韓国、GPS独立計画をぶち上げる

いやこれ、以前もこのブログで話題になっていたけど、本気なのね。

位置情報、いつまで米国に依存?…韓国「衛星7機打ち上げてGPS独立へ」

2018年01月30日13時46分
  これまで米国など宇宙先進国に全面的に依存してきた衛星利用測位システム(GPS)が韓国国内の技術と資本で構築される。科学技術情報通信部は来月5日に開く予定の宇宙委員会で、韓国型衛星航法システム(KSP)の構築を含む第3次宇宙開発振興基本計画を確定する予定だ。
凄いこといっているな。

GPS

イマドキGPSの存在を知らない人もいないとは思うが、アレがアメリカの軍事技術派生だと言うことは意外に知らない人が多い様だ。あ、このブログの読者の多くは知っている事実だと思うんだけど。

GPS(Global Positioning System)は、アメリカによって運用される衛星測位システムのことを指し、運用開始は1978年から。ただし、全地球上で常時利用出来るようになったのは1994年になってからのことである。そして、今もアメリカ空軍によってGPS衛星は維持され続けている。
こういったGPSシステムに使われる複数の衛星を利用して1つのシステム形態を実現することを衛星コンステレーションといい、GPSでは合計24基で基本となる衛星コンステレーションを形成している。最大32機(切り替え時期によって異なることがある)を6種類の異なる軌道平面に投入して、運用していて、現在はブロックIIRMシリーズなどが中心になって運用が続けられている。

GPS衛星の設計寿命は約10年で、GPS衛星は絶えず地上に向けて信号を発信している。この信号を複数利用して、自身の位置を知るのが、GPSシステムなのだが、現在では様々な分野で利用されているようだ。
アメリカにとっては、自分たちが使う目的で発している信号を、勝手に傍受して利益を享受されることに不満が無いわけでは無いのだろうが、信号を止めるわけにも行かない。だから使ってね、というのが本音なのだろう。



ただ、他国にしてみれば、アメリカにいつまでもおんぶに抱っこを良しとしない考えもあるわけで、例えば、「ガリレオ」と呼ばれるEUが構築中の全地球航法衛星システムは「アメリカが何らかの理由でサービスを停止する可能性」を指摘して、運用を開始しようとしているが、資金面での折り合いが付かないようで、未だに実現していない。

いや、一応始動したって事になっている。

Europe's Galileo satellites herald new era for Earth science

15 December 2016
After soaring costs and years of delays, Europe’s global satellite navigation system, Galileo, finally began beaming its first signals to receivers in smartphones and cars on 15 December.
The 18-strong fleet of satellites promises travellers another way to accurately locate their position on Earth, ending Europe’s dependence on the US Global Positioning System (GPS) and Russia’s GLONASS.
2020年頃迄には完全補完に達するとか記事には書かれているが、GPS並みの運用が出来るようになるまでは(精度は一桁上だということになっている)、もう少し時間がかかりそうである。

もちろん、ロシアも黙ってはいなかった。「GLONASS」というシステムを運用しているが、ソ連時代から計画し、ソ連崩壊(1991年)によって計画が頓挫。実際に使えるようになったのは1996年らしいが、資金面の問題があって荒廃。復旧でき、全世界で実用可能となったのは2011年になってからの事である。
GPSよりも高精度なシステムだといわれているが、運用できる機器が普及していないので、メジャーな感じはしないな。日本で使えるという話は殆ど聞かない。

さて、この局面でイキるのが支那で、北斗と呼ばれる計画を推進中である。Compassという名前も付いているようだ。「北斗衛星導航系統」と呼ばれる開発計画の一端であり、北斗1は2000年より支那と周辺国で航法に運用が可能な状態になったと報じられている。現在は第2世代の北斗2がアジア太平洋地域で2012年から運用中であり、2020年には35基の衛星によって全世界で運用体制が整う予定になっている。
現時点でも約20万隻の船舶に利用されていると報じられている。
こんな他国との協力体制に関しても報じられており、今後、様々な展開が予定されているようだ。

まあ、つまり、アメリカのGPSに続いて、ロシアのGLONASSが運用されている状況で、これを追いかけているのがEUのガリレオと支那の北斗2ということになる。
ロシアは先進的なロケット技術を自国で開発していた経緯があったので、安価に人工衛星を打ち上げること自体は難しくないし、GLONASSの運用自体も問題は無いのだろうが、EUや支那はかなり無理をしている感はあるな。とはいえ、資金は両陣営とも豊富?なので、経済的にはやれると考えても良いだろう。
後は、出来るとしたらインドだろうね。

ちなみに、日本は、というと「みちびき」があり、2018年度、つまり今年から運用が可能と宣伝されている。なお、インドだがIRNSSという地域航法衛星システムが運用中で、2016年に7基全機を衛星軌道に投入し、運用は2013年から行われている模様。日本の場合も、どちらかというとGPSよりはIRNSS寄りのシステムである。
ただ、IRNSSは7基の人工衛星で完結して位置情報を提供できるのに対して、「みちびき」はGPSの精度を向上させるという方向性なので、考え方は違う。

