慰安婦問題は決着するのか?

多くの保守派層は今回の「決着」を信じていないだろう。

首相、保守派の批判覚悟で慰安婦問題の合意推進

2015年12月29日 09時47分
安倍首相は、自らを支えてきた自民党内の保守派などから批判を浴びることを覚悟の上で、慰安婦問題での合意を推し進めた。
そして、今回の件は些か事が性急過ぎた様に思われる。
更にその内容についても評価が非常に難しい話となってしまった。僕自身、どう答えを出したものかと悩むうちに、記事は年を越してしまう始末である。


さて、気を取り直して行こう。

多くの人がご存知のように、12月27日の日韓外相級会談で、合意文書すら無しで話し合いが終わった。異例の外交である。

日韓外相、質問なしで合意発表…文書作成見送り

2015年12月28日 21時14分
【ソウル=森藤千恵】岸田外相と尹炳世ユンビョンセ外相は28日の会談後、慰安婦問題の合意を並んで表明したが、会談の正式な合意文書はなく、記者からの質問も受け付けない異例の形式となった。
その結果、日本側は10億円を失ったうえで、過去の英霊の顔に泥を塗っただけ。
韓国側はゴネ得で外交的勝利を得たのだ……。

そんな感じの評価が多いように思うが、現実的にはそんな簡単な話でもないようだ。

それに、今回の話はあまりに急ぎすぎた感じを受ける。



合意の内容はこんな感じだった。

日韓外相会談 慰安婦問題で最終的解決を確認

12月28日 16時17分
~~略~~
この中で、岸田外務大臣は「慰安婦問題は、当時の軍の関与のもとに、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している」と述べました。そのうえで、岸田大臣は「安倍総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と述べました。
さらに、岸田大臣は「日本政府の予算により、すべての元慰安婦の方々の心の傷をいやす措置を講じる」としたうえで、韓国政府が設置する財団に日本政府の予算でおよそ10億円の資金を一括して拠出し、「日韓両政府が協力し、元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しのための事業を行う」ことで合意したことを明らかにしました。
そして、岸田大臣は、両政府間でこうした事業を着実に実施するという前提で、この問題が「最終的かつ不可逆的に」解決されたと確認したことを明らかにしました。また、日本政府として、韓国政府とともに、国連など国際社会で慰安婦問題を巡って互いに非難・批判することを控える考えを示し、今回の合意について、「日韓首脳の指示に基づいて行った協議の結果であり、これをもって、日韓関係が新時代に入ることを確信している」と述べました。
一方、ユン外相は、元慰安婦への支援事業が着実に実施されることを前提に、日本政府とともに、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べたうえで、日本政府の実施する措置に協力する考えを示しました。
また、ユン外相は、ソウルの日本大使館の前に設置された、慰安婦を象徴する少女像に関して、「日本政府が、大使館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行うなどして、適切に解決されるよう努力する」と述べました。

これが内容のすべて。
そして、それは文章化すらされずに合意したというのだから、いったい何をしてきたのか?と、個人的には岸田氏に文句を言いたいところである。



この合意のポイントはいくつかあると思うが、簡単に整理してみよう。

<アメリカの関与>
まずは、今回の騒ぎがアメリカがバックにいる話だという点だ。
もちろん、そうした話は公式にはアメリカとして認めているわけではない。

米政府 韓国系団体に活動の自制呼びかけ

12月30日 9時52分
日本と韓国が慰安婦問題の最終的な解決で合意したことを受けて、アメリカ政府は、アメリカ国内で慰安婦を象徴する銅像の設置などを推進してきた韓国系の団体も、合意を尊重して活動を自制するよう呼びかけました。

合意後、すぐに歓迎する声明を出し、連日のように色々なコメントが出てくるあたり、間違いなく日米韓の連携強化を図るといった目的での政治的決着を図るように要求した疑いが強い。

