スリーマイル島の原発はガス火力発電に敗北

スリーマイル島と言えば、原発事故の代表格のような扱いをされていたけれども、あれはまた特殊な事故だったんだよね。

<スリーマイル島原発>2019年に閉鎖へ…採算悪化で

毎日新聞 5/31(水) 9:54配信
 【ワシントン清水憲司】米電力大手エクセロンは30日、東部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所について、政府支援が受けられなければ2019年に閉鎖すると発表した。
原発事故で有名なのは、「スリーマイル島」「チェルノブイリ」「福島」であろう。まさに御三家状態になっている。



なお、国際原子力事象評価尺度でレベル7にカテゴライズされているのは「チェルノブイリ」と「福島」の2つ。「福島」の方は不当な評価ではあるものの、その著名度からすれば、世界各国に大きな衝撃を与えたことは言うまでも無い。
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この尺度に従うと、スリーマイル島はレベル5となる。レベル6の「ウラル核惨事」の方が、事故としては深刻だという評価であるが、こちらはあまり有名じゃ無いね。
スリーマイル島の事件が有名になったのは、事故がアメリカで起こって、ニュースが広く拡散されたことと、少々特殊な事情があったためだ。

スリーマイル島の事故発生当時、アメリカは少なからず原発の安全性に細心の注意を払っていた。
スリーマイル島
だが、メンテナンス作業時の事故により、多重に施されたハズの安全装置が上手く機能せず、更に運転員が誤解によって非常用炉心冷却装置を手動で停止してしまうというミスが発生。
その結果、炉心溶融状態を誘発してしまったのである。
運転員は当時、137個もの警告灯が点灯し、30秒間に85回も警報音が鳴り響く状態に錯乱寸前であったと言われる。正常な判断が出来なかったのである。



とはいえ、この事故で失われたのは2号機であり、1号機は稼働できる状態であった。
日本の福島第1原発で言えば、1~4号機が失われてなお5号機6号機は無傷であったと言われる。廃炉が決定してしまったが。

スリーマイル島では2つの原子炉のうち1つが失われたものの、原子炉建屋外部への影響は未だ確認されていない。そうした事情もあって1号機は稼働が続けられていたようだが、しかし、2019年に閉鎖される運びとなった。
1979年に2号機が炉心溶融事故を起こし運転を停止した後も、1号機は稼働していたが、「シェール革命」でガス火力発電が安価になり、採算が悪化していた。
理由は採算の悪化である。

日本と異なり、国内でシェールガスが豊富に確保できるアメリカにとって、ガス火力発電は非常に安価な発電手法となっている。シェールガス自体が価格競争によってどんどん安くなっている上に、もともとガス火力発電の効率は良いため、色々な制約の多い原子炉にとっては、価格競争の面でも厳しい。
 同社によると、1号機は1974年に運転を開始。米原子力規制委員会(NRC)から2034年までの運転認可を得ているが、採算割れが続いており、19年9月末をめどに閉鎖する。同社は運転継続を可能にするため、地元州政府に補助金など再生可能エネルギー並みの支援を要請したが、これまでのところ不調に終わっている。
お陰で採算割れ状況にあるというのである。



さて、ここで問題なのは、以前にも紹介したが、技術の継承という点だ。
この記事は東芝の巨大損失の原因について少々論じているが、ウェスチング・ハウスの巨額損失が、本体の東芝に襲いかかったという話を紹介している。
 米国では近年、ガス火力との価格競争激化で、早期閉鎖を決める原発が相次いでいる。東芝傘下の米原子炉メーカー、ウェスチングハウス(WH)が米南部で受注した原発4基の建設も、発注元の電力会社が工事継続の是非を検討中だ。スリーマイル島原発事故後、米国では原発の新規建設が事実上ストップし、工事経験が不足したこともWHが経営破綻する原因になった。
冒頭の記事でもその理由について報じているが、スリーマイル島発電所事故(1979年3月)によって、アメリカの原発の新規建設は失われてしまった。それからただの1基も原発は作られておらず、ウェスチングハウスが新規原発を作ろうとしたときに、そのツケを払わされてしまった。

ただでさえアメリカのブルーカラーは移民におされて低品質かが進んでいる。新たな原発建設を受注したウエスチングハウスは、原発を作るのに必要な技術を持った職人をかき集めることは叶わなかったのである。



まあ、アメリカはそんな難しい原発を作らずとも、ガス火力発電所を作れば良いのである。
自前でシェールガスが掘れれば、焦る必要も無い。

しかし、日本はどうだろうか?
原発のリスクは認めるが、リスクとリターンのバランスは常にとるべきで、「リスクゼロ」などという「安全神話」に基づいて、今ある技術を放棄してしまって良いモノかどうかは、悩ましい。

別に、原発に変わる代替手段があればこんな事は言わないが、火力発電9割で海外資源に依存しまくりの現状が、果たして良いモノか?と言う点については悩ましい。

ここで、メタンハイドレートから安定的に天然ガスを採掘出来るという状況になるのであれば、「原発?ナニソレ美味しいの?」という話にもなるのだろうが、残念ながらそれもまだ先の話。
水力発電も、地熱発電も、風力発電も、太陽光発電も、何れもぱっとしない状況で、原発を捨てて良いのか?というのは大いに疑問である。
そして、「捨てる」とは「新規建設ゼロ」の状態を続ければ、容易に実現される話なのである。



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コメント

  1.  原発メーカーの東芝の持つ最高の技術は、「粉飾決算の技術」です。
     継承する価値があるとは思えません。
     次に来るであろう三菱のMRJの巨大損失もそうですが、日本の職人技信仰というか、職人技詐欺とはいい加減決別したほうがいいと思います。
     四季の美しさを自慢する日本人と同じで、いずれ外国人から嘲笑される対象となるだけです。

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    1. いえいえ、技術の継承という話は東芝限定というわけではありませんよ。日本の技術の神髄は下請けの品質の高さにあります。アメリカの話もそうですが、ウエスチングハウスの設計が如何に優れていようと、作る技術が存在しなければ如何ともしがたい。
      kujiraさんは東芝が相当お嫌いの様子ですが、流石に僕も東芝の粉飾決算を擁護する気はありません。

      それと……、四季の美しさを自慢する日本人は間違っていると思ってはいません。
      外国にも四季はありますが、四季の移り変わりを楽しむ文化を日本は持っています。別に外国人に呆れられようと、四季の彩りを楽しむ心を失うのは、僕は間違いだと思いますよ。嘲笑されようが良いではありませんか、そんなのはこちらのかってなのですし。

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  2. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年6月3日 0:00

    個人的な意見ですが...

    2つ前の記事「みちびき2号と日本の技術力」のコメントに以下の内容を書き込みました。
    >日本の技術力が衰退しているのは、非技術者によりブレーキが掛けられ
    >ている問題もあると考えます。

    東芝の社長を調べて見ると、西室泰三以降おかしくなっている感じですね。
    なんか、技術者でもない事務屋でもない、経営者というより「政治屋」という感じです。
    そういう連中が、技術者を邪魔している気がしてなりません。

    もちろん、事務屋を否定するわけじゃないです。
    調達・製造・流通・営業・業務支援・研究開発の各部門がバランスよく動かないとダメだと考えます。

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    1. 技術を理解しない政治屋にトップになられると、物作りで売る会社の技術屋は不幸ですよね。
      もちろん、政治力が無ければ大企業のトップは務まらないのでしょうけれど。

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