加計学園問題、その前提も崩れる

京都産業大学の副学長が記者会見をしていたね。

獣医学部断念を発表=京産大「準備期間足りず」

7/14(金) 17:13配信
 京都産業大(京都市)の黒坂光副学長は14日、記者会見を開き、国家戦略特区を活用した獣医学部の新設を断念すると発表した。
 開学までの準備期間の不足などを理由に挙げ、将来的にも設置しない意向を示した。
野党は、「加計学園ありき」「京都産業大学が落とされた事が問題」とか言っていたけれど、そもそもその話がこういった形で崩れてしまった。

さて、この時事通信の書き方に若干悪意を感じはするが、京都産業大学が加計学園問題にどのように絡んできたか、を少し説明しておきたい。
 同大は、学校法人「加計学園」などと共に特区での新設を要望していたが、政府が昨年11月、広域的に獣医師系養成大学が存在しない地域に限り新設を認める方針を決定。既に大阪府立大(堺市)に獣医師系学部があるため、条件的に排除される形となっていた。
こんな風に説明があるが、実際、国会の答弁で明らかになった事実はちょっと異なる。
前の記事で、青山氏の質問について整理した部分があるので、そこを引用しておく。
箇条書きにしておこう。
  • 省内メモは非常にありふれている
  • 重要なのはメモでは無く閣議決定など公に公開されている資料
  • 2003年の最初の告示(「獣医学部の新設について、一律に申請を受け付けない」という旨の告示)があった
  • 2007年に加計学園が獣医学部の誘致に賛同
  • 2015年6月30日に4つの条件を満たせば国家戦略特区に獣医師の学校を作って良いという閣議決定
  • 2016年3月に京都産業大学が獣医学部新設について名乗りを上げる
  • 2016年9月16日、国家戦略特区ワーキンググループのヒアリング実施(ここで文科省が、学部新設について新しい需要があるかないかという挙証責任は文科省に無いと発言。これに対してワーキンググループ側は「いや、文科省にあるら」と反論し、文科省はそれに反論しなかった)
  • 2016年9月26日に、メディアから出てきた「メモ」が作成された
  • 課長級の交渉で決着したことに、改めて内閣総理大臣が口を出すというのはあり得ない(メモの内容は嘘だろうとの意味)→ メモは内部向けの言い訳だったとの指摘
  • 獣医師会の圧力により1校に絞る
  • 確証は取れないが、京都産業大学は「次回に期待」で矛を収める
  • むしろこの1校に京都産業大学が決まっていたら、それこそ大問題では無いか?(京都産業大学の方が後から手を挙げているから)
とまあ、こうした質問をして「経緯」を示したのに対して、「知らないよそんなの」と答えたのが前川氏なのだ。
この様な感じの流れで、青山氏は質問をしていた。



この問題の根底には、西日本と東日本では獣医学部の数に大きな隔たりがあり、東日本8に対して西日本は2割くらいの程度でしか獣医学部の定員が確保できていない現実がある。
もちろん、獣医学部を卒業した生徒達が大学周辺の地域で獣医になる可能性は高くは無いのだろうけれど、学生にとって縁もゆかりも無い地域で獣医になる可能性よりは遙かに高いだろう。

そういう意味でも、「広域的に獣医師系養成大学が存在しない地域に限り新設を認める方針」というのはそれほどおかしな条件付けでは無かった様に思う。何より、獣医学部新設を1校にしてくれというのは獣医学会からの養成であった事は以前にも指摘した通りだ。
 黒坂副学長は、断念の理由は地域的な条件によるものではないと説明。特区に関する告示で指定された2018年4月の開学には準備期間が足りず、加計学園が先に申請したため優秀な教員の確保も難しくなったとした。
 副学長は「残念だ」と述べる一方、加計学園をめぐる問題については「大学によって状況は異なり、(加計学園が)どう準備していたのかは知らない」と話した。
 京産大は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた創薬分野などで実験動物を扱う獣医師養成を目指し、京都府綾部市での校舎建設を計画していた。 
また、冒頭の京都産業大学については、事情によって優秀な獣医学部の教員の確保も困難になったとのことで、結果的に見れば、「安倍首相のオトモダチの学園に獣医学部が出来た」というのは難癖に等しい話。



そもそも、加計学園問題の出発点は一体何処だったのか?というと、「安倍氏のオトモダチガー」という辺り。

しかし、蓋を開けてみたら、加計学園の獣医学部新設は12年以上も前からのお話で、12年前と言えば小泉政権時代である。

この頃は、加計学園に獣医学部新設という話は、鼻で嗤われるレベルの時代だったという。何故ならば、文科省が「獣医学部の新設はまかりならぬ」という告示を出していたからだ。

