トルコがロシア戦闘機を撃墜、そして……

トルコ軍がロシア軍機を撃墜するとんでもない事件が起こったのは24日のことだ。

ロシア外相 「トルコと戦うこと考えず」

11月25日 22時12分
ロシアの爆撃機がトルコ軍に撃墜されたことに関連して、ロシアのラブロフ外相は25日、記者会見で「トルコと戦うことは考えていない」と述べ、これ以上、軍事的な緊張が高まることはないと強調しました。
取り敢えずはロシア側が矛先を納めるような発言をしたようだが……。


この話はどう記事にしようか迷っていた。
経緯から簡単に説明しよう。

トルコ機がロシア機を撃墜 緊張高まる

11月24日 22時55分
内戦が続くシリアと隣国トルコとの国境付近で、トルコ軍が、ロシアの爆撃機を領空を侵犯したとして撃墜しました。ロシアのプーチン大統領が「ロシアとトルコの2国間関係に深刻な影響を与えるだろう」と述べるなど緊張が高まっています。
トルコ軍によると、シリアの国境付近で国籍不明の軍用機が領空侵犯をしたとして撃墜。これが現地時間で24日の9:20頃の話である。
そして、撃墜されたのがロシア軍所属のSu-24だと言うことが判明する。
Sukhoi_Su-24_inflight_Mishin-2
Su-24「フェンサー」は戦略爆撃機であり、西側の機体でいうとF-111「アードバーク」やトーネードIDSといったクラスに若干劣る性能だと言われている。


トルコ軍が使ったのはF-16だということなので、Su-24相手ならば鴨撃ちレベルだったと思われる。

ただ、トルコ軍にしてみれば、ロシア機が頻繁にトルコ領空を侵犯するので、業を煮やしていたということもあるようで。
トルコのダウトオール首相は24日、「たび重なる警告にもかかわらず領空を侵犯されれば、トルコにはそれに応じる権利がある」と述べ、撃墜は当然の判断だと強調しました。
もちろん、ロシア側は領空侵犯を否定している。

ロシア「領空侵犯していない」 外相会談拒否

11月26日 4時44分
ロシアの爆撃機がトルコ軍に撃墜された事件で、ロシア側は「領空侵犯はしていない」などと改めて反論したうえ、トルコとの外相会談を拒否するなど強硬な姿勢を示しています。
だが、仮に領空侵犯していたとしても、同じ作戦に従事しているはずの軍同士がなぜ衝突するのか、と言う話になるのだが……。


これはNATO側の事情とトルコの事情が色々と複雑に絡んでいるようだ。

シリア大統領、トルコ、サウジアラビア、カタールはISISの裏庭

2015/11/22(日曜) 23:14
シリアのアサド大統領が、トルコ、サウジアラビア、カタールはテロ組織ISISの裏庭だとしました。
アサド大統領は、22日日曜、香港フェニックステレビのインタビューで、「トルコによるISISへの支援は、サウジアラビアとカタールの協力によって行われ、彼らはISISのために裏庭を作っている」と強調しました。
また、「ISISのメンバーは、トルコのエルドアン大統領とダーヴトオール首相の支援を受け、トルコからシリアに入っている」としました。

シリアの大統領、アサド氏の発言を信用するべきかは悩ましいところだが、トルコはアサド氏の退陣を要求する立場にあり、シリアとは対立している。
当然、シリアを支援するロシアとも対立する立場にある。
シリアではロシアがことし9月から空爆に乗り出しましたが、トルコ政府は、ロシアによる空爆が過激派組織ISだけでなく、アサド政権と戦う反政府勢力も標的にしていると懸念を示し、シリアとの国境付近でロシア軍による領空侵犯を非難していました。そのうえで「何か発生した場合は、責任はロシア側にある」と警告していました。
こうしたなか、先月16日にはトルコ軍がシリアとの国境に近い領空内で国籍不明の無人の偵察機を撃墜しましたが、ロシア側は、撃墜された無人機はロシアのものではないと否定していました。
トルコは有志連合の1国として、アメリカやフランスなどと共に対ISの空爆に参加していて、シリアの内戦についてはアサド大統領の退陣を最優先に求めています。
つまり、ロシアのシリア爆撃に関して、トルコとしては気に入らないのである。


