ジンバブエのクーデターと支那の関係

ジンバブエと言えば、ハイパーインフレの印象が強い。

Zimbabwe_Hyperinflation_2008_notes

これはWikipediaの「ジンバブエ・ドル」のページだが、一体、ゼロが幾つあるのか?というレベルの紙幣が印象的である。

ジンバブエ

でまあ、こんな感じになっちゃう訳で……。


歴史を紐解くと、ドイツも似たような時期があった。ドイツのハイパーインフレは年率2億3100万%という途方も無い数字が挙げられるが、これは第1次世界大戦の影響が色濃く反映されたものである。
1919年1月、パリ和平会議によってドイツの敗戦が決定すると、天文学的な賠償金1320億マルクの支払いが決定された。これはドイツのGNPの20倍で、恐るべきことに毎年20億マルクと輸出額の26%の支払いが求められた。狂気の沙汰である。更に、ドイツの支払いが停滞したことで、フランスとベルギーは、ドイツの主要工業地帯であるルール地方を占領(1923年1月~10月)してしまう。
この狂気の騒ぎに終止符を打ったのが1923年11月に発行されたレンテンマルクと呼ばれるドイツ・レンテン銀行が発行した通貨である。ソレまで使われたパビエルマルクとの交換レートはは1:1兆というから凄い。が、ドイツ・レンテン銀行の通貨発行量は32億レンテンマルクに制限され、国債引受高も12億レンテンマルクに制限された。国債乱発でハイパーインフレを誘発した事を考えれば、こうした措置は妥当であったと思われる。
ただ、レンテンマルクが国内で受け入れられなければ意味は無い訳で、その背景にはドイツの賠償金支払いの方式を緩和するドーズ案(1924年9月26日)の受け入れの影響も多分にあっただろうと思われる。これは、そもそも第1次世界大戦の戦勝国であるイギリス・フランスなどがアメリカに巨額の債務を背負わされ、これを返済する為にドイツに賠償金支払いを求めたという背景があり、アメリカの介入によって借金返済の方式が変えられたので安定した、とも言える。

しかし、1929年に世界大恐慌を迎え、ドイツの景気は急速に悪化してしまう。世界大恐慌を迎えてイギリスやフランスなどはブロック経済へと移行する。自身の植民地をブロックとして特恵関税を設定するための関税同盟を結んだのである。そして、それ以外の国とは関税障壁によって貿易を控えると言った状況が作り出される。経済のコントロールに世界が奔走したのである。
ドイツはオーストリアとマルクブロックを形成するが、これはあまり成功しなかった。こうしたドイツの生殺与奪を外国に握られる事態を、当時のドイツ国民が憂慮していたのは事実であり、その後に登場する世紀の大悪人とされるアドルフ・ヒトラーは、1933年に自由選挙の結果を経てドイツの首相に任命され(この選挙には問題があったとされるが、それはさておく)る。
ナチ党が躍進し、アドルフ・ヒトラーが政権を握るにいたる頃には、その命運は決していたのかも知れない。ある意味、第2次世界大戦への突入は、ドイツの誇りを取り戻すための戦いであったと、そう言えるかも知れないのである。無論、それが最悪の結果を招いたのはご承知の通りだが。

さて、何故、ドイツの話を持ち出したのかというと、ジンバブエのハイパーインフレは、ドイツの事例を参考にして経済を立て直そうとしたからである。

まあ、その結果はこちらのニュースになるわけだが……。

ジンバブエ 軍がクーデターか 世界最高齢の大統領軟禁

11月16日 5時18分
アフリカ南部のジンバブエで、軍がクーデターと見られる動きを起こし、40年近くにわたって国の実権を掌握し欧米から独裁者と批判されてきた世界最高齢の大統領のムガベ氏は、自宅で軟禁状態に置かれ、このまま辞任に追い込まれるのではないかという見方が広がっています。
ジンバブエの大統領は2代目で、ロバート・ムガベ氏が93歳という高齢にもかかわらず、政権を維持していた。実質上の独裁者であったと言われている。
このムガベ氏率いるムガベ政権は1980年代に経済政策を失敗して、後にハイパーインフレを招く羽目になる。2006年7月には、1イギリスポンドは100万ジンバブエ・ドルという交換レートにまで、ジンバブエ・ドルは下落した。
この失敗を、ドイツの方式を見習ったのか、2006年8月にジンバブエ準備銀行のギデオン・ゴノ総裁が、新しいジンバブエ・ドルの導入と共に、デノミネーションを行った。3桁の切り捨てを行ったのである。
しかし、これは失敗し、2008年8月には10桁を切り捨てるデノミが行われ、2009年2月には12桁を切り捨てるデノミが行われた。

そもそも、ジンバブエのこの混乱は、白人大農場の強制収用(2000年8月~)という愚策により引き起こされたと言われている。白人から大農場をとりあげて、黒人に渡すという意味不明の政策であったが、白人地主の持っていた農業技術が失われる結果を招き、食糧危機やハイパーインフレを引き起こしたのである。