とまあ、そんなわけで各国の状況を紹介したわけだが、「韓国もそれに続け!」と言い出したのが冒頭の記事である。
科学技術情報通信部によると、韓国型衛星航法システムは3年後の2021年に地上試験場の開発を始め、2022年に衛星航法核心技術の開発、2024年に衛星航法搭載技術の開発などの過程を経て2034年にサービスを開始する。KPS構築のために静止軌道衛星3機など計7機の航法衛星を打ち上げ、運用する。これを通じてソウルの半径1000キロ地域に海外航法衛星補強信号と固有信号を提供する計画だ。7機のKPSを構築するには約2兆5000億ウォン(約2550億円)の費用がかかると推定される。
で、システム概要をよくよく読むと、日本の「みちびき」そっくりだ。

ただし、日本の「みちびき」は初号機の衛星開発費が約400億円で、打ち上げにはH2Aが1基約100億円という事になっていて、2号機から4号機までの打ち上げ費用を含めた総費用が900億円。つまり1400億円くらいはかかっているようだ。最終的には7基になる予定なので、更に900億円くらいはかかるとすると、占めて2300億円と。
おっと、毎日新聞が総額についての記事を載せていたので紹介しておく。

みちびき2号機打ち上げ成功 日本版GPS前進

毎日新聞2017年6月1日 09時51分(最終更新 6月1日 16時36分)
 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1日午前9時17分、政府の準天頂衛星「みちびき」2号機を載せたH2Aロケット34号機を種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げた。
~~略~~
 一方で、運用には巨額のコストがかかる。2018年度からの4基態勢のためにかかる費用は約2850億円。1号機は20年に耐用年数を迎えるため更新する必要もある。巨費に見合う費用対効果を示せるかが今後の課題だ。
ふむ、2850億円と算出しているようだね。

となると、韓国の予算が約2兆5000億ウォンというのはあまりに少ないね。何しろ、今までロケットを自前で打ち上げた実績は皆無なのだから。

一応、このブログで紹介したKSLV-1(羅老)の打ち上げ実績があり、射場となった羅老宇宙センターは、2009年に完成しているようだ。だが、打ち上げシーケンスから何からロシアを頼ったKSLV-1の実績は殆ど参考にならず、少なくともH-2Aの開発費分(1,532億円)くらいは上乗せしてもおかしくは無い。
え?ロケット打ち上げは他国に依存する?ロシアは格安だ?
まあ、それが現実的かも知れないが、そうだとすると、果たして狙った軌道に人工衛星を投入できるのかね。

ところで、インドは赤道付近にあるので、静止軌道(地上から、常に同じ位置に静止しているように見える軌道)に人工衛星を投入しても運用できるし、補助的に軌道傾斜角29度(東経55度と東経111.75度)に投入すれば良いことになる。東経55度と東経111.75度の対地同期軌道に投入すれば良いことになる。何れも静止衛星で問題無い。

ところが、日本の場合は準天頂軌道に投入せねばならず、韓国も事情は同じだろうと思われる。つまり、割とピンポイントへの衛星軌道投入が必要となるわけだが、そうなると相乗りロケットで打ち上げてもらうというのはなかなか難しい話になる。もちろん、人工衛星自体にスラスターを備えて移動していくという「位置修正」を行うことでも対応は可能なのだろうけれど、韓国にそれが出来るかどうかは疑問だ。

そうした技術的課題を解決する目処が立っているかは知らないが、必要性があるという主張はなんとなく分かる。
  GPSは日常生活で必須システムになって久しい。自動車のナビゲーションのほか、スマートフォンと航空機・船舶などの位置情報がすべてGPSシステムに依存している。しかし韓国は独自のGPS衛星がなく、その間、米国など宇宙先進国の衛星GPSに100%頼ってきた。
  今でも米国のGPSを利用していて不便はないが、なぜ2兆5000億ウォンという予算を投入して韓国型衛星航法システムを構築するのか。最初の理由は戦争のような危機状況への対応だ。韓半島(朝鮮半島)地域を中心に戦争が発生する場合、敵軍の利用を防ぐために米国・ロシアなどGPS保有国が信号を遮断する可能性がある。
……いや、それはねーよ。
  韓国型衛星航法システムを構築すればGPSの正確度が高まるという長所もある。2034年に7機の衛星で構成されたKPSが構築されれば、現在約10メートル前後のGPSシステムの誤差範囲が1メートル未満に減る。
……それも目処が立ってから言えよ。

