K2戦車のパワーパック国産化は失敗か?

残念ながら新しい情報が入ったわけでは無いのだが、K2戦車のニュースである。あの国、まだ失敗を認められないらしいな。

「戦車の心臓」パワーパックが無い……K2黒豹100両倉庫で昼寝

入力2017.05.30 01:48
かつて世界最高性能の名品武器とされたK-2黒豹戦車の追加生産を置いて、政府が苦悶に陥った。黒豹戦車は試作品3台を公開した2007年だけでもどんな戦車より優れていた。しかし、電車の心臓であるパワーパック(エンジン+トランスミッション)の開発の遅れで生産が遅れて、最終的に輸出の機会も逃した。

いつになったら出来るんですかねー?


記事を読んだら新しい情報はなにも無くって、ガッカリだった。
「十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人」みたいなことを言い出したと思ったら……。

  • 10年前に試作品、公開時は最高性能
  • 国産パワーパック開発の支障で生産遅延
  • 輸出のチャンス逃し、現在は退出の危機
  • 予算数兆ウォン・・・使い道の問題も
……あれ?全然違った(苦笑

まあいいや、折角の機会なのでK2戦車について少し振り返ってみよう。

世界の戦車の更新スピードはそれほど速くない。
イギリスのチャレンジャー2が1994年、フランスのルクレールが1992年、ドイツのレオパルト2が1979年、アメリカのエイブラハムスM1A2が1992年。何れも近代改修が施されているにせよ、現役である。
寧ろ、2010年配備の日本の10式戦車がちょっと珍しいが、これは設計思想を大きく変えざるを得なかった部分がある為、90式戦車も十分現役だ。

当然ながら、この頃に韓国でも新しい戦車をと言う機運が高まったことは、言うまでも無い。他国の装備が羨ましくなって導入するのが韓国の常であるからだ。

まあ、現実的な問題として、戦争中の北朝鮮の天馬号(ソ連T-62ベース)がK1戦車で対抗するのが困難なスペックだったという話もあるが、天馬号も、それに続く暴風号も数は僅かで、現実的にはT-62が北朝鮮の主力部隊になっている。果たしてK2を導入する意味があったかどうかは少々疑問である。

元々運用していたK1A1は、山岳地での機動性を重視した為に、装甲や火力を妥協したシロモノである。そこには明確な設計思想があったのだが、何故かK1A2では火力増強に走り、K2では更なる火力を求めちゃった。

そんな事情によって作られることになったK2戦車だったが、計画が持ち上がったのは1995年のこと。

それから20年もかけて、紆余曲折を経ながら導入されるに至ったわけだが、果たして、今導入されるのが妥当なのかどうかについては、なかなか悩ましい。

流石に、当時のコンセプトのままでは無いのだろうが、設計思想が二転三転するうちに、アレもコレも盛り込んだ豪華スペックになってしまったのである。

K2

当初は125mm砲を載せようという話があったり、ラインメタル社の140mm砲を載せるという話すらあったようだが、流石にムリだったらしく、120mm滑空砲L55が採用された。
また、ハードキルタイプのアクティブ防御システムを搭載する話もあったが、諸事情により見送られた。セラミックス系の複合装甲も、その能力は疑問視されていて、1発目はともかく2発目が耐えられるのか?という指摘もある。
機動能力や懸架装置にも不安があり、発進、加速の能力は性能テストの段階で合格ラインが引き下げられるという有り様であった。K1A1で求めた機動性は何故犠牲になったのか……。

そして、コンポーネントの国内生産率は試作車で77%、量産型では90%を目指していたのだが……、当然パワーパックは国内生産で無いと、この数字は実現出来ないわけで。

何としても国産パワーパックを乗せたかったらしい。
そして、血の滲むような努力の末、作られる予定の200両のうち100両に国産パワーパックが載ることに。
ところが、不具合発覚。