ジンバブエ・ドル、ついに廃止 壮絶なインフレで300000000000000ドル=1円

2015年06月14日 01時59分 JST
天文学的なインフレに陥っていたジンバブエの公式通貨「ジンバブエ・ドル」が、ついに廃止されることになった。ジンバブエ準備銀行(中央銀行)は6月11日、自国通貨を公式に廃止し、銀行口座に残っているジンバブエ・ドルを来週からアメリカ・ドルに交換すると発表したという。ロイターなどが報じた。
このハイパーインフレに終止符を打つために、ジンバブエは自国の通貨発行をついに諦めた。

しかし、ハイパーインフレの問題はなにもこの「ジンバブエの奇跡」と呼ばれた白人大農場の強制収用政策だけが問題なのではない。
第二次コンゴ戦争(1998年8月~2003年7月)と呼ばれる民族紛争絡みの戦争において、資源収益の保護を目的にムガベ氏は1万人以上による大規模軍をコンゴに派遣する。

「血のダイヤ」取引解禁でムガベ高笑い

2010年8月19日(木)16時11分
 8月11日、ジンバブエが「いわく付き」ダイヤモンドの大規模販売を開始した。人権団体の主張によれば、ジンバブエ政府が人々を殺すと脅して採掘させたものだ。
このニュースが何処まで信用に足るかはよく分からないが、ムガベ氏は、コンゴのカビラ大統領から10億ドルのダイヤモンド鉱山の利権をムガベ氏個人に対して提供させることを約束した上で、ジンバブエ軍を派遣したと言われている。
このニュースではムガベ氏が手にしたダイヤモンドの販売を開始したという話になっており、これが、第2次コンゴ戦争の対価として得たものだというストーリーである。

しかし一方で、ジンバブエ軍の派遣によってジンバブエ政府は巨額の負債を抱えることになる。また、白人大農場の強制収用政策は、白人の財産を保障無しに没収するという非人道的なモノであったために、人権侵害政策だとして欧米社会から批判を受ける事になる。この構図は「黒人VS白人」という構図に次第に塗り替えられて、ムガベ氏は欧米諸国との対決姿勢を強め、ジンバブエは欧米諸国から経済制裁を喰らうことになる。
こうして、ジンバブエは未曾有の負債を抱えて通貨を乱発し、ハイパーインフレを誘発してしまった。自国の通貨を放棄するに至るには、経済的な失敗だけでは無く、政策的な失敗の側面も大きかったのである。


とはいえ、自国通貨を放棄したからといって、失われた農業技術が戻ってくるわけでは無いので、ジンバブエの国内混乱は続く訳だが、独裁者として君臨し続けたムガベ氏は、軍事クーデターの勃発によって軟禁状態となる。
そもそもムガベ氏は、支那の支援を受けて作ったジンバブエ・アフリカ民族解放軍(ZANLA)を結成し、政権の奪取に利用している。つまり、軍事政権とは言われないまでも、極めて軍との関係の強い大統領であった事は間違い無い。現在与党であるZANU-PFもムガベ氏が組織した武闘派集団(黒人ゲリラ組織)である。
しかし、ジンバブエ軍が、クーデターによりムガベ氏を拘束してしまう事態に。

ジンバブエのムガベ大統領がテレビ演説、続投表明

2017年11月20日
与党・ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)はこれに先立ち、ムガベ氏を党首から解任し、20日正午までに辞任しなければ、議会の弾劾手続きを進める方針を示していた。

「夫人の権力奪取許した」ジンバブエ与党、ムガベ大統領弾劾手続きへ

2017年11月21日
弾劾動議は21日に議会に提出される予定。
ZANU-PFの幹部ポール・マングワナ氏は、手続きは2日で完了する可能性があり、ムガベ氏は23日にも解任されるかもしれないと語った。
ZANU-PFは今でこそジンバブエの与党であるが、これ、もともとジンバブエ・アフリカ民族同盟・愛国戦線と呼ばれる黒人ゲリラ組織である。そして、上述したように、ムガベ氏がZANU(ジンバブエ・アフリカ民族同盟)から分派した武闘派組織をベースにしている。
その与党が党首であったムガベ氏を解任。更に弾劾の手続を進めるという話になっている。

ジンバブエの「クーデター」、中国関与か 軍幹部が直前に訪中

11/20(月) 17:12配信
(CNN) ジンバブエ軍を率いるチウェンガ司令官の中国訪問は、平時であれば異常とは見なされない。ジンバブエにとって中国は最大の投資国であり、長年の同盟国でもある。
ところが、クーデター直前に、軍幹部が支那を訪れていたというニュースが報じられた。

