北海道電力、電気料金を苦渋の値上げ

「苦渋でも何でも無い」と断言される方がいるかも知れないけれども、ちょっと考えてみて欲しい。

電気・ガス料金、一斉値下げへ…北電だけ値上げ

2014年08月28日 18時15分
 電力大手10社と都市ガス大手4社は28日、10月分の料金を値下げすると発表した。
10月分の料金値下げ、は、LPGや石炭の価格下落が反映された結果だ。


もちろん、北海道電力だってその恩恵は受けている。だから値下げすべきだ、という意見は出てくるだろう。
平均的な使用量の家庭では、電気料金が月額10~63円、ガス料金が32~43円値下がりする。燃料や原料となる液化天然ガスや石炭の輸入価格が下落したためだ。
電気料金が10円程度下がると、そのぶん一般家庭の家計にとっては恩恵が受けられる。
物価が上昇する中で、住民はそれを喜ぶだろうし、北海道電力だって可能であれば値下げしたいはずなのだ。
 このうち、北海道電力は今回の見直しとは別に、家庭向け電気料金を平均17・03%値上げすると政府に申請し、10月からの実施を目指している。認可された場合、10月分の電気料金は9月分より1142円高い8494円となり、大幅に値上がりする。
だが、北海道電力は、平均17.3%も電気料金を値上げする計画で、政府に申請をしている段階だとか。
無論、政府も簡単に容認はしないのだろうが……。


では何故、北海道電力はそれ程までの電力値上げをしなければならないのか?
答えは簡単である。原発が再稼働できないからだ。

北電再値上げに批判噴出…一般説明会

2014年08月24日
 北海道電力は23日、国に申請した電気料金の再値上げ(家庭向け平均17・03%)について、一般利用者から直接、意見を聞く説明会を始めた。報道陣に公開された同社本店(札幌市中央区)の説明会には約20人が参加し「経営努力が足りない」「家計への負担が重すぎる」などと怒りの声を上げた。
「経営努力が足りない」などと批判されているようだが、北海道電力は値上げ理由をこの様に説明している。
 北海道電側からは渡辺聡・札幌支店副支店長らが出席。再値上げの理由について、泊原子力発電所(泊村)の長期停止を挙げ、「火力発電の燃料費が増え、財務状況が急激に悪化した」と説明し、「原発が運転再開した後には電気料金を引き下げたい」と語った。
分からないよねぇ、こんな説明じゃあ。
メディアの悪意を感じるな。


では、北海道電力の現状をこちらの記事から。

北海道電力、再値上げは年度内に判断 今期赤字770億円

2014/1/31 21:10
北海道電力の川合克彦社長は31日の記者会見で、電力料金の再引き上げについて今年度内に判断するとの認識を示した。泊原子力発電所1~3号機(泊村)の再稼働の遅れが収支を直撃。財務状況は昨年春の値上げ判断時よりさらに悪化している。抜本的な対策をとることができなければ、昨年9月に続く再値上げが現実味を帯びてくる。
 2014年3月期の連結決算は最終損益が770億円の赤字(前年は1328億円の赤字)になりそうだとした。3期連続の最終赤字となる。燃料費と購入電力料の合計が3350億円と震災前の3倍に増える。
こちらが1月の記事。

北海道電、経常赤字42億円=4~6月期


 北海道電力は31日、2014年4~6月期連結決算を発表した。売上高は前年同期比13.7%増の1614億円、経常損益は42億円の赤字(前年同期は158億円の赤字)だった。昨年9月に実施した電気料金値上げの増収効果で赤字幅は縮小したものの、停止中の原発に代わる火力発電用の燃料費負担が膨らんだ。4~6月期の経常赤字は3年連続。一方、純損益は150億円の黒字(前年同期は177億円の赤字)だった。(2014/07/31-13:43)
こちらが7月の記事である。
悲惨さがいまいち伝わらないので、ノビーの解説を。
nwj0730
 東日本大震災のあと、すべての原発が止められたため、LNG(液化天然ガス)の輸入が増え、電力会社は電気料金を上げたが、大幅な赤字が続いている。北電では、次の図のように震災前に比べて燃料費が3230億円も増えたのに対して、料金収入が590億円しか増えていないため、今年3月期には988億円の経常損失を計上した。
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2014/07/5.php
北海道電力の資本金は1,142億円である。ところが経常損失は988億円もあるわけだ。平成22年度も随分とカツカツの状況で黒字だが、原発が停止してからこっち、随分と経常損失が膨らんでいる。
池田信夫氏は値上げが続いている理由をこの様に説明されている。
 なぜ料金を上げても、赤字が続いているのだろうか。その原因は、経産省が原発が動いているという架空の前提で値上げ幅を圧縮したからだ。北電の場合には、今年6月までに泊原発がすべて再稼動することになっていたが、今のところ運転再開の見通しは立たない。
そりゃ、前提として原発が稼働しているって話なんだから、経産省の値上げ幅圧縮の効果が出れば、赤字は垂れ流しになるに決まっている。