そもそも、この撃墜事件、色々と計画的に行われた節がある。

ロシア、トルコによる戦闘機撃墜を「計画的」と批判

2015 年 11 月 26 日 10:07 JST
 トルコがシリア国境上空を飛ぶロシア戦闘機を自国の領空を侵犯したとして撃墜した問題で、25日は両国首脳が相互に厳しい警告を発するなど緊張が高まった。
~~中略~~ 
 ラブロフ外相は、撃墜が「計画された挑発」のように見えると述べたが、ロシア政府が両国関係を見直したとしてもトルコの民間企業の従業員や市民が「作為的な問題」に遭遇するようなことはない、と述べた。


トルコ側は否定しているが、公開された写真は、Su-24が撃墜されるまでを連続的に撮影している。
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更に、パイロットが脱出している様子が分かるが、このパイロットは攻撃を受けて死亡。
救出に向かったロシア軍ヘリも攻撃を受けて破壊されている。

救出に向かったロシア軍ヘリも攻撃受け破壊

11月25日 11時12分
内戦が続くシリアと隣国トルコとの国境付近でロシアの爆撃機がトルコ軍に撃墜され、救出に向かったロシア軍のヘリコプターも武装勢力の支配地域から攻撃を受けて緊急着陸し、破壊されました。ロシア軍は、これまでに合わせて2人が死亡したことを明らかにしました。
このロシア軍ヘリを撃墜したのはシリア領内の自由シリア軍だという事が報道されているが、ややこしい事に自由シリア軍はNATO側からの支援を受けており、ロシア軍のヘリコプターもアメリカ製の対戦車ミサイルTOW(BGM-71)で破壊されたという報道がなされている。
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ちなみに、自由シリア軍はNATOが支援をするほかにトルコも直接支援しており、トルコ国内で戦闘員が訓練を受けるなどの関係にある。

また、トルコ軍は警告の録音音声を公開しているが……。
トルコ軍は25日、撃墜したロシアの爆撃機に対して行った警告を録音したものだとする音声を公開しました。
この中では、英語で「こちらトルコ空軍」と名乗ったうえで、「トルコの領空に近づいている。直ちに南へ進路を変更せよ」と警告しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151126/k10010319701000.html
ロシア側からは警告は無かったと言う主張がなされている。
 トルコ政府は5分間に10回の警告を発したと主張しているが、特殊部隊によって救出された操縦士のコンスタンチン・ムラフチン氏は、シリア領内のロシア軍基地でロシアの記者らに対し、「無線での警告も、視覚的な警告もなかった。通信は一切なかった」と説明。同機はトルコ領空を侵犯していなかったというロシア側の主張を繰り返した。
http://www.afpbb.com/articles/-/3068054
ロシア軍機のフライトレコーダー的なモノが公開されれば、明らかになりそうなものだが、トルコ側からの主張だけでは100%信用してイイモノかどうか。
寧ろ、自由シリア軍と連係してロシア機を撃墜し、そのパイロットを射殺したと言われても不自然な点は無い。無論、その証拠も無いが。

ああ、やっぱり面倒な事になりそうである。
取り敢えず、ロシアはトルコに対して戦争を吹っ掛ける気は無さそうだが、「制裁をしない」とは言っていないので、経済的な嫌がらせくらいはやるだろう。