この時点で救い難いのだが、しかし、獣医学部の新設はそれ以前の何十年もの間、実現されなかった。この結果、52年間にわたって獣医学部の新設は無かった。この根拠として文章で出されたのが件の告示であり、それ以前は、文科省が内々に処理をして、新学部の設置を認めなかったのである。
もちろん、それで獣医が足りていれば良いのだろうが、現実は違った。

毎日新聞はこんな記事を書いて頑張っているのだが、これ、論点がズレている。

新設の4条件 政府、実態把握せず

毎日新聞2017年7月10日 07時00分(最終更新 7月10日 07時00分)
 獣医学部新設に関して毎日新聞が実施した大学アンケートからは政府が新設を認める前提として「既存大学では新分野への対応が困難」などの「4条件」を設けたにもかかわらず、検証が不十分なまま手続きが進められた実態がうかがえる。加計学園による計画は4条件を満たすのか--。衆参両院が10日に行う閉会中審査でも、論点の一つとなる。
この話は前川氏も指摘していた。が、この4条件は石破4条件と呼ばれるシロモノ。
 欧米に比べ日本の獣医学部は教員やスタッフの人員が少ないとの課題が指摘される中、山口大の木曽康郎共同獣医学部長は取材に「(他大学との)教育の共同化で教員や学生の規模を増やし国際水準の教育を目指している。特区の内容が既存大学でできない新分野との認識はない」としている。
 文部科学省の前川喜平前事務次官は毎日新聞のインタビューで「既存の16大学にヒアリングして国家戦略特区の諮問会議でも十分な議論が必要。しかし、全然やっていない」と批判。アンケートからも、新設計画が4条件を満たしているかの議論が尽くされたとは言い難い現状が浮かぶ。
だが、国家戦略特区担当だった石破氏が、2015年に打ち出した方針だが、この4条件の妥当性をダレが検証したか?と言う点については誰も言及しない。

石破4条件は、こんな内容だった。

獣医学部新設の4条件

政府は2015年6月に規制緩和策などを盛り込んだ成長戦略を閣議決定。この中で、愛媛県今治市が国家戦略特区での新設を提案したことを踏まえ、(1)既存の獣医師養成でない構想(2)ライフサイエンス(生命科学)などの新たに対応すべき分野で具体的な需要(3)既存の大学・学部では対応困難(4)獣医師の需要動向も考慮--を新設の条件とした。文部科学省は獣医師の過剰を防ぐため新設・定員増を認めていなかった。
しかし、読んで頂ければ分かるが、この4条件は獣医学部新設にあたって、獣医が十分に足りている前提で考えられている。
 獣医師の需要が増えるかも不透明だ。ペットフード協会の推計では2016年の犬・猫の飼育数は約1972万5000匹で前年比約6万6000匹減。逆に、獣医師資格を持つ人は、農林水産省の調べでは3万9098人(14年末)で10年前より8000人近く増加した。
毎日新聞はこの様な論証の仕方で獣医は足りているのだ、と言うことを述べている。だが、加戸氏の説明にもあったが、足りないのは産業医なのである。
●獣医師の就職動態
・獣医師届け出者の総数     ・・・39,098人
・個人診療施設(民間の小動物医)・・・17,241人(44%)
・国家公務員          ・・・    518人(1.3%)
・都道府県職員         ・・・ 7,121人(18%)
・市町村職員          ・・・ 1,887人(4.8%)
●獣医の地方分布状況
・福井県・・・    163人(最少)
・東京都・・・4,025人(最多)
加計学園のある愛媛県は398人が届出をしている状況にあるが、うち、都道府県職員は114人だ。これで獣医が十分にいると言えるのだろうか。



これに関しては朝日新聞が過去にこんな記事を出している。

公務員獣医師が足りない 家畜よりペット、学生流れる

2010年6月17日14時7分
 宮崎県で家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)の被害が広がる中、自治体職員として家畜の防疫対策や食肉の衛生検査を担う公務員獣医師の不足が各地で深刻化している。ペットなど小動物の獣医師を目指す学生が増えたためだ。朝日新聞の調べでは公務員獣医師の定員を定める20都道県のうち12道県で定員に満たない。伝染病対策に遅れが出てはいけないと、自治体は獣医師確保に必死だ。
そして、一度口蹄疫などが発生すれば、全国から獣医師をかき集めることになる。
薬物注射などで家畜を殺処分する防疫作業も公務員獣医師が担うが、宮崎県だけでは人手が足りず、16日までに全国からのべ約3500人の公務員獣医師が派遣された。現在も39都道府県の103人が支援を続ける。
「獣医が足りない、産業医が足りないというのは、獣医師不足ではない」という意見もあり、それは一見説得力があるようにも思える。
が、「公務員獣医師の定員」というのが本当に妥当なのか?と言う点についても疑問がある。
産業医が少なくなってきている背景には、日本の畜産業が衰退してきている現実があるのだろうけれど、こうした産業医の減少は、畜産業の衰退に更に拍車をかける結果になるのでは無いか。
そこに予算を割けない自治体の問題とは言えるかも知れないのだけれど、バターやチーズの不足の話を考えても、どうにも不思議な気がする。