ここまで書けばおわかりだろう。
北海道電力は、原発を稼働させる前提で経営基盤を作ってきたのである。
おそらく、利益が出にくい体質なので原発依存度を高めてその体質を改善しようとしただろうと思われる(3号機運転開始は2011年4月頃)。だが、3.11の震災の影響で原子炉はストップ。そして、3.11以降も原発が再稼働することに一縷の望みを託して経営方針を変えていない。
北海道電力が有する発電所は、水力発電所が53カ所で123万8255kW、火力発電所が12カ所で421万3750kW(うち、重油や軽油を用いた発電所が9カ所で196万3750kW)、原発が1カ所で207万kW、新エネルギーが2カ所で2万6000kW、電源調達入札制度で6カ所、24万7400kWといった内訳になっている。
image
グラフにするとこんな感じだ。このうち27%を締める原発は停止中で、維持費だけが延々かかる状態。29%を締める原油や軽油による火力発電はコスト押し上げ要因になっている。
ああ、グラフでは石油・LPGと書かれている25%を締める火力発電だが、実は北海道でLPG発電が始まっていないので、現状では石炭に頼っている状況だ。
それが、こうなる。
ほくでん割合
上のグラフと随分比率が違うじゃ無いかと指摘される方が居るとは思うが、上のグラフはあくまで発電能力の比率を示したモノだ。こちらは発電実績。
ほくでん実績
火力が増えた結果はこの様な感じに示される。燃料購入費が跳ね上がっているのが分かる。
北海道で初のLNG火力発電所、2018年度の営業運転に向けて工事開始
171万kWクラスの石狩湾新港発電所が稼働すれば、燃料費削減の見通しとなるだろう。それでも200万kW以上の発電を賄っている石油火力発電所を代替することは出来ない。


ここで、東京電力のニュースを1つ。

東京電力が4000億円以上も利益を改善、料金の値上げと石炭火力の増加で

2013年度の決算で電力会社の多くが業績を回復させた中でも、東京電力の改善ぶりはひときわ目を引く。売上高が前年から1割以上も伸びて、営業利益は1913億円の黒字になった(図1)。本業の収益力を示す営業利益が4000億円以上も改善したことで、来期以降の経営に明るい兆しが見えている。
面白い記事だが、これ、東電が業績回復したという意味を理解されていない模様。
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グラフだけ見ると確かに業績は回復しているようにみえる。その理由として、石炭火力を増やしたからだと、この記事は分析している。
なるほど、じゃあ、北海道電力も石炭火力を中心に発電していけば良いんだ!という発想になるかもしれない。
それはある意味正しいのだが、重要な点が抜けている。

この辺りを参考にして頂きたいところ。
第1四半期決算概要  PDF版(PDF:188KB)
第1四半期決算短信  PDF版(PDF:896KB)
これ、東電の平成27年度3月期の短期決算報告である。目を通したら違和感を感じられないだろうか?
短期決算だから乗ってこないのは当然とも言えるらしいけれども、「特別損失として、原子力賠償費2,188億円を計上」と、その様に言及されているのみである。
 
「電力会社が黒字化した、喜べー!」「原発は必要なかったんや」と、言われる方は、少し冷静になって頂きたいのである。
 
電力会社は、原発が再稼働する前提で経営を回している。
つまり、現時点において原発を不良債権と見なしていないのである。
これが、再稼働不可、全て廃炉という方向になるとどういうことになるかというと、建設した原発の減価償却の終わっていない原発を保有する電力会社は、一気にその分の赤字が膨らみ、積み立ててあった廃炉費用は一気に全ての原発が廃炉になることを前提に設計されていないので、廃炉費用がドカンと経費に乗ってくる惨状となるわけだ。
 
原発を採用していない沖縄電力くらいじゃ無いだろうか?影響が無いのは。


残念ながら、政府の方針として原発推進が行われ、多くの電力会社が原子力発電所建設を行い、電力供給を行って来たという事実がある。
現状で原発が停止しているということを考えれば、このまま廃炉を選択すれば、電気料金の大幅値上げは避けられない

重油などを用いた火力発電を多く採用して居る電力会社は、現状でも黒字化の目処は立っていない。そのことは北海道電力が如実に示している。
更に、重油などを用いた火力発電が1979年5月に日本国内での石油火力発電所の建設禁止が採択されてから、一基も日本国内では発電所が建てられていない。
即ち、石油火力発電所は、既に運転開始から40年以上(最低でも30年以上経過)を経過した発電設備ばかりになっていることを意味する。老朽化により効率が落ちていることに加え、いつ止まってもおかしくないような設備が多いのである。

一見、日本の電力事情は安定しているようにみえるが、その実、危ういバランスの上に成り立っているのである。
特に、北海道電力は原発再稼働は死活問題だろう。

「人件費を削れよ」と言っている人を見かけるが、上のグラフで分かるように北海道電力の人件費は580億円程度だ。当然、これをゼロにすることは働く人が居なくなることを意味するので出来ないが、出来たとしても赤字は埋められない。
実際、役員報酬を削れ、ボーナスを出すなとか色々いう人がいるが、人件費は1割も削れれば良いところで、それをやってもなお60億円程度の資金しか捻出できない。900億円の赤字の前には焼け石に水である。

泊原発だけでも再稼働できれば、207万kWの電力が、とは言わないが100万kW程度の電力が確保出来るのである。
石油火力発電で生じる赤字を半分以上圧縮可能ということだ。

いつまでも再稼働が許可されないからこんな始末だが、やれやれと言った感じ。
北海道電力は、各社一斉に値下げを決める中、唯一電力料金の値上げを決定した。批判を受けるのは火を見るより明らかである。
それでも、値上げせざるを得なかった事情が、巨額の赤字の存在なのである。


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