とまあ、こんな楽しい状況が続いていたのだけれど、今回の記事はその辺りを嘆く話になっている。
◆ゴムの生産台数
黒豹戦車の生産目標は600台→300台→200台→300台と増減を繰り返した。1台80億ウォンを上回る価格、陸軍の過度の確保目標量、これを裏付ける予算、実際の戦場での戦術的必要性など、さまざまな理由が複合的に作用した。
黒豹は、最初に開発計画が提起された2011年には約600台を生産する計画であった。北朝鮮軍の新型戦車である先軍号を相手にしなけれならないという論理だ。
しかし、限られた陸軍の予算のために300台減少したが、国防改革の過程で2014年200台の最終確定した。そうするうちに、陸軍は、2015年10月100台を追加要求し、国防部かかり検証委員会は昨年、陸軍の追加生産の要求を承認した。しかし、今回は企画財政部が事業の妥当性の評価を引き延ばしている。
びよん、びよん!
とはいえ、この手の苦悩は何処の国でもありがちな話。

朝鮮戦争が勃発した時に、韓国は北朝鮮の戦車に蹂躙されて釜山辺りまで戦線を下げねばならない状況に追い込まれた。その事を考えれば、北朝鮮が保有する戦車を凌駕する対戦車兵器を保有するのは必須であり、その為の新設計のK2戦車だったはず。

ただし、北朝鮮が保有する骨董品の評価がハッキリ出来ないことも手伝って、その保有台数に議論の余地ありという流れになる点は仕方があるまい。
そういえば、対戦車兵器としてアパッチたんも36機も買っちゃったしね。ロングボウレーダーはオミットしちゃったけど(苦笑
あ、減るファイヤも(ヘルファイヤは288発しか買わなかった)。

で、パワーパックの下りだが……。
黒豹の屈辱はここで終わらない。防衛事業庁は1次生産分については、仕方なくドイツ製パワーパックを使用したが、2015年末から生産2次分100台に対して国産を使用する予定であった。しかし、2次分国産パワーパック事業を譲り受けたS&T重工業も、本格的な生産に入らずにいる。ロテムの関係者は、「パワーパックを載せるだけの黒豹戦車が倉庫で遊んでいる」とため息だ。
アレちょっと待って。
こちらの記事では2016年から2017年にかけて国産パワーパック版100両を実戦配備する予定だったじゃないか。
今は2017年なので、半分くらい出来上がっていてもおかしくは無いのに、S&T重工業は「本格的な生産に入らずにいる」ってどういうことよ。

どうやら今回のこの記事、目新しい情報は無い総括的な話だった模様。
今年4月の時点での「パワーパックの部品についてドイツに文句を言ってやる!!」という話から一歩も前進していない。



そう言えば、先日K2戦車の渡河シーンを報じてホルホルしていたが、あれ、ドイツ製のパワーパック乗っけた奴だったんだな。

【写真】黒豹戦車、最高4.1メートルまで潜水渡河=韓国

2016年04月20日11時41分
  韓国軍の最新鋭K-2黒豹戦車が19日午前、京畿道驪州(キョンギド・ヨジュ)の南漢江(ナムハンガン)一帯で渡河潜水訓練を実施した。
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もういいじゃん、これでさ。
  K-2黒豹戦車は最高4.1メートルまで潜水が可能で、韓国の多くの河川を浮橋なしで渡ることができる。最高時速は70キロ、潜水状態時速は約15キロだ。

なんかこう、鴨撃ちになりそうな絵柄だが、戦車の渡河ってこんな風になるのが一般的なのかなぁ……。

国産化を断念したり、しなかったりと、忙しい国である。

追記 (2017/6/2)

ちょっと古い記事を見つけて興味深かったので、追記で紹介しておきたい。

次期主力戦車「XK2」、韓国独自技術で開発

Posted March. 03, 2007 03:24,   

世界最高水準の韓国型次期主力戦車(XK2)が、国内独自の技術で開発された。

国防科学研究所(ADD)は2日、慶尚南道(キョンサンナムド)の昌原(チャンウォン)試験場で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領や軍、防衛産業の企業関係者らが出席した中、XK2試作品の出庫式を行った。

