にとっては都合の悪い軌道を通っているケースも少なくないわけで。
そこで、みちびきによってそのデータの補正をかけてやろうという発想だ。
isos7j00000003du
日本の上空に静止衛星を打ち上げることは技術的にほぼ不可能なので、日本上空に長く留まるよう考案された8の字軌道を通るように衛星を打ち上げる。



そして、すでにみちびき1号のデータはスマホや時計などのデータの補正に使われており、6月1日に打ち上げる2号、そして年内に予定されている3基目。これらを使って来年からはGPSの精度をより高める事が可能となる。

実のところ、アメリカで使われているGPSの技術は軍事上の理由によって意図的に精度が落とされていた時代があって、その精度は誤差100m程度だった。コレでは流石にカーナビにすら使えない精度である。
コレが解除されたのが2000年5月。それでも、誤差10m程度の精度である。これを補正する技術も色々あって、デファレンシャルGPS等という技術や、携帯電話の基地局の情報などを用いて精度を向上し、GPS信号の途絶などにも対応している訳で。
現在のカーナビやスマホのGPSが優秀なのは、こうした技術の賜なのである。
みちびきは電波を使って地上の位置を計測する衛星。内閣府が今回の2号機を含め年内に3基を打ち上げ、来年4月に米国のGPSとの併用で24時間運用を始める。誤差約10メートルのGPSをはるかにしのぐ同6センチの高い位置精度が強みだ。
それを、みちびきの打ち上げによって数センチというレベルまで精度向上を目指しているというのが、今回のニュースに繋がる話。
センチ単位の精度を何に使うのか?!と、いきり立つ人も少なくなかろうが、誤差は少なければ少ない方が良い。
そして、当然軍事用にも利用可能だ。

日本版GPSを防衛利用へ 北朝鮮の妨害電波を防御 政府、1日に衛星打ち上げ

2017.5.29 11:24
 政府は日本版の衛星利用測位システム(GPS)の本格構築に向けた第一歩となる準天頂衛星「みちびき」2号機を6月1日、種子島宇宙センター(鹿児島県)で打ち上げる。緊迫した北朝鮮情勢が続く中、自衛隊の利用への妨害電波を防ぐ高度なセキュリティー機能を搭載。本格運用時には米国のGPSに頼らなくても任務を遂行でき、民間利用だけでなく安全保障上も重要な役割を担う。
この「アメリカのGPSに頼らなくても」と言うところがポイントなのである。



何らかの理由でアメリカのGPS信号が使えなくなったケースで、日本独自の衛星によって同じ機能が発揮できれば、国防上意義がある。
みちびきは幅広い民間利用が期待されているが、今回の2号機以降は高度に暗号化した特殊な測位信号も発信する。敵国の妨害電波や偽の信号による攪乱(かくらん)を防ぐことができ、内閣府は「技術的には安全保障上の利用にも耐えうるレベルだ」と指摘する。
もともとGPSの運用が軍事目的で始まったことを考えれば、当然の帰結である。

まあしかし、これは結果論であって、そもそもみちびきの通る準天頂軌道に関しては研究が否定されていた。
この軌道は準天頂軌道と呼ばれ、旧郵政省電波研究所(現情報通信研究機構)の研究者が昭和47年に考案。しかし衛星の燃料消費が多く実用的でないとされ、お蔵入りになった。
http://www.sankei.com/life/news/170530/lif1705300059-n1.html
日本の防衛費や宇宙開発費が、世界的なレベルで見てもショボいことは周知の事実だが、資金面の問題はこうした開発に大きく影響する。
 平成に入り燃料の節約方法が見つかったが、日本の真上を飛ぶ利点を検証できないことが実用化の壁に。
燃料消費を少なくする方法が見つかってなお、検証実験すらやらせて貰えないという……。



まあ、これを画期的な方法で解決するのが、日本のアホな(褒め言葉)技術者達なのだが。
転機は平成10年に意外な形で訪れた。打ち上げに失敗した通信衛星が予定外の軌道を飛行し始め、ごみ同然と思われた中、同機構の研究者が検証実験に使うことを思い付いた。
 衛星が日本の真上を通過するとき、アンテナをつけた車で東京・丸の内の高層ビル街を走行し、電波を安定して受信できることを実証。これを機に政府が実用化へ動き出した。

怪我の功名というヤツである。

何というか、研究者の意地というか執念を感じる話。
この手の話ははやぶさの時にも感じたが、低予算で「知恵だけで乗り切れ」という至上命題を与えられたときの方が、日本人は真価を発揮するような気がして仕方が無い。
いや、だから予算を絞ってイイって話じゃないからね!!

