送電線はがら空き?検証しない報道機関

アホだろう。

送電線、実はガラ空き 再生エネに冷たいシステム

(2018/01/29 17:21)
 ないはずの送電線、実は「ガラ空き」でした。
 自然エネルギーを手掛ける事業者は、大手電力会社から送電線に空きがなく接続できないとして、多額の負担金を要求されて事業を断念するケースが相次いでいます。ところが、京都大学が全国の基幹送電線を分析したところ、実際には2割しか使われておらず、「ガラ空き」状態なことが分かりました。
 京都大学・安田陽特任教授:「再生可能エネルギーをもっと入れることができるポテンシャルがある。なぜ入らないのかというのは、ますます合理的な説明が必要」
 電力会社は原発の再稼働など、すでにある発電設備が動くことを前提にしているためとしています。
何者だよ、この安田某という教授は。

調べてみると、京都大学の経済学研究科の特任教授という立場の人物らしい。なお、この「特任教授」というのは、便宜上「教授」の名前を冠しているだけで、正規の教員というわけでは無いようだ。専門は風力発電の耐雷設計と系統連携問題とtwitterに紹介されているが、本当に内情を調べ、理解した上での説明なのだろうか?

ちょっと調べただけではこの特任教授の正体は分からなかったが、まあ、さておこう。
京都大学のサイトには、この人の主張に関する説明が開示されているので、一体、安田氏が何を言っているのかを、紹介していこう。
まずはこちら。
  • 東北電力公表した資料
電力会社は、「送電の空き容量が無いので、受け入れられない」と、再生可能エネルギー発電により発電した電力の受け入れを拒否している。

<再生エネ買い取り5年>送電網「パンク」寸前

2017年07月01日土曜日
 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は1日、運用開始から丸5年となった。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、太陽光や風力の発電施設が急増。東北電力の送電網は、再生エネの電気を受け入れる空き容量が青森、岩手、秋田の北東北3県で既にゼロになった。他県も空きは乏しく、現状のままでは新たな事業参入は一層厳しさを増す。
これは、2017年7月の記事だが、3.11より再生可能エネルギー発電がより注目されるようになって、導入されたFit制度により、雨後の竹の子のように太陽光発電所が増えた。
送電網がこれに対応できないという話になるのは、ある意味当たり前なのである。
そもそも、送電網というのは、計画された電力を送電するために設置されるものなので、電力会社の想定以上の電力が供給されれば、飽和状態になるのは自明の理だ。機械の設計をやられたことがある方なら「安全率」という考え方を説明すれば、おわかり頂けるだろう。
当初よりある送電網に、無理に電力を載せようというのが、そもそもおかしい。

では、送電網を急激に増えた電力に対応する様に増やす必要があるのか?というと、民間で、継続的に発電してくれるかどうかも分からない業者のために多額のインフラ投資をするのが不合理であり、「やれ」というのはおかしいのである。
 再生エネ事業者は「接続に時間がかかる上に採算性が厳しくなり、参入は難しくなった」とため息を漏らす。東北電は「送電網を最大限活用して受け入れてきたが、残る容量は少ない。募集制度を活用して接続拡大に努めたい」と話す。
こんな話になるのが、実際の所だと思われる。もちろん、計画外に空いている送電網ができてしまう可能性は否定しないが。


で、経済産業省のサイトを紹介しておく。

送電線「空き容量ゼロ」は本当に「ゼロ」なのか?~再エネ大量導入に向けた取り組み

2017-12-26
「太陽光発電を始めたいのに、送電線に空きがなく、つなげない」。そんなニュースが最近世間をにぎわせています。これはいったいどういうことでしょう?なぜ空きがないのか?本当に空き容量はゼロなのか?今回は、送電線の空き容量の考え方、日本の送電線の状況、検討が進められている改善策についてご紹介します。
結論から言うと、「空いているけど流せない」というのが実情だという話である。
送電線のイメージ
説明は、一本の電線を半分にして描いている様な形になっているが、実際には二重化しているので複数の送電線が並行して走っていることになる。
もし、いつも100万kWの電力を流している送電線が、落雷事故などで切れてしまうことにより電力を流せなくなってしまうとどうなるでしょう。100万kWの電力が流れることを前提にバランスをとっていた系統は、急にその流れが止まることで、全体の需給バランスをくずしてしまい、停電につながってしまいます。
そこで、電力系統には、たとえ1本の送電線が故障した場合でも、電気をほかの送電線に流してカバーできるようにすることで、停電を防ぐしくみになっています。これは「N-1(エヌ マイナス イチ)基準」とよばれる考え方に基づくもので、日本だけでなく、欧米など国際的にも広く採用されているものです。
そのためには、送電線の容量に、ある程度の空きが残されている必要があります。たとえば送電線が単純な2回線であれば、原則的には1回線分の容量である「50%」という利用率が、平常時に電気を流すことができる最大の容量となるのです。
停電を防ぐための措置で、基幹インフラが二重化されているということを考えれば、確かに「空いている」とは言えるが、これを利用することが良い事かどうかは分かりそうなものである。

