ご譲位が可能な法整備は必要なのか?

政府が天皇陛下のご譲位のお気持ちを受けて、法整備の検討を始めるようだ。

<生前退位>特別立法軸に検討 政府、制度化を避け

毎日新聞 8月11日(木)8時0分配信
 政府は、天皇陛下が生前退位の意向がにじむお気持ちを表明されたことを受け、現在の陛下に限る特例として退位できる特別法の制定を軸に検討を始めた。皇室典範改正で永続的な制度とした場合、皇太子さまも含めた将来の天皇にも退位を認めることにつながり、象徴天皇の地位が不安定になるとの見方も出ているためだ。世論の動向や近く設置する有識者会議などを参考にしながら、調整を進める。
議論の必要性があるのは僕も認めるところだが、今回は法整備の必要性について考えていきたい。



この話が出てきたのは、ちょっと前の天皇陛下のお言葉の話があってからだ。
お言葉に関して僕が口を挟む必要はないと思うので敢えて解説はしなかったが、ご譲位のお気持ちがにじみ出ている事自体は事実だろう。
その上で、憲法4条に抵触しないように慎重に言葉を選ばれた様に感じた。

つまり、天皇陛下の意向が政治を動かすようなことがあってはならない、と、そういうわけだ。

「生前退位の意向」なぜ否定? 憲法上の天皇の立場考慮

2016年7月14日22時35分
 「生前退位」の意向を天皇陛下が周囲に示したことについて、宮内庁の風岡典之長官は14日の定例会見で「天皇陛下が具体的な制度について言及した事実はない」と否定した。
実際に、宮内庁は「天皇陛下が具体的な制度について言及した事実はない」と否定している。これは憲法を踏まえてのものだ。

だがしかし、恐ろしいもので国民の殆どはこのお言葉を受け入れ、そして譲位が可能な法制度を整備すべきだというふうに感じている。



日本のマスコミは恣意的にこの問題を取り扱っているようで、色々な議論が巻き起こるのと同時に少しずつ独自の意見を紛れ込ませてきているようだ。

さて、そうしたマスコミへの批判をする前に、このブログで「生前退位」という言葉を使わず「譲位」という言葉を使っている辺りに言及しておきたい。
「退位」とは、君主がその地位を手放す事を意味する。「即位」の対義語として定義されているのだが、本来、「退位」という言葉は君主の死によって承継される場合には使われない
一方、「譲位」とは、君主がその地位を生きているうちに後継者へ譲り渡す行為をいう。一見「退位」と何ら変わらないじゃないか、と思うのだが、そこに「君主の意思」があるかないかが異なる。「退位」の場合は位を退く、つまり後続のことを考えていないことになる。なお、「譲位」の場合は、世襲を原則とした地位の継承の事を指し、世襲でなく有能な者に地位を譲ることを「禅譲」という。



何が言いたいかというと、天皇陛下が「退位」なされた後、次の天皇が決まらない、つまり天皇制度が廃止されるケースを含んでいるのが「退位」という言葉であり、「譲位」は必ず世襲によってその地位を継承する者がいるケースで使われるということだ。

この一点を考えても、マスコミの意図が透けて見える。
ちなみに「生前退位」という言葉だが、上述の内容からすれば二重に失礼にあたると思う。何しろ、「退位」は生きている間に行われるものであり、天皇陛下が崩御なされた場合には「退位」することなく、次期天皇が「即位」されることになる。
となると「生前退位」という概念は一体どんな時に生じうるかだが、天皇陛下が「譲位」をなされ、上皇となられた後に崩御された後に使われる言葉となる。
失礼な話ではないか。天皇陛下はまだ健在であるにも関わらず、そのような言葉を使う事自体が。



さて、冒頭の記事に戻るが、政府は特別立法で対応しようとしているようだ。
 安倍晋三首相は周辺に「現在の陛下に限った制度を考えている」との趣旨を漏らしているという。
本来、「譲位」という制度は望ましくない結果を生みやすいとされている。
つまり、「上皇」という存在が実権を持った場合に権力の混乱が生じ易いことと、本来「退位」の必要のない天皇がその地位を退くというケースが生じうることがあり、日本国憲法もこれを懸念して「退位」が可能な法律構成にしていなかったのだと言われている。