そして、内容はともかく合意に達した、という急がせっぷりから、相当に強力な圧力がかけられていた疑いがある。

一部報道ではそうした事実はないという火消しもなされているようだが、状況的には非常に怪しいといえるだろう。



<韓国側が窮地に立っている>
そして、意外に思う人も多いかもしれないが、この合意と前後して韓国政府は窮地に立たされている。

「これ以上の合意無理」=慰安婦問題で理解求める―韓国大統領府

時事通信 2015年12月31日(木)15時14分配信

【ソウル時事】韓国大統領府は31日、慰安婦問題をめぐる日韓合意に関して国民向けメッセージを発表し、「合意を受け入れず、白紙に戻せと言うなら、政府には元慰安婦の存命中にこれ以上何もする余地がないということを分かってほしい」と理解を求めた。

合意内容だけを見れば、韓国政府は「努力目標」だけを示せば10億円手に入れられるような内容であった。
しかし、韓国国内の世論の支持を得ることは出来ず、大統領府から「これ以上の合意は無理だ」というコメントが出る始末。

「慰安婦」日韓合意 「合意破棄論」も 朴槿恵大統領になお逆風 警察が抗議の学生ら30人が連行

産経新聞 2015年12月31日(木)19時25分配信

【ソウル=名村隆寛】慰安婦問題で最終決着したとする日韓の合意に元慰安婦や支援団体などが強く反発するなか、韓国メディアからは「合意破棄論」さえ出始めている。韓国大統領府は31日、国民への談話を発表し、「合意を受け入れられなければ、慰安婦問題は(韓国で問題が表面化した)24年前の振り出しに戻る」と危機感を示し、国内世論の説得に努めている。

日本大使館が入るソウル中心部の建物に31日、学生約30人が侵入して抗議活動を強行した。警察関係者によると、学生らは玄関付近で合意拒否を示す紙を掲げ、数人が領事部がある階に上がり、壁などに抗議を訴える紙を貼った。学生らは警察に連行された。
一方、韓国世論は、大沸騰。
こんな日本大使館の入っている建物に学生が侵入して抗議活動をするような始末である。

日本大使館が襲撃されるような状況では、もはや日本は韓国との正常な国交すら維持できる状況にないのだが、そういえばアメリカは在韓大使がナイフで襲撃される事件もあったし、韓国では大した話ではないのかもしれない。

この他にも、「政府が勝手にやったことだ」と、野党が反発して合意を無かったことにしようとする動きも活発である。

韓国国内では今回の合意を評価する向きもあるようだが、反日を是とする国内感情は、そうした存在を許しはしない。
何故か、「大統領府の前にも慰安婦像を作る。いや、世界中に作りまくる」とか意味不明なことを言い出す団体もいて、収拾がつきそうにない。



<基金を韓国側が設立するということ>

ただ、今回の合意は岸田氏の発言の中にあった「韓国政府が設置する財団」というのが1つのポイントである。

救済事業は日韓合同で行われ、韓国政府が財団を設置する義務が課せられているのだ。

実は、この他にも在韓日本大使館前にある慰安婦像の撤去なども実質的な前提条件となっていると報道されている。
まあ、ウィーン条約違反なので、撤去するのは当然なのだが、この像の撤去は、すなわち挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)の敗北を意味する。
慰安婦問題は、日本政府と挺対協の対立という構図が長く続いていたが、日本政府は対韓国政府という構図に引き戻した。
そして、挺対協と韓国政府という対立構造に変わったのである。

尤も、「像の撤去が基金設立の前提」という話は、あくまで日本側の報道であって、その根拠がどこにあるのかは怪しい話ではある。
しかし、基金設立そのものに対しても挺対協は批判的である。故に、韓国政府がいかに挺対協を説得できるかが、今回の合意が実現できるかのポイントとなっており、それはほぼ実現不可能な話。

つまり、その点でこの合意を韓国政府が履行する能力が無いといって差し支え無いだろう。少なくともクネクネにとっては無理だ。



<国際的に日本の信用が落ちている現実>

一方、日本政府にとっての大きな誤算は、今回の出来事が韓国のロビー活動などによって大きく歪められて、ニュースとして伝えられている点だ。

Coming to Terms on Japan’s Wartime Sex Slaves

By THE EDITORIAL BOARDDEC. 30, 2015

The landmark accord announced Monday between Japan and South Korea over the use of sex slaves by Japan’s army before and during World War II is unlikely to end all debate over Japan’s horrific behavior at the time.
NYタイムスなどは、見出しに「Sex Slaves」という言葉を使い、安倍氏が戦争責任を認めたという報道をしている。

