南スーダンで窮地に立つPKO部隊

正直、かなり厳しい状況になっているようだ。

南スーダンの和平交渉始まる 米大使館員ら退避

2014.01.04 Sat posted at 15:20 JST

ジュバ(CNN) 内戦の危機が高まる南スーダン情勢で、対立する政府軍と前副大統領を支持する反乱軍の代表団が3日、隣国エチオピアの首都アディスアベバで和平交渉を開始した。一方、南スーダンの首都ジュバの米大使館からは同日、職員約20人が新たに退避した。

政府軍と反乱軍の代表が和平交渉を開始したが、一方で米大使館から職員が退去し始めている。


国連でも大きな問題になっているようで、安保理ではPKOを2倍に増強する決議案を採択したようだが、基本的に打撃力を保有しないPKOでは人数を増やしたところで抑止力にならない。

何故か?

それは、南スーダンの状況に問題があるからだ。

年末にこんな記事を紹介しているが、もう一度簡単におさらいしよう。

南スーダンの混乱 (2013/12/25)

この記事の中でも触れているが、政府軍は大統領のサルバ・キール氏率いるスーダン人民解放軍(SPLA)で、反乱軍とされるのは元副大統領のエリック・マチャル氏率いるスーダン人民解放軍(SPLA)反乱部隊なのだ。

つまり、南スーダンでは、正規軍が真っ二つに分かれて対立しているのである。

タチの悪いことに、サルバ・キール氏もエリック・マチャル氏もSPLAの主要メンバーであり、バリバリの武闘派軍人でもある。

加えて、反乱軍には機械化部隊(戦車などを含む)の精鋭が含まれていると言われており、政府軍側の方が分が悪い模様。

 

では、PKO部隊は?というと、実は現在南スーダンに派遣されているのは、後方支援部隊であり、小火器中心の武装しか保有していない。

しかしこれは、そもそも現地での戦闘を前提として派遣されていないのだから、ある意味当然なのだ。

南スーダンの現状は、自衛隊を派遣できるような安定した状況では既に無い。


では何故、自衛隊は南スーダンから撤退できないのか?

それは、この写真が答えだ。

南スーダン

これはCNNの提供する写真で、「国連の拠点に避難する人々」というキャプションが付けられている。

先月から始まった戦闘ではすでに1000人以上の死者が出たとされる。国連は3日、同国で約20万人の避難民が発生しているとして、国際社会に1億6600万ドル(約173億円)の支援を要請した。米国は同日、新たに4980万ドルの人道支援を発表した。

記事に紹介されるように20万人もの避難民が発生し、彼等は国連の拠点に終結しつつあるのだ。


自衛隊の窮状は余り伝えられていないので、より状況の切迫した韓国軍の状況について言及していこう。

韓国軍、対立派の妨害受け銃弾補給できず

 内戦の危機にある南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に参加し、陸上自衛隊から緊急に銃弾1万発の提供を受けた韓国軍部隊が、同国政府が送った銃弾を含む追加の支援物資を4日になっても受け取れずにいることが分かった。韓国軍合同参謀本部の話として韓国メディアが報じた。

 [2014年1月4日18時42分]

自衛隊から1万発の5.56mmNATO弾を受け取ったニュースが昨年末騒がれていた。

陸自の銃弾が韓国軍に提供される
屁理屈を捏ねる韓国と、武器輸出三原則の是非
実弾提供に、なんとか理屈をつけたい韓国
自衛隊の銃弾供与に八つ当たりする韓国紙

簡単に掻い摘まんで説明すると、以下のような流れだ。

  • 韓国軍PKO部隊が南スーダンの情勢悪化に巻き込まれる
  • 拠点防衛のためには銃弾が足らないと国連に泣きを入れる(12/22)
  • 米軍より5000発、自衛隊より1万発借りることが出来た(12/23)
  • 韓国政府がこの事態に「日本に借りを作る」とは何事だと怒る(12/24)
  • 直ぐに韓国軍PKO部隊に追加支援を決定(12/25)
  • 韓国軍支援物資が南スーダンの首都ジュバに到着(1/27)
  • 情勢悪化に伴い、未だ韓国軍PKO部隊に支援物資届かず(1/4)

かなり洒落にならない事態だ。

韓国軍PKO部隊は首都ジュバより200km離れたボルという都市に駐留しているのだが、ここが現状でかなり治安が悪い。

韓国軍のベースキャンプは避難民と反政府軍に取り囲まれたような状況なのである。

南スーダン政府 - 反政府勢力、流血終息直接交渉延期

南スーダン政府軍、ハンビット部隊駐留ボルの再進撃準備

(カイロ=聯合ニュース)ハンサンヨン特派員=南スーダン政府と反政府勢力側の交渉代表団が4日(現地時間)流血終息のための直接交渉を行うことにしたが、突然延期したとAFP通信など外信が伝えた。

