故金正男氏の息子を狙う暗殺部隊が逮捕されていた

このニュース、完全にスルーだったが、今考えるとかなりヤバイ話だと思う。

「金正男氏息子を狙った北偵察総局暗殺組…中国党大会期間中に北京で2人逮捕」

2017年10月31日11時17分
  金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長のおい、キム・ハンソル氏を暗殺しようと北京に派遣された北朝鮮工作組が中国公安当局に逮捕されたことが分かった。対北朝鮮消息筋は30日「北朝鮮偵察総局所属の特殊工作員がキム・ハンソル氏を殺害する目的で中国入りしていたが、彼らの一部が先週中国国家安全部によって逮捕され、現在北京郊外周辺の特殊施設で極秘裏に取り調べが行われている」と話した。
この話は、北朝鮮の指導者という立場であった金正日氏の後継者の話を知らないと、理解しにくい話であると思う。
そして、その後継者と目されていたが故に暗殺された金正男氏は、今年、ニュースを騒がせていた。このブログでも扱っている。
このニュースが出たときも驚いたが、この時は、金正男氏が東京ディズニーランドに来たというニュースを知っていたからであった。

簡単に金王朝の家系図をおさらいしてみよう。

家系図

新聞などに出ている情報で、分かり易いと思ったのはこの系図だ。

建前としては、北朝鮮は世襲制度を採用していないが、現実的には北朝鮮の1代目は金日成氏は後継者に息子の金正日氏を指名した。
そして2代目の金正日氏が死去する前に、「一番自分に似ているから」という理由で金正日氏は金正恩氏を後継者に指名したと言われている。この時には随分揉めたようだが。

しかし、「正当性」という意味では金正男氏が、金正日氏の直系で、かつ、金正日氏の2番目の妻の成蕙琳氏の子供である(1番目の妻との間に子供はいない)という点で、金正恩氏より勝っているのだと言われている。ただし、正男氏は事実上の庶長子(結婚が公に認められていない段階での子供)であり、完全な正当性があると言い難いのも事実。
一方で、金正恩は、金正日氏の3番目の妻、高英姫氏が在日朝鮮人二世の生んだ子供である。
高英姫氏は、金正哲氏と金正恩氏という二人の息子を設けたが、北朝鮮の「正当性」の意味では、この二人にはちょっと怪しい部分がある。ただし、高英姫氏の結婚は1971年から1973年の間だと推測され、金正哲氏が1971年、金正恩氏が1984年に生まれているので、正しく金正日氏の息子として生まれていたといえる。
つまり、どっちもどっちという感じなのだな。

上にも書いたが、北朝鮮では最も優れた人間が指導者になるという考えを浸透させているため、逆説的に指導者は最も優れた人間で無くてはならない。だからこそ、「~の天才」みたいな肩書きが金正恩氏にも付けられているのだ。

しかし、政治経験という意味では、兄である正男氏や正哲氏の方が長く、要職にも就いていた。金正日氏が後継者を指名した時点では、金正恩氏は政治経験が浅く、後付けで色々な要職に据えたという経緯がある。
この様な話があるので、北朝鮮国内には、未だに金正恩氏を倒して他の兄弟をトップに据えようという思惑があるのだという。そして、正男氏はその犠牲になったわけだ。

で、冒頭のニュースは、金漢率氏という正男氏の息子が暗殺されかかったという話。正恩氏の兄の正哲氏の話は殆ど聞かれないが、一説には正恩氏に忠誠を誓ったので後継者に目されていないとも言われている。
  これを受け、金正恩委員長が権力維持に邪魔になるような金正男氏に続き、ハンソル氏まで「種を絶やす」ために殺害しようとするだろうという見方が出ていた。また、金正恩委員長を意識して偵察総局が過剰忠誠をしていたあげくばれたのではないかという解釈もある。
しかし、金正男氏もその息子も、政治の本流から脇に逸れてなお、命をつけ狙われ、正男氏は殺害されてしまった。