それと、発電された電力は時間軸と共に変動する性質があるので、ピーク電流を見込んで余裕を持っておく必要は当然にある。ピーク電流が流れたらブレーカーが落ちて停電、なんて状況になれば、それこそ大問題となる。

イメージその2

これが、利用率2割の正体というわけだ。


なお、経産省のサイトには、利用の方向性についても提唱されている。

コネクト&マージ

流石に、今までの利用形態を漫然と使うのではなく、方向性としてはもうちょっとフレキシブルに運用できるように改めていくという。
① すべての電源がフル稼働した前提ではなく実際の利用率に近い想定で空き容量を算定
②  緊急時用に空けておいた容量の一部を、もし事故が起こった時には瞬時に遮断する装置をつかうなどして、平常時には活用する
③  他の電源が稼働している間など、系統の混雑時には制御することを前提とした新規の接続を可能とする
なるほど、「無駄がある」という認識は、経産省も持っているわけだ。
ただ、どの程度の電力を吸収できるような運用が出来るのか?②にあるような想定外のピーク電流はしっかりカットできる設備をどの程度備える必要があるのか?など、しっかり検討すべきなのである。

そういう状況なので「利用状況は2割」というのは、明らかな誤りであり、ちょっと調べれば直ぐに分かる話。僕が30分程度調べただけでこの状態であり、行政でしっかり説明しているじゃ無いか。もちろん、民間でも調べて解説している所はある。
ハフポスって、お仲間だよね?報道機関がこれ程までに劣化していることを嘆くべきか、恣意的にやっていると嘆くべきか。

なお、この安田氏がアホなのか?というと、他の説明をしっかり読んだ上で、この人の説明を読んでみると、「コネクト&マージ」という考え方もご存じのようだし、流石に問題点は理解した上で、なお「空いている」と指摘しているようだ。
報道機関に文句を言った方が良いと思うよ。明らかに報道されている内容とは違うから。
 また、原発が再稼働し、太陽光が比較的多く導入されている九州電力で、基幹送電線の空容量ゼロが少ないというのは注目に値します。このことは、再エネの大量導入に対する取り組みや系統運用方法に関して、電力会社間でも差異が生じていることが示唆されます。
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/occasionalpapers/occasionalpapersno59
こんなコメントも書かれているが、結論は「空いているじゃん」という方向に持っていきたいようだ。
まあ、実際に、日照条件や風況を勘案して空き容量の考え方が異なる可能性はあるので、その辺りの調整は必要なのかも知れない。ただ、「めっちゃ空いてる」という印象を持たれるような書き方はすべきでは無いだろう。空いているには理由があるのだ。



話を整理しよう。
送電線は「空いているか」という質問には「Yes」と答える必要があるが、それが「使えるのか」との質問には、「現状ではNo」と答えざるを得ない。

では、「将来的に空けられるのか?」というと、「ピーク電流をカットする装置を要所に設けることで、空けられる」という話になる。
もちろん、これは「考え方」の違いによって、ある程度は空けられる余裕が生み出せる可能性はあるものの、マージンをどれだけ取るか?というのは、状況によって異なるハズなのだ。

理系の方への説明になって申し訳無いが、安全率2で設計されたケーブルを使って、耐荷重の2倍の荷物を吊り上げるか?という話なのである。
安田氏の主張は、「安全率2は高すぎる。例えば安全率1.5とかもうちょっと下げようぜ」という話に過ぎない。そして、それが妥当かどうかは検討の余地があるものの「空いてるのに断ってる」と騒ぐような話では無いのだ。



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コメント

  1. 再生可能エネルギー方面て自然科学の素養のない者からしますと「うさん臭せー!」香りがプンプンなんですよ。
    騙そう~な連中がウロウロして。だから調べないと危ない。
    先日も、
    「小型推力発電を沢山つくれば日本は明るい」
    てな書籍がジュンク堂の自然科学コーナーに並んでいて目眩しました。
    私ゃ山歩きするんで、砂防ダムが放置すると簡単に埋まるの知ってるし、小型ダムなんざそんなもんでしょう?
    それに小型の動力を沢山つくって、村々で運用すれば…って、
    「大躍進」じゃないすか?
    キチンとした製鉄所を作らずに、そこらのセコい炉で鉄生産しようとして、てってー的に農具の生産率を下げた。あげくに雀殺しで超大量餓死!
    それと同じ轍を踏みたいようだな、このダム著者は、と思うたのです。
    エコ系の奴らは好きですよね、
    小っこい発電を沢山みたいなの。参加する事に意義があるとか思ってるんでないですか?
    役に立たない空き缶プルトップで車椅子を運動みたいなもんですよ。あれも業者迷惑してます。この参加する事に…主義って、私みたく里山保護運動なら
    人手でしか出来ない事が多いので「いらはい!」なんですが…
    インダストリーに通用せんと思うのですね。
    まともに自然保護しようとすると、この種類の科学でなく信仰レベルの人柄結構にいまして、
    ゲンナリさせられます。