 憲法2条は皇位について「皇室典範の定めるところにより」継承すると定めている。現在の典範には退位規定がないため、生前退位を実現するには「天皇が崩じたときは、皇嗣(継承順位1位の皇族)が、直ちに即位する」と定める典範4条の改正が必要になる。
故に、条文を素直に読めば、皇室典範の改正か憲法の改正の何れかを選ぶ必要があるわけだ。



ところが、政府はどうやら特別法で対応する事を検討しているようだ。
または1代限りの退位をできるようにする特別法でも可能で、政府関係者は「特別法も事実上、典範の一部だとみなせば、憲法2条と矛盾しない」と話す。
確かに皇室典範の特別法を作ることに関して規定があるわけではない。しかし、憲法でわざわざ「皇室典範の定めるところにより」と直接的な記載となっていることを考えると、皇室典範の特別法の存在を許容しているということは考えにくい。

やろうとしていることは、憲法9条の解釈によって自衛隊の維持をすることと大差ないのである。
つまり、サヨクはここで反対しなければ嘘なのだが……、共産党を始めとして、野党の皆さんはこの件については今のところ言及が少ない。
まあ、憲法改正か皇室典範の改正という難しい話に首を突っ込まねばならないことを考えれば二の足を踏むのは仕方がない部分はあると思うが……。



さて、そろそろタイトルの疑問について言及していこう。

一応、安倍政権もこの問題には慎重に取り組む姿勢を見せているが、しかし、今回限りの特別立法を行うということは、天皇陛下のお言葉を斟酌して今生天皇の意向のみを反映するという、即ち天皇陛下の政治関与を認めかねない話になる。
僕はそれが正しいとは思えない。

天皇陛下はシステム上の問題を指摘されたのであって、そのお言葉はお言葉として理解する必要があろうが、だから何があってもこれに対応する必要があるという判断をするのは違うと思う。
システムは必要に応じて改善すべきではあるが、一時しのぎな対応をしても仕方がない。全体を見通して最善と思える手法を確立していくことこそが必要だと思う。
つまり、議論は大いに結構だが、今、何が何でも法整備が必要という流れは、おかしいと感じている。
皆さんはどう思われるだろうか?


ランキングへの応援クリックよろしく!
人気ブログランキングへにほんブログ村 ニュースブログ 時事ニュースへ

コメント

  1. あるけむ(R.K.M) @fwbc19652016年8月12日 8:12

    個人的には、憲法および皇室典範の改正をすべきと考えます。

    「譲位」は、陛下のご意思を無視できないと考えます。そのため、国事行為として「譲位手続きの開始の宣言」を憲法に追加すべきじゃないかと考えます。
    ただ、譲位手続きを乱用されないように、譲位は国会の議決を必要とし、そのことも憲法に明記すべきと考えます。国事行為は「内閣の助言と承認」が前提なので、これで内閣や国会の暴走は防げると考えます。
    (国民投票が必要かどうかは、よく分かりません)

    この対応の最大の問題は、(第9条改正阻止のため前例を作らせないように)憲法を「人質」に取っている連中がいることですね。

    特例法での対応は、憲法第九十八条(法律に対する憲法の優越)に違反する気がするのですが...

    返信削除
    返信
    1. 現実的には皇室典範の改正というのが一番理にかなっていて、その為には十分に議論を尽くす必要があると、そのように感じています。
      過去にも譲位絡みで様々なトラブルが合ったと聞き及びますが、現状では「象徴」としての位置づけが強いために、今生天皇が上皇の地位に移られた時に、どういった扱いが必要なのかということを定めてある必要があると思うのですよ。
      現状の憲法にせよ皇室典範にせよ、上皇の地位が存在すること前提にした設計になっていないので、そのあたりを全面的に見なおす必要があると思います。
      そうであるならば、やはり特別法での対応はマズイだろうと、そう思いますよ。

