2017年5月24日水曜日

Yes!高須クリニックと商標法

興味深い記事を見つけたので、ちょっとツッコミを入れておこう。

高須院長「yes!高須クリニック」を商標登録

2017年5月22日18時13分  スポーツ報知
 名誉毀損行為で民進党の大西健介衆議院議員(46)らを提訴した高須克弥院長(72)が22日、ツイッターで「yes!高須クリニック」を商標登録したと明らかにした。
「金持ちの道楽」という風に感じたので高みの見物をする積りだったけれど、この人、本気だね。

件の話、国会の場で民進党議員が「Yes!○○クリニック」といったような陳腐なCMが問題だというような発言をしていた点を引っ掛けたものだ。

まあ、正直話の経緯はどうでも良いし、提訴したのが「名誉毀損」絡みということなので、話題にすることは無いと思っていた。
大西氏の質問は的外れのものだったので、これについても言及する必要性を感じなかったしね。
大西議員は「CMも陳腐なものが多い」「例えば、『イエス! ○○』とクリニック名を連呼するだけのCMとか」などと語っていた。高須氏のクリニックのCMは、最後に高須氏本人が「イエス! 高須クリニック」と言うのがお決まりだ。
http://news.livedoor.com/article/detail/13084801/
問題とされたのはここ。

大西氏の質問は医療制度と宣伝時の規制に関する話ではあったが、この話は筋が悪い。トクホでもそうだが、医療に関する効果を謳って宣伝することは、誤解を生む原因となり易いため規制されている。
そのこと事態はケチを付けたところで仕方のない話なのだ。

ただまあ、美容整形関係の悪徳商法があるのは事実のようで、全体を通して考えると「過剰な広告が問題」と言う点は理解出来るし、意味のない質問だったかと言えばそうではないのだが……、敢えてCMを批判する理由は感じられなかった。


さて、今回「面白い」と思ったのは、高須氏が商標登録した、と発言した点である。
高須氏はしっかり理解していないようなので、弁護士先生の入れ知恵であることはまず間違いがない。
5月19日に出願して、早速登録されるはずがないので「商標登録」した訳では無く、正しくは今のところ出願段階だということになる。また、登録されたところで「イエス○○クリニック」が使えなくなる訳では無い。類似の商標的使用態様が排除されるだけだ。
ただ、商標法の運用を考えれば、3ヶ月位で登録になる可能性は高い。つまり、訴訟には間に合うのだろう。
同議員は高須氏の提訴の動きを受け「特定のクリニックの名誉を傷つけているものではない。具体的なクリニック名は出していない」と反論。高須院長の商標登録は“yes○○クリニック”が高須クリニックだけに当てはまるものでないとする工作を防止するものと見られる。
スポーツ報知はこんな分析をしているが、僕の考えは違う。

これは知的財産権をしっかり理解した高度な戦術の1つだと思われるからである。……あ、高度の、と言うのは言い過ぎか。

まあ、どんな話か、ということは少し解説したい。今回の記事の突っ込みはその部分に大きく関わるからだ。

商標法という法律は、他の知的財産権とは少々異なる特殊な立ち位置にある法律である。
特許法や意匠法といった知的財産権は、「利用を促進」することに意義を見出しているが、意匠法は「業務上の信用の維持」を図ることに意義を見出している。

で、商標は文字、図形、記号などからなり、商標法はその商標に化体した業務上の信用を保護するものだというのが通説である。
商標法で保護された「商標」はその「使用」を独占的に認められ、類似の範囲の商標の使用は排除される。そして、登録を続ける限り永続的に独占権が付与されるという極めて強い権利だ。

よって、「商標登録の要件」は3条と4条に厳格に定められていて、特にこの件で関係があると思われるのは、3条1項。そして3条2項だ。

個人的に「今回の件に大きく関わるだろう」と考えているのは3条2項の適用だろうね。あとは、4条1項19号あたりが関係するのだろうと思われる。

高須氏のブログにはこんなコメントが書かれている。
「イエス○○クリニック」と言ったら「イエス高須クリニック」のことだと誰でも認識すると思っているひとばかりだと僕は思い込んでいたのだが・・・
これは僕のひとりよがりで
裁判官が僕と同じ認識を持っているという保証はない
ヤバい❗
大西氏が苦しいコメントを出しているが、高須氏のこのブログでの記載は、それに関連するのだと考えられる。
実際に大西議員の質問の動画をには、高須院長が言うように大西議員は「〇〇クリニック」と言っていおり、その前に陳腐な広告と発言をしているので高須院長が怒るのも無理はないだろう。
思わぬ形で被告となった民進党の大西議員は、産経新聞の取材に対して、《(提訴)内容を聞いていないので詳しく言えない。質問では高須の名前を出しておらず、(提訴は)誤解に基づいている。法律上、名前と連絡先しか連呼できないCMがあるのは現実だ》と答え、ツイッターやブログは更新していない。
https://news.nifty.com/article/domestic/society/12156-22572/