これは2007年の記事、つまり試作品が公開された際の記事だ。

ADDやロテムなどの国内の防衛産業企業が95年から12年間、約2000億ウォンを投じて開発したXK2は、機動力や火力、生存性などの面で、ドイツのレオパルト2A6、米国のM1A2エイブラムス、日本の90式、フランスのルクレールなど、先進国の主力戦車と性能で肩を並べるか、それらをしのぐと評価される。

なかなかのホルホルっぷりで苦笑いである。

そして、この時は2011年に実戦配備できると信じて疑わなかったようだね。まあ、現実的には実戦配備は5年ほど遅れて、更に国産のパワーパックを導入する目処は立っていないのだけれど。

世界最先端のIT戦車について、ADDの金ウィファン戦車システム部長は、「次期主力戦車は、コンピューター情報技術(IT)を極大化した新しい概念の電子式戦車で、山地が多い韓国の地形に適するよう設計された」と説明した。

ITを極大化した新しい概念の電子式戦車ねぇ……。どの辺りがそうなのか今のところハッキリしていないのだけれど、「山地が多い勧告の地形に適する」というのは言い過ぎかと。実際に、足回りの不安は未だに解消されていないよ。

試作品の時から性能がダウンしたわけでもあるまいに……。

また射撃時に停車しなければならない機械式戦車とは違って、電子式射撃統制装置を備えたことで、走りながら正確に射撃できる。特に、ターゲット自動探知追跡装置や自動識別能力は、ルクレールをしのぐ。

この辺りは実演されていない様な気がするが、気のせいかな?

この他に、4.1メートルの深さの水中を機動し、水の外に出た瞬間、即時に射撃できる。ルクレールが4メートル潜水でき、他の戦車は2メートル前後に過ぎない。エンジン出力も1500馬力(K1A1は1200馬力)に高め、時速70キロで走れるように機動力を強化した。

K1に無かった渡河能力が付いたのは嬉しいみたいだね。

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……間抜けな絵面なんだけど、写真は専用の演習場っぽいな。

実戦が始まるリスクがある状況で、未だに倉庫に100両眠っているという現状は、なかなかインパクトがあるが、韓国軍はあまり気にしないかも知れないね。

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コメント

  1. 山田の案山子2017年6月1日 11:28

    李承晩の作戦を倣い「逃げる」のが確実で安上がりでしょ。
    追って来れないように橋の爆破もお忘れなく・・・・(笑

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    1. 逃げるにしろ橋を爆破するにしろ、既に一回使っている手口ですからねぇ(苦笑

      まあ、正面切って戦うには少々不都合が多いと思います。
      明らかに戦車の数が足りてませんしね。

      削除
  2. 二式大型七面鳥2017年6月1日 12:28

    本邦もうそうですが外国に出て行く必要の無い戦車の場合、渡河能力=重くて橋を渡れない、ですよね。
    まあ、南朝鮮の場合、南側の橋もおっかないですが、北の橋なんてそれこそ渡れる重量ではないでしょうから必要な能力なのでしょう。
    渡河中は無防備になりますから襲われない状況を作っておくことが必須ですが、ゲリコマ対応出来てない重戦車で何処まで出来ますことやら。
    先頭が水から上がり際で腹を見せたところでATM一発で後続が全部立ち往生、なんて未来が……

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    1. K2戦車は55tありますから、強度の心配な橋を渡るのは色々と問題があるのかも知れません。

      それでも北朝鮮に攻め入らないのであれば、渡河能力を重視するより橋を臨時で欠ける技術に磨きをかけた方が良い様な……。
      まあ、橋を作ったら作ったで爆破されればそれまでなんで、渡河能力もあるに越したことは無いと思います。4.1mは中途半端な感じがしますけどね。

      削除
  3. 治金技術が70年代で 北>中>>韓
    現在        中>>北>>>>韓
    韓国は基礎技術が40年の間に4年ぐらいしか進歩してなさそう。