慰安婦問題合意、NYタイムズが「画期的」と評価

ニューヨーク=中井大助2015年12月31日18時31分
米紙ニューヨーク・タイムズは30日付の社説で、慰安婦問題に関する日韓の合意を「画期的だ」と位置づけ、「二国間の関係を悪化させてきた問題を終わらせようとする、安倍晋三首相と朴槿恵(パククネ)大統領の双方が評価されるべきだ」と述べた。
朝日新聞などは、このNYタイムスの記事を「画期的だ」と評価しているような感じで記載しているが、現実は違う。
そうした下りがあるのは事実だが、大筋、日本が頑なに認めなかった戦争の法的責任を認めた。性奴隷は居たのだ、という報道内容になっている。

イギリスやフランスでも似たような感じで誤報が跋扈している。
こんなのを政府が許している辺りが既にもうどうしようもない。



<総合的に見て辛勝か痛み分けといった状況>

結局、「軍の関与」を口にした岸田氏に批判は集まり、政府の予算から10億円も出すなどという構図にしてしまった点は、相当の妥協、日本側の後退を意味する。
あるいは、それは大きな失策と言えるだろう。

人によっては、河野洋平以上の売国奴といって憚らないのだけれど、そうなる可能性が十分あることは僕も否定できない。

状況は今尚流動的なのだ。

ただ、安倍政権は「最終的に」「不可逆的」に「解決された」という言葉をもぎ取った。

ここで、合意が破棄されない限りは、韓国にとってこの問題を日韓関係の問題として提起することはできなくなるし、国際的にそうした内容の「告げ口外交」をすることもできなくはなった。

その点は評価に値するだろう。



<しかし合意は実施されないだろう>

ただこの話、僕は韓国が合意を誠実に実行して日韓関係改善に向かうという、未来を迎えられるとはどうしても思えない。
保守派の多くもそう思うからこそ、安倍政権を批判しているのだと思う。

だとすると、シナリオは2パターン考えられる。

1つは、韓国がゴネを再開して合意は有耶無耶になり、日本が一方的に損をするパターン。
このケースでも日米間の安全保障の関係はそれなりに改善していく可能性があるだろう。ただ、安倍政権は斃れ、自民党も瓦解するという状況を迎えかねず、それは日本国民にとっては相当な試練となる可能性が高い。そうなると、日本国民の韓国に対する感情は更に悪化するだろうし、今後、韓国との関係を改善しようとする政党が支持されることも無くなるだろう。

もう1つは、韓国が合意を実行できずに合意が破棄されるパターン。
クネクネが政権を維持できず、野党が政権を握って合意を破棄するという可能性はかなり高い。
ただその場合は、韓国が国際社会から「合意すら守れない国」というレッテルを貼られ、韓国人にとっては耐え難い屈辱を味わうことになるだろう。



何れのパターンでも、日韓関係は絶望的な上、米韓の関係もかなり大きな歪が生まれる可能性が高そうだ。
韓国政府はより一層支那に傾倒するしか道はなくなるのだが……。韓国にとって支那を経済的な支援相手に選ぶことは非常にリスクが高い話だ。

何しろ、韓国が窮乏している時、支那は韓国ごときに経済的な支援を差し出せるほどの余裕がある状況にない。言わば、支那と韓国とは一蓮托生の状況にあり、支那にとって韓国はまっさきに切り捨てるべき相手なのである。

コウモリを気取って、どちらにもいい顔をしようとしている現状でこそ、支那にとって韓国の存在価値はあるのであって、完全に支那側になってしまえば、それは北朝鮮となんら変わらない。そこに支那が価値を見出すかどうかはかなり怪しいと思う。

そうなると、慰安婦問題は一人歩きをして手のつけられない怪物に成長する可能性が高い。かつて、ドイツがナチスを糾弾し、「絶対悪」に仕立て上げてしまったが為に、欧州ではヒトラーを評価することすらできない状況になっている。
……韓国国内では慰安婦問題は同様の状況といえるかもしれないが。

その結果、決着などあり得ない、なんて状況となり、日本は未来永劫この問題に苛まれることになるだろう。




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