ロ軍機撃墜 トルコと真っ向対立 ロシア「経済制裁」の構え

2015年11月26日 朝刊
 【カイロ=中村禎一郎、モスクワ=常盤伸】トルコによるロシア軍機撃墜で、ロイター通信によるとトルコ政府は二十四日、国連安全保障理事会への説明で、ロ軍機二機がトルコ領空を侵犯して一マイル(一・六〇九キロ)以上を十七秒間飛行したと主張した。一方、搭乗していた乗員二人のうち一人が二十五日、救出され、「トルコ軍は警告なしに攻撃した」と記者団に証言。ロシアは、従来通りの空爆を継続するとともにトルコに事実上の経済制裁を発動する構えを示した。両国の緊張が高まっている。 
そんなニュースも出ているしな。まあ、ソースが東京新聞だからあてにならないかもしれないが。
トルコがNATOに泣きついてさっそくロシア側に圧力をかけさせている辺り、トルコも随分としたたかである。

ロシア軍機撃墜:NATO、露に警告「トルコ領侵犯」確認

毎日新聞 2015年11月25日 11時54分(最終更新 11月25日 15時00分)
 【ブリュッセル斎藤義彦、ニューヨーク草野和彦】トルコの戦闘機がロシアの戦闘爆撃機を撃墜したことを受け、北大西洋条約機構(NATO)は24日、加盟国トルコの要請で緊急理事会を開き、ロシア軍機がトルコの領空を侵犯したことを確認し「トルコが領土(領空)を保持することを支持する」と、ロシアに警告した。ストルテンベルグ事務総長は露トルコの直接対話による緊張緩和を求めた。
まあ、役立たずにも書簡を送ったようだが。
 一方、トルコのチェビック国連大使は同日、国連安全保障理事会と潘基文(バンキムン)事務総長に書簡を送り「国籍不明のスホイ24戦闘爆撃機2機」が自国領空を侵犯したことから1機を撃墜したと説明し、自国の対応は正当だったと主張した。



正直、ロシアもトルコもどっちもどっちだという感じはするが、問題は、この話はロシアとトルコの2国間の対立という構図では無く、複雑な利権が絡み合った中東情勢特有の話ということだね。

シリアを舞台に国際的な戦争をやっているようなもので、シリア国民からしてみればたまったものではない。

そして、この事態に日本はどういう立場を採るのか、と言う話。
正直、どちらの陣営にも正義は無いのだが、「アメリカ側に付くのが日本の正義」という話になっては、何にも考えていない行動として非難されるだろう。
正義では無く国益を求める、それが正解だとは思うんだけど、どうするんだろうねぇ?安倍政権は。

追記

こ、攻撃しないって言ったよね?

ロシア軍、トルコの救援車列を空爆か=トルコメディア

Fisco | 2015年 11月 26日 14:04 JST

トルコのアナドル通信社はきょう26日、ロシア軍がシリアとトルコ国境地帯で走っていた救援物資を運ぶ車列を空爆したと報じた。また、現地の過激派やトルコの人道団体IHH(人道支援基金)からも同様なニュースが伝われた。

~~中略~~

ただ、現時点ではロシア軍が空襲した証拠をまだ掴んでいないという。

うんまあ、ロシア軍の犯行の可能性は高いよね。

ただし、トルコ国境地帯を走っていた「救援物資を運ぶ列車」というのは、本当に「救援物資」なのかという疑いはある。

トルコと戦争をする気は無いとは言ったが、テロ組織を支援する体制を攻撃しないとは言っていない。



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コメント

  1. 露土戦争(100年ぶり13回目)

    冗談はさておき墜落して亡くなったパイロットの写真や機体の前で撮られた記念写真まで撃墜してから半日も経たない内に出回るというとんでもない事態でしたからね……
    いつまでこの事件の余波が続くことやらと思ったらロシアは新鋭の対空ミサイル部隊を送り込むという始末
    横流しされたら被害に遭う確率が高いイスラエルが泡食って交渉にはいるとかエライことになって参りました

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    1. いや、露土戦争は本当に冗談じゃなくなってきた気がします。
      表面的にはロシアから仕掛けることはなさそうでしが、明らかに誘ってます。トルコが誘い出されれば酷いことになりそうな……。

      シリア問題は一体何処に着地するのやら。

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