今のムガベ政権の成り立ちを考えれば、支那の関与は自然である。
中国のジンバブエ介入は1970年代にさかのぼる。独立を求めて戦っていたムガベ氏率いるゲリラ部隊に対し、中国はひそかに武器弾薬や資金を供給した。その後も中国は経済的、政治的にジンバブエ支援を続け、幅広い分野に集中投資を行って主要インフラプロジェクトを後押ししている。
むしろ、介入が無かったと言う方が不自然なのである。
かつては人民元をジンバブエの通貨にしようと支那側が画策したこともあり、支那当局の関与が無かったという風に考える方が難しい。クーデターを容認したか、積極的に関与した疑いが強い。

さて、ジンバブエの位置を地図で確認してみよう。



支那にとって、ジンバブエはアフリカ大陸の前線基地の1つである。

中国軍初の海外基地 衛星写真を入手 東アフリカ

11月17日 21時38分南シナ海問題
アジアとヨーロッパをつなぐ海上交通の要衝にある東アフリカのジブチで、中国軍がこの夏、初めて海外に設けた基地を撮影した衛星写真をNHKは独自に入手しました。1000人以上が駐留できる兵舎や弾薬庫と見られる施設が確認でき、専門家はインド洋から地中海にかけて軍を展開するための足がかりとする狙いがあると指摘しています。
一帯一路政策によって、アフリカにも幾つか拠点を作っている支那だが、その地図はこんな恰好になっている。

One_Belt_One_Road

オレンジ色に塗られた部分、アフリカ大陸では、エジプト、スーダン、ジプチそして、ケニアがその一部に含まれている。これらは既に支那との話がついて、経済圏に入ることになっているようだが、ジンバブエは支那がアフリカを開拓する上で、貴重な拠点になる。

更に、11月6日、副大統領であったムナンガグワ氏を突如解任している。この元副大統領は、あろうことか支那に出国
ムナンガグワ氏はムガベ氏の第二の妻、グレース夫人と対立関係にあり、グレース夫人は次期大統領のポストを狙っていることは既に有名な話のようだ。

この夫人が何処に繋がっているかはいまいちよく分からないが、ムガベ対ムナンガグワという構図であれば、どちらにしても支那ががっちり食い込んでいることは間違い無い。
何れに転ぶにせよ、支那が更にジンバブエへの関与を強めることも疑う余地は無いだろう。

ドイツの例を挙げたが、ハイパーインフレを招いた背景には、国内外から様々な圧力がかかり、無理な政策を進めたことがある。
ここからどのように展開するかは分からないが、戦乱を招く可能性はそれなりにあると思われる。北朝鮮情勢なども不安定ではあるが、中東やアフリカも又、きな臭い状況になっているのである。そして、その何れにも支那が関与しているという面倒な構図だ。



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コメント

  1.  現在はべネズエラに注目してますが、以前はジンバブエを追っかけていました。どちらも、大戦後も珍しく優等生として大きな発展を遂げ、後進国や植民地独立後の理想図としてしばしば引用されていました。そのユートピアからディストピアへ一瞬にして転落していく様は、実に興味深いものです。
     ムガベが悪い、チャベスが悪い、いや米国が悪い、中国が実は黒幕、などなど意見も様々ですが、長年見てきた個人的な結論でいえば、どちらも結局、国民が悪いとしか言いようがありません。今後も、国民は悪くない、国民は被害者、などという建て前で処理せざるをえないのでしょうが、その方針の限り解決はしないと思います。
     日本自体が、そうなる心配はしばらくはないですが、韓国や北朝鮮が破たんした時に、「朝鮮国民は悪くない」という理屈の元、誤った対応がとられるのではないかと危惧しています。
     

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    1. ジンバブエに関して言うと、国民が悪いだけで片付ける訳にも行かない問題なんですよね。
      確かにムガベ氏は望まれて選ばれた大統領ですが、独裁色が強く、大統領からムガベ氏を引きずり下ろす機会もありませんでした。それでも傷口が広がる前に何がやり様はあったかも知れませんが。

      ベネズエラの方もなかなか興味深いですね。
      記事にさせて頂きましたよ。あまり調べる時間をかけられなかったので、記事の完成度がいまいちではありますが……。

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  2. ジンバブエにベネズエラ。
    数少ない優等生ですが、オイラはボツワナに注目したいです。
    故人、セレツェ・カーマ大統領が築いたボツワナの歴史には中々圧倒されました。

    ソースはニコニコなんですけどね(オイ
    以下はオイラが見たニコニコ大百科でっす。
    http://dic.nicovideo.jp/t/a/やる夫はアフリカで奇跡を起こすようです

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    1. ジンバブエの歴史的背景を考えていくと、ムガベ氏がやったことの功績というのは結構大きかったのだと思います。「悪人」のように糾弾されていますが、それは一側面に過ぎないと思いますよ。


      長く独裁を続けたことで、あちらこちらに利権が産まれ、そしてソレが解消していかなかった。結果から見れば、ハイパーインフレを引き起こした無能な部分があったとは言え、それでも今なおジンバブエという国は裕福な面もありますから、何もかも悪いと決めつけるのは良くないと思います。
      ボツアナ、紹介頂いたスレを確認させていただきました。

      こうした歴史は日本では語られないだけに、興味深かったです。

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