で、本音はどうなの?
  日本も昨年6月、超精密GPS衛星「みちびき」2号機を打ち上げるなど現在4機のGPS衛星を保有している。欧州連合(EU)も2002年から「ガリレオプロジェクト」としてGPS構築を始めた。航宇研のホ・チーム長は「他国の衛星に依存して生じる混乱を防ぐために先進国は先を競って衛星を打ち上げ、『GPS独立宣言』をするだろう」と説明した。
ああ、やっぱり「日本も持っているから欲しいニダ」なんだ。
どうしようもねーな。そして、GPS独立宣言など無意味だし、日本は出す予定も無いぞ。だって、独立できないんだから。「みちびき」はあくまで日本周辺での利用が前提のシステム。GPSの精度向上くらいにしか使えねーよ。独立運用できようになるのは、日本周辺のみで、そういう意味ではGPSのサポートくらいにしか使えない。

もちろん、有事において日本周辺での独自GPSシステムによる信号取得と言うことには意味があるだろう。
それが誤差数十センチというレベルであれば尚更である。

都市であればどうしようも無いが、山岳地帯や海の中など、「みちびき」の恩恵を受ける可能性のある場所は多岐に渡るのだ。

欲しくなるのは分かるが、しかし、その前に自分でロケットを打ち上げられるようにしような。お隣さんは出来ているんだしさ。

……あ、もしかして、北の将軍様に衛星を打ち上げてもらう予定だとか??それならば、実現可能性はあるのかも。ただ、打ち上げてからが本番なんだけどな、GPSのシステムは。


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コメント

  1. みちびきのシステムは地上に正確な電子ポールの設置が必要、地球は丸いから実測しないと正確な地図が作れないことを韓国人は理解しているのだろうか?

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    1. 電子ポールのことはよく分かりませんでしたが、韓国がしっかり調べていないのは事実なのでしょう。
      でも、地上実験から始めるらしいので、流石にその辺りは大丈夫なのでは?

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  2.  「ソユーズロケット10本まとめ買い」したアリアンスペース、75機の衛星打上げをスペースX社と一括契約したイリジウム衛星など、大量購入による格安調達という大手量販店的手法が、宇宙ロケット打ち上げの分野でも当たり前になりつつあります。
     韓国も、本当にGPSシステムのみが欲しいのであれば、日本の「みちびき」計画よりも優れたシステムを、より安くより早く実現することは容易に実現できる時代になってると思います。

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    1. そうですね、「自国で作る事」に拘らなければ行けるでしょう。

      ただ、韓国だけに「容易に実現」というのは、なかなか難しいのでは?と、思ってしまいます。

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  3. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32018年2月2日 16:16

    まず、突っ込みから
    >補助的に軌道傾斜角29度(東経55度と東経111.75度)に投入すれば良いことになる。
    >何れも静止衛星で問題無い。
    赤道上を自転方向に周回しないと、静止衛星にはなりません。
    「軌道傾斜角」は、軌道の赤道面との傾き(≒どれだけ北極・南極に近づくか)ということなので、その辺りが勘違いされているのかな?

    さて、みちびきに関してですが、このブログの記事「みちびき2号と日本の技術力」で引用されている、産経新聞の記事「日本版GPSを防衛利用へ 北朝鮮の妨害電波を防御 政府、1日に衛星打ち上げ」には、以下の記述があります。
    >平成35年度にみちびきが7基体制になると、GPSに頼らなくても部隊運用が可能だ。
    なので、
    >GPSの精度向上くらいにしか使えねーよ。
    というのは、「今は」というのが付くと思います。
    (「「みちびき」はあくまで日本周辺での利用が前提のシステム」というのは事実ですが)

    GPSなどの測位システム用衛星は、搭載する時計の正確性が肝になるようです。
    そんな衛星を、韓国が作れるのですかね?...

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    1. あー、そうですね。静止軌道は「赤道面を基準面として軌道傾斜角0度、離心率ゼロ(真円)、自身の公転周期 = 母星の自転周期」と定義されるはずなので、軌道傾斜角29度という表現はおかしいですね。

      インド地域航法衛星システムのWikiに「残り4機のうち2機(1A, 1B)は軌道傾斜角29度を有する東経55度の対地同期軌道へ配置。残り2機(1D,1E)は軌道傾斜角29度を有する東経111.75度の対地同期軌道へ配置」とあったので、この様に記載しましたが、寧ろ、「東経55度と東経111.75度の対地同期軌道」と記載すべきでした。
      引用元には「Bound for an inclined orbit, IRNSS-1B will join IRNSS-1A at a longitude of 55 degrees east, completing the first pair of satellites. Future launches will deploy a second pair at 111 degrees East, with the geostationary satellites taking up positions at 34, 83 and 132 degrees.」とありますしね。確認不足でありました。

      修正しておきます。

      GPSに頼らない部隊運用というのは地域限定、という意味で書きたかったのですが、確かにご指摘の様にも読めますね。こちらもちょっと修正しておきます。

      韓国の「作る作る詐欺」はいつもの事なので、生暖かく見守りましょう。

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