2014/01/04 18:28送稿

そして、ここにきてまさかの和平交渉延期である。


和平交渉延期を受けてか、更に事態が悪化する。

首都でまた戦闘=南スーダン

 【ジュバAFP=時事】南スーダンの首都ジュバ中心部で4日、激しい銃撃戦が起きた。現場は大統領官邸や議会も集まる官庁街で、砲弾の着弾音や自動小銃の銃声が響いた。南スーダンの戦闘は12月、ジュバで始まったが、その後は比較的平穏な日々が続いていた。交戦の当事者は分かっていない。
 一方、政府軍報道官は4日、ジュバで「わが軍は(東部ジョングレイ州の州都)ボルへ向けて進軍中だ」と語った。反乱軍は逆にジュバへ向けて進軍を開始したと主張しているが、報道官は一蹴した。ボル郊外で激戦が続いているという。(2014/01/05-07:26)

周辺治安の悪化は和平交渉延期の理由でもあるのだろうが、和平交渉がなされなかったことにより事態は更に深刻化している模様。

South Sudan general killed in ambush

その後、政府軍の将軍が戦死するなどの情勢悪化も伝えられており、韓国軍はますます進退を窮しているという状況になっているのだろう。


では、自衛隊は安全か?というと、残念なことにそんなことは無い。

戦闘が激化している首都ジェバがまさに自衛隊が駐留する場所であるので、事態は緊迫した状況になっていると、その様に考えられる。

本日、再び和平交渉が始まると期待されているようだが、現状では和平交渉が上手くまとまることを祈るしか無い。


ここまでで、南スーダンのPKO部隊がかなり切迫した状況にあることは理解いただけただろう。

サヨクの皆さんは、何故自衛隊を撤退させないのか!とお怒りになるかもしれない。無論、こうした声は保守派の中からも聞こえてきて不思議は無い。

 

だが、状況を冷静に考えれば、それは極めて困難な事だと言うことが理解出来るだろう。

割と簡単に尻尾を巻いて逃げ帰る韓国軍が現地に留まっている理由は、周囲を反乱軍に囲まれて安全に撤退する事が困難だ、という理由もあるが、駐留地に2万人以上の避難民が集まっていることも影響している。

自衛隊も状況は似たようなものだ。

首都ジェバは政府軍の勢力が強いので、比較的マシだと言われているが、反乱軍の攻勢は激しさを増しており、今後激戦地域になることは想像に難くない。

しかし、避難民が多数集まってきており、避難民を見捨てて撤退する事は困難である。国連がPKOの撤退を決議して強制的に撤退指示という流れになれば、国際的な批判は免れない。また、撤退指示が仮に出たとしても、避難民をつれて他国に移動、ということはほぼ不可能だし、避難民を置いて逃げることは避難民が足手まといになるという状況になっていることを考えれば、避難民を虐殺して撤退するという選択肢でも採らない限りは相当困難な選択肢といえよう。


つまり、PKO部隊が採れる選択肢は3つ。

  1. 避難民を連れて他国に撤退 → 反乱軍に見つからずに20万人規模の人間を連れて移動することは先ず不可能。
  2. 避難民を見捨てて部隊を撤収 → 国際的な批判は免れないし、事態が公になり次第、政府軍も反乱軍も敵になる可能性が高い。
  3. このまま現地に留まる → 兵力差から考えて、反乱軍に虐殺される可能性が高い。

状況が改善することを祈るしか無いという恐ろしい状況なのである。

無論、政府軍はともかく反乱軍とてPKOに手を出すほど愚かでは無いとは思う。アメリカ軍が全力を出せば、南スーダンを焦土化するのは容易いからだ。

しかし、状況的に手を出されにくいとはいえ、頭に血が上った人間が何をするか分からない。そんな混乱した状況になった場合に、果たしてPKO部隊の安全が確保出来るかどうかは疑問が残るし、戦略的にPKO部隊の一部を巻き込んだ状況での戦闘を行った方が有利に働く状況になれば、危険性はぐっと高まるだろう。

 

一方で、事態打開のために国連軍を組織して武力制圧に踏み切るという選択肢も、あるにはある。だが、これは、現状、現地のPKO部隊が人質にとられている状況になっているので、現地の部隊を見捨てることを意味する。

余程、反乱軍の拠点をしっかり見極めて即時撃破し、無力化しない限りは相当の犠牲を出すことは避けられず、現実的な選択肢とは言い難い。

 

今はただPKO部隊が無事に帰国できるように、状況が改善することを祈るしか無いのだ。

 

追記

自衛隊の環境に関する情報があったので追記しておく。

幸いにも、銃撃戦が行われた場所は、 国連施設からは離れている模様だ。が、事態は予断を許さない。


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