ここで重要なのは、正男氏が殺害される前に何をやっていたのか?という点である。

金正男氏、総書記死亡直後に帰国…国葬は不参加

2012年1月1日16時53分  読売新聞
 北朝鮮の金正日総書記の長男、正男ジョンナム氏(40)が、金総書記の死去直後に北朝鮮に帰国し、総書記の霊前を訪れていたことがわかった。
 北朝鮮関係筋が31日、本紙に明らかにした。正男氏は、28日の総書記の国葬前に北京にいるとの情報もあったが、国葬には出席しなかったという。

この記事はアーカイブなのだが、読売新聞が過去に報じたところに寄れば、金正男氏はマカオに住んでいたという。ロシアメディアも、支那の支援で生活していると報じており、ある意味、支那が用意した北朝鮮のトップのスペア扱いであった。
では、金漢率氏は?

冒頭のニュースからも分かるように、こちらも支那によって保護されているのである。
7人組と知られた偵察総局要員は支援組と行動組・遮断組に分かれてハンソル氏の所在把握と接近ルート作りなどのために活動し、彼らの2人が捕まえることで暗殺陰謀が明るみに出たと消息筋は伝えた。中国公安当局は共産党第19回全国代表大会(党大会、10月18~24日)を契機に北朝鮮などの自国内工作活動を集中監視していたところ、暗殺陰謀を事前探知したことが分かった。
支那の公安当局が動いている事を考えても、支那共産党の息がかかった場所で生活していると見て良いだろう。
金正男氏が暗殺された時には、マカオで厳重な警備の下で生活していたと思われていたのに、マレーシア空港で殺害されている。支那のポカで殺されてしまったというよりは、既に厳重な支援対象から外れていたと見た方が正しいと思う。


一方で、今回は漢率氏の警備体制に引っかかり、逮捕されたという話である。

金正恩氏が、金漢率氏を殺害しようとしたのであれば、「後継者のスペアとして確保されている」=「支那から命を狙われるリスクがある」という構図を嫌ったからであろうし、金正男氏の殺害は、寧ろその警告だったと見るべきでは無いのだろうか。

支那の共産党本部と北朝鮮との表向きのパイプは既に断たれて久しく、しかしその一方で、北朝鮮を陰ながら支援する勢力は未だに支那国内にいると思われる。
こうしたニュースが表に出たという事そのものが、実は大きなニュースであったと思う。

冒頭のニュースが出たのが10月31日で、これは支那の共産党大会が終わった後の話。
記事の中でも共産党大会中の出来事であることが言及されているが、報道に出たタイミングを考えれば、共産党大会が終わるまでは色々と支那も動きにくかったのだが、それが終わって案件を片付け始めたという風にみる事ができる。

とすると、その後にミサイルが発射されたということも含めて、色々と差し迫った事情を感じる。
この発射あった時点では、ミサイル発射はアメリカの切った期限との関連性が指摘されていた。

北朝鮮、中国特使を冷遇 正恩氏との会談は?報道なし

2017年11月21日07時36分
中国共産党の習近平(シーチンピン)総書記(国家主席)の特使として北朝鮮を訪問した宋濤・党対外連絡部長が20日、帰国した。両国のメディアは20日夜現在、宋氏と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の会談を伝えていない。核開発を進める北朝鮮は、宋氏の訪朝には冷淡だった。中朝関係の劇的な改善も難しいとの見方が強く、北朝鮮の行動への予測と対応は更に難しくなったと言えそうだ。
その前に、支那は北朝鮮に特使を送っているが、これが冷遇されたと報じられている。支那が、金漢率氏の件をカードに迫った可能性を考えれば、弾道ミサイルの発射は、ある意味、北朝鮮からのアメリカへの答えであると同時に支那への答えであったと、そう理解するのが良さそうである。