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    1. 胡散臭いんですよね「エコ」の看板を掲げられるところには、色々な山師の類も寄ってくるわけで。
      小水力発電に関しては、このブログでも過去に取りあげさせて頂きましたが、折角なのでまとめさせて頂きました。調べると色々面白いんですよね。

      しかし、「大躍進」ですか。
      確かに、専門的な知識が必要なシーンは色々ある訳で、とある第三セクターのキャンプ場を利用したときに、そのキャンプ場でプールが使えるってんで、利用させて貰ったんですが、途中でスライダーなどに使っている水が出なくなっちゃった。管理人に伝えたら、「システムが動かない」と、大騒ぎです。
      ちょっと知識があったので、ポンプなどのシステムを見せてもらったのですが、制御盤からモーターまでサビサビで、シロウトの管理人(バイト)が、電話で電気屋さんに連絡しながらシステム復旧をする始末でした。
      結局、ブレーカーを操作して再起動出来たんですが、どう考えても漏電して電力回路に負荷がかかったとしか思えず、酷い管理状況にゲンナリした思い出があります。

      まあ、小水力発電をやれば、あっちこっちで似たような話になると思いますよ。

      削除
  2. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32018年1月30日 17:35

    コンピュータシステムにも似たような議論というか問題がありまして...
    SE同士だと理解してもらうのは、割と簡単なのですが、(特にITが専門外の)顧客に説明するのは、非常に面倒(かつ金の問題になりやすい)です。

    この記事を読んで、自分が理解したのは、以下の内容です。

    A発電所からN市(消費地)へ電力を流す系統が2つ(A-P-N系とAーQーN系、PとQの間は相当離れている)あると仮定します。
    通常は、A-P-N系とAーQーN系を合わせて電力を流しています。
    ここで、P点で断線した場合、A-QーN系で全ての送電を行えないと、A発電所がダウンし、電力網全体が停電する(可能性がある)

    コンピュータシステムでも似たような事象があります(今回は省略します)

    「予備」「余裕」の概念が分かっているか心配です(「予備」や「余裕」と「無駄」は違います)

    なお、「N-1(エヌ マイナス イチ)基準」と記事内にあるように、沢山の送電系統があれば、それぞれの効率は上げられます。例えば、11系統あれば、100%÷(11-1)=10% の余裕をそれぞれに持つだけで済みます。
    ただし、むやみに多重化すると設備費・保守費などコストが上がるので、考え物です。

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    1. N-1の話は割愛しましたが、ご指摘通りのシステムの多重化は電力網のシステム設計にも関わる話。
      結局専門の業者がしっかりと計画してやらざる得ないところで、そこが「ちょっとこれ以上の電力はお断り」という話が出てこれば、相手も半官の状態にあるとはいえ、利益を追求する営利団体ですから、「仕方が無い」と諦める必要があるのかと。
      金にならない事をやらねばならないのは、電力会社にとっては苦痛でしょうねぇ。
      ただでさえ、行政の対応の問題で原子力発電所がお荷物以下になっているので、再生可能エネルギー発電に対して冷たくなっても仕方が無いと思いますよ。

      そういうバックグラウンドはあるにせよ、2割のニュースは酷い。そう思った次第。

      削除
  3. >ないはずの送電線、実は「ガラ空き」でした。

    再生エネルギーが天気力エネルギーである以上ある意味「ガラ空き」は当たり前
    です。
    ドイツは約12%を再生エネルギー(太陽光発電)が占めるようになりましたが
    その為の(天候不順時)バックアップ用火力発電所の増設と維持、フランスから
    電力の買取を実施した結果は2000年頃を1として2010年頃で1.8と
    電力料金がUPしてます。(個人家庭での比率)
    理由は再生エネルギ-の高額買取、バックアップ用火力発電所の建設費と維持費
    フランスからの電力買取のトリプルパンチによるものかと・・・(苦笑)

    3・11後の電気料金値上げでパナソニック全体の電気料金が360億円にUP
    したと発表した記事を見た覚えがあります。
    電気料金の大幅値上げはマスコミを含めた全ての産業から人員削減の圧力に
    なるとマスコミの人達は気が付かないのだろか・・・

    ちなみに太陽光発電の発電効率は約10%、太陽電池板は15%以上ありますが
    充電制御装置、充電される蓄電池、蓄電池から交流流電気に変換するインバータ
    でロスが出てこの数値。
    おまけで真夏の高温時、太陽電池板は発電効率が下がるそうなのでパソコンの
    CPUの様に水冷する必要があるそうです。

    再生エネルギーをもっと優遇しろと云うのなら、今よりも発電効率をUPして
    ある程度天候に左右されないより安定した発電が出来なければ送電線の「ガラ
    空き」状態にかみつく意味はないでしょう。

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    1. 再生可能エネルギー発電が悪いとは言いませんが、例えば太陽光発電をやるならば、一定量の電力が供給できるように、発電所に電池に相当する蓄電設備を備える必要があるという風な義務づけを行うべきだと思うんですよね。
      風力発電にせよ、太陽光発電にせよ、ピーキー過ぎるんですよ。そりゃ、電力会社も嫌がると思います。

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