特定のクリニックを批判するつもりではないと、そのように釈明した大西氏だが、誰がどう聞いても高須クリニックの宣伝だ、と、そういう認識に至るのは当たり前である。

が、その認識に普遍性が無いことを懸念したのが高須氏のブレインということなのだろう。
そして考えだした戦略が商標登録というわけだ。



出願し、審査されれば、当然ながら商標登録できるかどうかの判断がなされる。裁判絡みだということを言えば、判断は早くなるだろう。
その時に、「Yes!高須クリニック」の登録が認められるとしたら、どういうことになるのか。
一般的に、文字の羅列や標語、掛け声、キャッチフレーズのようなものは商標登録の要件を満たさないとして、3条1項6号辺りの登録可能要件を満たさないとして弾かれる。
だが、その例外規定として設定されるのが3条2項で、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については登録できるとしている。
キャッチフレーズ関連については、多くが拒絶査定を受けるが、不服審判請求によって「使用実績」を元にその判断を覆されるケースがそれなりにある。
高須クリニックの宣伝に関しては、何年も何年もバンバンCMを打っているので、まさか知らない人はいないだろう。つまり、特許庁としては3条2項の適用は回避不可能だ。ブレインが言い出したことだろうから、出願段階で証拠をいくつも積み上げて使用実績を示したことだろう。どうあがいても避けられないのである。

とすると、省庁によって「Yes!高須クリニック」は保護されることになり、それに類似する商標も存在しない、著名性があるという話につながっていく。
当然ながら、裁判所もこの見解を無視できない。

つまり、特許庁が大西氏の名誉毀損に関して材料を補強してしまうという結果になる。



残念な点が1点あるとすれば、「Yes!○○クリニック」が高須クリニックのことを指すのだ、という補強にはなっても、○○に高須が当てはまることを明示するものではない点だろう。この点で、大西氏の弁解の余地はある。

ただ、「Yes!高須クリニック」が著名性(3条2項適用)があるとして登録すれば、審査段階で大多数の人がそれを認識できる程度の著名性があると認められたも同然である。つまり、大多数の人は「Yes!高須クリニック」を知っているという認定がなされ、結果的に「Yes!○○クリニック」のCMを批判したことは、暗に高須クリニックのCMを批判したというロジックは成り立ち、多くの人がそう想起したであろうという主張が成立してしまう。名誉の毀損に繋がる可能性は高いのだ。
つまり、商標登録されることで裁判で争うには実に有用なツールになるだろう。

ちなみに、高須氏は色々商標登録や特許取得するのがお好きなようで、「♪たかーすクリニック」というサウンドフォントまで登録している(登録番号第5836221号)のだから恐れ入る。
2014年の法改正で音商標の登録が可能になってからすぐに出した(2015年5月18日出願)と思われる。更に、ご丁寧に自分の名前まで商標登録している(通常、存命中の人名は登録されないが、本人であれば登録可能)のだから、なんというか呆れるのも通り越して感心する。
当然、自分の名前が宣伝に使われないための戦略だと思われるが、そこまでやるかと。

逆に言えば、そこまで徹底して「高須クリニック」のブランドを穢す相手を排除したいのであり、今回はその逆鱗に触れてしまった。

高須氏は金も知名度もあり、政界にも芸能界にも大きな影響力がある。それが本気で怒っているとすれば……、まあ、民進党も大変な人を敵に回したものである。


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9 件のコメント :

  1. こんな下衆なネタに管理人さんがハンノウシテ繰れるとは想いませんでしたが(笑)
    だから言ったでしょ?
    金髪親父は寝業師で、泥レスになったら強いって!
    ケンカ売る相手を間違えているんですよ!
    まぁ、その辺りが民進の限界ですけどね(笑)
    さて、議員は嫌がりながらも、場外乱闘に持ち込まれるでしょう!
    その時は世間知らずの議員先生は、思わぬ伏兵に晒されるでしょう。私は政治プロレスとして楽しませて頂く所存であります(笑)