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    1. 冶金技術は重視していない感じですもんねぇ。
      韓国国内では鉱物がとれるわけじゃありませんし、純粋なインゴットならば隣国から輸入した方が(苦笑

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  4. 使わない兵器よりも国の経済力増強に金を使おうという意味の台数削減なら意味あるんだけどね。
    韓国の場合、予算つかっちゃうからな。

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    1. 「使わない兵器」という意識があるから「使わない、平気」と思って中抜きしちゃうんでしょうね。

      最近も酷いニュースが有りましたけど。

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    2. 審議中
      というかすぐには気付かなかった(笑)

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    3. うひひ、お目汚し失礼しました(苦笑

      削除
  5. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年6月2日 4:27

    調べて見たのですが、日本の戦車が潜水出来るのは2m程度(砲塔上面が水がつからない程度)、米国のM1戦車は海兵隊向けのみ2m程度(陸軍向けは潜水能力無し)のようです。
    一方、ルクレール戦車は、4m程度までいけるようです。
    もしかすると、K2戦車に4m程度潜れる能力を持たせているのは、輸出のことを考えているためかもしれません。

    潜水能力を上げるよりは、自走戦車橋を増備したほうがいい気はしますが。

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    1. ほうほう、日本の戦車というと90式か10式ということなのでしょうが、何れにしても荒れ地や湿地を走破する必要性を考えれば、多少の防水能力があっても不思議はありません。
      乗用車でもエンジンルームが水に浸からなければ、走ることができると言いますしね。
      意外にもM1の方が水没を考慮していなくてビックリですが、色々と想定している場面が違うのでしょうねぇ。

      「潜水」のキーワードで検索したら、KX2の記事が出てきましたので、追記しておきます。ありがとうございました。

      削除
    2. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32017年6月2日 16:29

      水没対策(水密性)ということであれば、対NBC(核・生物・化学)兵器のために密閉性は高いと思いますので、M1戦車でも問題ないと思います。
      単に、シュノーケルなどの潜水キットが付けられない(用意されてない)というだけだと思います。

      削除
    3. そういえば対NBC性能が付与されていれば、密閉度は高そうですよね。
      ただ、エンジンがそれで問題無く動くか?とはまた別問題なような気もしますけど。具体的にNBC性能がどのように付与されているのか理解出来ていない僕にとっては、想像するしか無さそうです。

      削除
  6. シュノーケル装着で渡河ができる条件は
    ・敵がいなくシュノーケル取り付け取り外しの時間的余裕がある。
     (時間に余裕があるなら工兵隊の仮設橋でもいいよね)
    ・渡河する川底の状態が事前に把握できている必要がある
     少しでも能力以上のくぼみがあったらエンジンに水が入るし、岩が
     転がっていたらすrタックの恐れもある、
     (事前に調査していても大雨とかあったら再調査が必要)
    というように実戦で用いるにはかなり制約がありますので走行試験や
    デモンストレーション以外ではシュノーケルによる潜水渡河はまず
    行われることはないようです。(戦車兵が嫌がる)

    まあカタログ性能とデモンストレーションだけの戦車なので
    こんなことで喜んでいればいいんじゃないかな。

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    1. ほうほう、あのシュノーケルは取り付け取り外しが必要なのですか。
      確かに、あんなのが戦車本体から生えてくることは考えにくいので、取り付け取り外しができる構造のほうが理に叶っているのでしょう。
      ただ……、何処にしまっておくんでしょうかねぇ?そこがちょっと気になりました。

      2番目の条件の「渡河する川底の状態」の調査は作戦を立てるときに事前に把握する要件の1つなのでしょうが、以外に川の水位は変わりやすく(日本で、の話なので、韓国は違うのかも知れませんが)、念入りに調査するというよりは、通過できる場所を常日頃から調べておく必要がありそうですね。
      水深4mって、浅いのか深いのかピンと来ませんが、日本の河川で考えるとそれなりにシーンは限定されそうです。

      となると、ご指摘頂いたようにシュノーケルの取り付けは実戦ではちょっと現実味が薄いですね。

      削除

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