追記 (2017/6/1)

みちびき2号は無事うち上げられたようである。

日本版GPS衛星「みちびき」 打ち上げに成功

6月1日 9時48分

スマートフォンやカーナビなどで利用されている、位置情報システムの性能を飛躍的に高める、日本版GPS衛星の「みちびき」が、1日午前9時17分、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットの34号機で打ち上げられ、打ち上げは成功しました。「みちびき」は、年内にさらに2機が打ち上げられ、来年春にも実用化する予定です。

もはや、H2Aロケット打ち上げは成功するのが当たり前的な雰囲気になっているな。その陰には日本の技術者の努力があるのだろうけれど、慢心せずにこの記録を更新し続けて欲しいものである。

そして、みちびき2号が打ち上げられて、予定通りの軌道を周回し始めることで日本のGPS技術も新たな段階へ。ああ、本格的には4基揃わないとダメなんだけどね。





ランキングへの応援クリックよろしく!
にほんブログ村 ニュースブログ 時事ニュースへ

コメント

  1. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年5月31日 7:17

    >みちびきの打ち上げによって数センチというレベルまで精度向上を目指
    >しているというのが、今回のニュースに繋がる話

    精度向上は、GPSの「三点測量」に、もう一点追加した「四点測量」にすることで実現されているようですね。

    >低予算で「知恵だけで乗り切れ」という至上命題を与えられたときの方
    >が、日本人は真価を発揮するような気がして仕方が無い。

    確かに、日本人は「知恵出せ」に強いと思いますが、他の要因もあると思います。
    日本の技術力が衰退しているのは、非技術者によりブレーキが掛けられている問題もあると考えます。

    サントリーの創業者である鳥井信治郎の言葉「やってみなはれ やらなわからしまへんで」の示す精神が問われているのではないでしょうか?

    参考)サントリー「「やってみなはれ」の歴史」

    返信削除
    返信
    1. GPSの解説ありがとうございます。
      何というか言葉で説明するのはなかなか難しい気がしまして。その辺りの説明は端折ってしまいました。

      そして、日本の技術力の衰退ですか。
      国内の生産拠点が減っている現状なども考えると、色々な要因が積み重なって、という感じなのかもしれません。でも、チャレンジ精神が無くなっていることは問題なのでしょうね。

      削除
  2. そうですね、技術や科学は積み重ねが大事ですからね。
    宇宙開発の予算はもう少々増やしてもいいと思いますね。
    沖縄の補助金でも流用して欲しいものです。
    それはそうとH3用のLE-9エンジンの燃焼試験が始まりましたね。
    是非、順調に行ってほしいです。

    返信削除
    返信
    1. ほうほう、LE-9エンジンの燃焼試験ですか。
      確かにサイトを覗いたらやっていました。現在は第4回なのですね。

      韓国のロケットのエンジンの点火時間を1.6秒と聞いたときはビックリしましたが、最初はそんなモノなのですねぇ。頻度は一月に3回程度か。

      勉強になりました。

      削除
  3. 支那や北朝鮮にこの技術が流れて欲しくないのだが・・・。
    流れていそうな気が・・・。

    返信削除
  4. みちびきには防衛モードが有るのだろうか、アメリカのGPSは軍用周波数は知られているし。

    返信削除
    返信
    1. 紹介した記事にもありましたが、それなりの対策はあるみたいですね。
      どんな理屈なのかよく分かりませんが。

      暗号化による効果は、解読にしか対応できないような気がしますし。

      削除
  5. 支那や北朝鮮に技術が流れていかないか心配だ・・・・。

    返信削除
    返信
    1. そこは本当に心配ですよね。

      スパイ防止法はヤハリ必要なのだと思いますよ。

      削除
    2. http://agora-web.jp/archives/2024601.html

      こんな話があるくらいだから、ひょっとすると、もうとっくに流れてしまっていたりして・・・・。

      削除
    3. 安倍氏が首相官邸に住まない理由もその辺りにあるのかも知れません。
      民主党政権時代に色々と埋め込まれたという噂もありますが、第1次安倍政権の際には公邸に住んでいたのに、第2次安倍政権では私邸から通勤です。

      色々と不都合なことがあるのでしょうね。

      削除

コメントを投稿

お気軽にコメントを!ハンドルネームは面倒でもお願いします。