      削除
  2. >今、何が何でも法整備が必要という流れは、おかしいと感じている。
    一般論としてはそうでしょうけど、しかし、
    では、政府のこれまでの対応はどうであったか。
    (特に野田内閣は放置したとかとかどうとか)
    国民の代表でもある政府の側がこれまで問題点に十二分に対応してきたのならともかく、
    重いお務めを果たされている陛下が、不本意ながらもさすがに声を上げられたのに対し、問題点に対応どころか知らぬふりを決め込んでいた臣民の側に、「天皇の政治関与がー」などという資格はない。
     政治関与につながりかねないお言葉が出たことの自分たちの不明をまずは恥じるべきでしょう。
     次に、>一時しのぎな対応をしても仕方がない
    これも確かにそうなんですがね、しかし、正邪を議論することと、国民の間で諍いが起こることとは違う。天皇に関することですから、正邪を厳密に議論する一方で、現実的対応として、妥協とか折衷案とかその場しのぎとかエトセトラ、の曖昧な対応・・・と、それらと正反対の厳格な原理主義的行動と、天皇とは、似つかわしくないんですね。ですから、
    一時しのぎな対応を何度か繰り返し、そして、皇室典範の改正等に至ったとしたら、それはそれで長い歴史の中では、「誤差の範囲」なわけですね。恰好悪い対応の仕方ですけど。(これが例えば『女系天皇』などというものになると論外で、誤差の範囲などではない) 
     その点を踏まえた上で、一時しのぎな対応に一応の理解を示しつつも、理想を言うなら、本来は皇室典範の改正等、きちんと行うべきではあるでしょう。
     まして陛下は自分の身のことはさておいて、システム的な問題点を上げられたわけで、それに対して、一時しのぎな対応をするのは、実は最悪といってもいいぐらい。
     「一時しのぎ」自体は極めて日本的で、情けないながらも理解はできたりするのですが、しかし今政府の考えてる「一時しのぎ」は、ちょっと違う気がする。
     >本来、「譲位」という制度は望ましくない結果を生みやすいとされている。
     ここですね。
    青山繁晴氏などは、譲位が政治利用される懸念(特に外国勢力)から一時的な特別法にすべきという考えのようです。
     それは、確かに一理あるんですが、しかし、
     法律が規定して、天皇が存在するのでなく、天皇が存在して、法律が追認しているわけですね。
     国家の都合があって天皇があるのでなく、天皇がまず存在して、国家の都合はその後にくるはずです。一応の順番としては。
     そして、譲位というのは確かに政治利用されてきたんでしょうけど、一方で、老いた人間が、
    引退するというのは、いわば自然の摂理なんですね。
     政治利用されつつも、じゃあ、譲位を廃止しようとならなかったのは、それなりの理由があったからでしょう。
     それが近代の天皇においては、国家の都合上、廃止された。
     その結果がどうであったかというと、一つの答えが、昭和天皇の最期だったわけですね。
     あれでよかったのかどうか。
     政治利用されるとまずいので、譲位をなくそう、というのは国家の都合ではそうなるわけですが、それを生身の人間に求めることの無理があるわけです。
     だからまず、譲位を認める。その上で、政治利用されない方策を考えていく、という視点が欠けていると思えるわけです。
     わかりやすい話が、憲法九条ほったらかし、スパイ防止法作ってない、マスコミは偏向報道し放題・・・等の状況をそのままに、「いや譲位が政治利用されるとまずいので、譲位は基本認めない方向で」って、自分たち何もしてないじゃん。それはダメでしょう。

    返信削除
    返信
    1. 色々とありがとうございます。

      舌足らずでしたが、僕としては「譲位」ができるようにすることや「上皇」の存在を許容することそのものに対して反対したいと思っていません。
      よって、暫定的な特別法で対応して今回だけの特別措置だとする、というのはあまりに場当たり的すぎると思うのですよ。
      天皇陛下のお言葉は重いし、ご譲位される意思というのは尊重されるべきだと思います。しかし、僕は敢えてお言葉を出した背景には、天皇陛下の立場からの視点があまりに疎かにされる傾向にあるために、その見方を示されたのだと、そのように判断しています。
      よって、長期間にわたって運用可能なしっかりとした方向性を示し、法改正、憲法改正を行っていくべきだと思いますよ。その前段階としての議論が重要なのだと、そう思っています。

      削除

コメントを投稿

お気軽にコメントを!ハンドルネームは面倒でもお願いします。