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    1. いやいや、下衆なネタも大好物ですよ!ただ、料理の仕方を知らないだけで(苦笑

      金髪オヤジは本気でやるつもりで、これ以外にも手段を考えているような事がチラホラと。
      蓮舫氏を巻き込む辺り、本格的に嫌がらせをやる積もりでいますね。

      多分、蓮舫氏を巻き込んだのは民進党として擁護されない立ち位置に蹴落とされるような配慮なのでしょうが、要らぬ緋弾をした蓮舫氏はそれどころじゃ無さそうです。
      国籍関連も開示されるリスクを負ってしまったようですから。

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  2. 記事違いで申し訳ないのですが…
    シールズを称するバカな若造が、選挙で認められたなら「何をきても良いのか?」などとテロ関連法案に対してホザいてます!
    管理人さんの過去記事を読めば解る事だが、別に「強行裁決」してない!
    野党が与党と意見を一致してならないという決まりもない。維新が従った事に「与党」てのも民主主義のこんかんに反するデマです!
    要するに自分の意見に反する意見は認められないと言う主張で、民主主義に反するのは民進や、在野で
    のプロ市民ではないか!
    だいたいシールズてのはプロテスタント系の平和バカの学校出身の連中が中核で、その頭の偏屈さは、私らカトリックは元より、プロテスタント系からも批判されている連中なのですね。
    そー言う連中が、あたかも「日本国民の善意」を標榜するのにはヘドが出ますね!

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    1. 志位るずについては、このブログでも取り上げましたがまともな発言をしたのをみたことが無いので、基本的にはまともに取り合うつもりはありませんが……。

      あれがマスコミに取り上げられた経緯を考えると少し哀れにすらなります。もはや就職先すら危ういわけですから。

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  3. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年5月24日 4:51

    この件に関連した情報を一つ...自分も去年まで知らなかったのですが。

    高須院長(高須克弥氏)は、美容整形の「高須クリニック」で有名ですが、実家(愛知県西尾市(一色町))も病院(高須病院)です。
    現在は、医療法人社団福祉会となっており、その法人の理事長は、高須克弥氏です。
    医療法人社団福祉会高須病院は、総合病院のようです(美容外科以外の一般的な診療科が揃ってます)
    ソース)医療法人社団福祉会のWebサイト

    単なる「美容整形関係の金持ち悪徳医師」的な取り上げ方は、身を滅ぼす原因になりそうですね...

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    1. 高須家は医者を多く輩出する家庭のようで、高須克也氏はその中でも変わり種だったようですね。
      過去に20億円の重加算税を納付した経験をお持ちのようだけれど、これも裁判所でクリニックの会計責任者が勝手に脱税を行ったのだと認められており、お家騒動的なこの事件でのウラきりモノにはキッチリ片を付けたとか。10年かかったそうだけれど。

      100億円の負債を抱えても10年で完済するほどの人物で、韓国で美容整形の技術を広めた実績もあるのだとか。
      色々変わった人物ではあるのだけれど、敵に回すには危険な相手であることだけは間違いなさそうですな。

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  4. 凄いことになってますね。

    そう言えば高須さんは以前某テレビ局の反日が気に入らないと言ってスポンサー降りるぞ!と闘ってましたよね。

    民進党も喧嘩売るなら考えて売らないと大変なことになりますよ。
    高須さん見てると気に入らないならいくら掛かっても良いから徹底的にやるって人見たいですからね。

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    1. 面白い法廷闘争ショーがみられるのでは?と、ちょっと期待していますが、民進党が何処まで突っ張るのかが、気になるところ。

      高須氏のウラに別の政治勢力が付けば、このまま突っ切ることも考えられますが、利益を追求し時間を大切にする高須氏の事ですから、何処かで妥協点を見出す可能性はありますよね。

      何処を一体エンドポイントとしているのかが、気になります。

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    2. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年5月24日 20:34

      >高須さんは以前某テレビ局の反日が気に入らないと言って
      >スポンサー降りるぞ!と闘ってましたよね。
      実際に「報ステ」のスポンサーを降りてます。
      その流れで、
      「松本人志が報ステのキャスターになったらスポンサーになる」
      という(フジ系のワイドナショーの)ネタの流れですね。

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