焦点:北朝鮮の金正恩指導部に亀裂か、最側近の軍司令官を処罰

2017年11月22日 / 14:43
[ソウル 21日 ロイター] - 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の最側近である崔竜海党副委員の命令で、同じく最側近の1人と見られていた黄炳瑞・朝鮮人民軍総政治局長が何らかの罪で処罰されたと見られている。
そして、時を前後して金正恩氏は側近を処罰しているようなのだ。この記事での分析は、見せしめ的な「引き締め」を行った可能性が高いということらしいが、一族郎党を粛清というケースは少なくないようだ。


最近、支那はロシアとの会談を行っている。

中国とロシア、北朝鮮巡り国連での協調行動を協議

2017年12月14日 / 08:28 / 5日前
[モスクワ 13日 ロイター] - ロシア外務省は13日、ガティロフ外務次官が中国の李輝・駐ロシア大使と会談し、両国が北朝鮮を巡り国連で協調行動をとることについて協議したと明らかにした。
翌日、アメリカがロシアと支那に「北朝鮮問題で協力しろ」と釘を刺していたが、ここで何が話し合われたかは、気になるところ。


何れにしても、金正恩氏が金漢率氏の暗殺に手を出し、それが公にされていたと言うことを考え合わせると、表面的に支那が北朝鮮の金正恩体制を認めていないというだけで無く、実際に、金正恩排除に動き出している可能性を否定できない。
日本の政治家、特に野党は意味の分からない国会質疑に時間を費やしている間に、色々とマズい動きがあった様に思う。もちろん、日本政府はこれらの情報は網羅しているのだろうが、だから対応できるか?というとそれはまた別の問題である。

どうにもきな臭いな。


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コメント

  1. やはり、支那は自分のコントロール下にない金正恩氏を排除して新たな神輿に挿げ替えたいんですかね

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    1. 多分、スタンスとしては「いつでも首のすげ替えができるから言うことを聞け」って話だと思うのですよね。
      そして、金正日政権の時は、その交渉は効いていたのだと思うのですよ。ところが、金正恩体制になってからは、一番のパイプである張成沢氏を粛清してしました。支那にとっては今や北朝鮮は、加速を続けるブレーキの壊れたトラック状態で、外からは制御できないし、巻き込まれて怪我をするのはゴメンだ、ということなのでしょう。ただ、国内の北部戦区勢力が北朝鮮に近いので、無視することもできないというメンドクサイ状態なんだと思います。

      「首を挿げ替えようぜ」と提案しているのは、多分、アメリカなんじゃ無いかな?

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    2. 「斬首」をやりたいのは米国で、支那はなんとか首の挿げ替えなしで自分のコントロール下に戻したいけどそれが出来なくて困ってる状態なんですね。
      現在のこの状態で「高麗連邦」なんかになられたらそれは支那にとって最悪ですね。(手綱を握れている手駒も失いますし)

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    3. あくまで、「挿げ替えの用意があるぜ」という脅しができれば支那にとっては足りるのでしょう。
      ただ、コントロールは失っている感じですね。寧ろ北部戦区のコントロールすらままならない状況なのかも知れません。これは憶測ですが。

      高麗連邦になると、やはり北朝鮮が主体になる可能性が高く、そうすると事実上北朝鮮の国力が上がっちゃうので、支那としても困るんでしょうね。

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  2. 金正日には他にも娘がいるという説があるし、金正男の息子も一人ではない様だし、水面下での権力闘争と粛清されるNo.2との関係が闇だな。

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    1. そうなんですよね、金正日氏の息子と言えば、有力視されていた正哲氏がいて、現在、北朝鮮の要職に就いていると噂されていますが、エリック・クラプトンのコンサート程度しか目撃情報が出てこないので、いまいち動向が分からないみたいですね。
      それ以外にも娘がいるようですが、さっぱり表に出てこないので、生きているのか死んでいるのか。
      金正男氏の息子も他にいるらいしという話は聞くし、娘も二人ほどいるとかなんとか。

      単純に考えれば、政治経験の有無と言う事はあるのでしょうけれど、ある程度のカリスマ性は要求されるのでしょうね。
      神輿は軽くて派手なヤツがいい訳で、北朝鮮人民にも知られていないような人物では難しいのかも知れません。

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