話は逸れるが、この頃、定期的に聞かれるこんなニュース。

バター不足の「本当の理由」を知っていますか

2016年04月16日
――実は脱脂粉乳の需要に左右されているのですか。
使い道が少なくなった脱脂粉乳がバターの生産量、そして生乳の価格、酪農経営をも左右しているのだ。生乳は遠心分離するとバター(クリーム)と脱脂粉乳(脱脂乳)になる。つまり、バターを造る過程で同時に脱脂粉乳が生成される。それぞれ一定量出てくるが、需要はまちまちだから、普通に生産すれば必ずどちらかが足りなくなる。2001年以前はバターが余っていた。需要の少ないバターの需給均衡に合わせて生産するから、どうしても脱脂粉乳が足りなくなる。そこでかなりの量の脱脂粉乳を輸入していた。
~~略~~
生産の事実関係に政治的な動きが加わる。当時農水省は民主党政権下で、かなり輸入を増やした。自民党には酪政会という、日本酪農政治連盟とつながる議員の会合があって、酪農家の団体と歴史的にタイアップしている。民主党にはそんな組織はない。自民党政権なら輸入し余って乳価に影響したらと神経を使い、輸入もほどほどに抑制しただろう。農水省は裁量で輸入しても民主党政権には怒られないと踏んだのかもしれない。
又、民主党か!

さておき、この話は民主党云々という問題以前に、農協の問題がある。
──諸外国は価格保証でなく所得補償に転換していますね。
米国も欧州連合(EU)も農家への「直接支払い」に変えている。なぜ日本だけできないのか。極論すれば、農協があるからだ。農産物に高い値段を設定すると、それだけマージンを多く取れる。乳価、米価が低くても直接支払いで補償してもらえば農家は困らない。だが、農協は価格が下がると、価格によって決まる販売手数料が減る。直接支払いの補償は農協には行かない。だから組織維持で抵抗する。
個人的に、農協が全て悪いとは思わないが、しかしこうした足の引っ張り方をよくするのが農協だという状況に、日本は陥りつつある。

ある意味、政府がコントロールできない状況になりつつあるのだ。そういう意味では、民主党政権時代に出てきた農家戸別保障制度は悪い制度では無かった。あれが「米だけに限る」話で無ければなんだけど。

話が迷子になりつつあるが、バターの話を出したのは、日本の農業政策は、従来のやり方では通用しなくなりつつあると言う話。



バターの話と同じように、行政の歪みというものが出来たのが加計学園問題であり、それは省内で既得権益の維持に汲々とするのが問題である。つまり、過去にしがみつく亡霊達と対峙しなければ、この問題は解決し得ない。

民進党の持ち出した前提は完全におかしな方向に行ってしまったけれど、加計学園問題として発覚してきたところを、一度整理して、おかしな部分を正していかなければ、それこそ国会で税金のむだ遣いという形になってしまう。



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コメント

  1. バター価格の裏がそれとは知りませんでした。
    すみません。
    てか、また元民主党かよ!!
    ふざけやがって!
    匿名様がからだを張って東北の惨状に赴いてくれました。そういう自衛官の活躍を嫉妬して、
    あたかも、その活躍を過小評価するような説を
    放っていたのがクソ民主とクソ売国アサヒ!
    お前ら匿名様に謝れ!
    ふざけんな!

    返信削除
    返信
    1. バターの価格の話は、結果的に民主党の判断が不味かった、と言う話なので、目くじらを立てても仕方がありません。

      日本の農業政策の誤りは、やはり根本は自民党にあるのですし、しっかりと舵を切れる人間がやるより他に無いのです。
      そして、自民党と農協は距離が近すぎる。そういう意味で民主党政権には実は大きなチャンスがあったのですが……、無為に3年間を過ごしたばかりにこの始末です。

      自衛官の皆さまの活躍には本当に頭が下がりますが、それを「行って当然」みたいな顔で指図されるのは、僕としてもかなりムカつきますね。

      削除

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