エルサレムは誰のもの?

注:追記しました。記事の印象が随分変わるので、ご注意下さい。追記部分は後ろの方になります。

うわぁ……。

米トランプ政権 エルサレムをイスラエルの首都と認定へ

12月6日 11時02分
アメリカのトランプ大統領は、中東のエルサレムをイスラエルの首都と認めた上で、現在、テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転する方針を決めました。国際社会はエルサレムをイスラエルの首都とは認めておらず、今後、パレスチナだけでなく、イスラム諸国が強く反発するのは確実で、国際的に大きな波紋が広がりそうです。
攻めるねぇ、トランプ氏は。

朝から重い記事だが、ちょっと前に書いた記事に関連するので、敢えて触れていこう。
この記事を書いたときには、中東に造詣が深いと思われるけるびむ氏からコメントを頂いている。この際に「サウジアラビア」という単語が出てきている。今回の記事はそれに絡む話なのだ。



さて、イスラエルとパレスチナ。そして、ヨルダンやらUAE、エジプト辺りまで首を突っ込みそうな勢いのこの問題。本来はアメリカが口を出すべきでは無いハズなのだが、実はトランプ氏の娘、イヴァンカ氏の夫であるジャレッド・クシュナー氏はアメリカに移民したユダヤ人である。そして、大統領上級顧問の職に就いており、事実上、アメリカの中東政策の中枢に位置する人物と言っても過言ではない。そして、トランプ氏自身、大統領選挙中に公約としてエルサレムの話をしている。つまり、トランプ氏的にはどうしても解決しなければならない問題である。

で、前回は、ユネスコ脱退という行動でイスラエルを支持する姿勢を示したが、今度はイスラエルの主張を認めて、テルアビブでは無く(現状では、イスラエルの首都機能はテルアビブにある)、エルサレムがイスラエルの首都であると認めちゃった。
何で、今なのさ!

エルサレム

ともあれ、アメリカ大使館をエルサレムに移転すると決断したようだ。
トランプ政権の高官が5日、明らかにしたところによりますと、トランプ大統領は、エルサレムをイスラエルの首都と認める方針を決め、近く、国務省に対して、現在、テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転する準備を開始するよう指示するということです。トランプ大統領は6日にこうした考えをみずから発表する予定です。
今のところ、「高官が明らかにした」ということなので、ひっくり返る可能性はある。が、トランプ氏としても一旦口に出したことを今さら引っ込めるわけにもいかないし、選挙期間中には大使館のエルサレムへの移転を公約に掲げていた点を考えれば、本気なのだろう。

ただ、この話、中東にあるイスラエル以外の国から反発は必至で、ヨーロッパも黙っているとは思えない。

トランプ氏の積極的に公約を守る姿には好感が持てるが、しかしこのタイミングでこの発言はかなり波紋を広げるだろう。そして、十分な根回しが行われていたとも思えない訳で、何故、このタイミングなのかと。

下手したら、中東戦争再燃である。

トランプ大統領は5日、パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長やヨルダンのアブドラ国王らと電話で相次いで会談し、アメリカ大使館をエルサレムに移転する意向を伝えましたが、パレスチナなどは早速反発しています。このため、大使館の移転が実現するのか、具体的なめどは立っていません。

そして、早速、波紋が広がっている。



さて、もう一つニュースを紹介しよう。

サウジアラビア「要人大量逮捕」は本当に政敵駆逐が目的か

2017年11月27日(月)17時31分
サウジアラビアのサルマーン国王は11月4日、ムトイブ国家警備隊相、アーデル・ファキーフ経済企画相、アブダッラー・スルターン海軍司令官を解任、さらに腐敗防止最高委員会を設置し、実子であるムハンマド皇太子(以下MbS)をその議長に任命した。

この委員会の最初の仕事は200人以上を腐敗・汚職などの容疑で逮捕することであった。このなかには11人の王族を含む多数の政財界の要人が含まれているという。具体的な容疑は詳らかにされていないが、サウジ公式メディアでは南西部の都市ジェッダでの洪水、感染症のMERS(中東呼吸器症候群)対策などで捜査がはじまったことが指摘されている。
なんのこちゃ、というニュースだが、更にもう一つ。

サウジ王子、搭乗ヘリ墜落で死亡=「粛清」恐れ逃亡図る?

2017/11/07-10:20
 【カイロ時事】サウジアラビア南西部アシル州の副知事だったマンスール・ビン・ムクリン王子が5日、搭乗していたヘリコプターの墜落で死亡した。王子は、汚職摘発を名目に王族や閣僚ら多数を拘束したムハンマド皇太子の反対派。不正行為への追及を逃れようと国外に向かっていた際にヘリが墜落したとの臆測が広がっている。
実は、サウジアラビアでは、現在勢力図の書き換えが行われている。

中東で、アメリカとの深い関わりを持つ国と言えば、イスラエルの他にサウジアラビアが挙げられる。サウジの主な外貨獲得手段は、石油などの天然資源の採掘と輸出であり、外貨収入の9割が石油によるものである。科学技術で国の屋台骨を支えているイスラエルとは正反対だな。尤も、イスラエルの輸出の1/4はダイヤモンド産業ではあるが。

で、イスラエルの話はともかくサウジアラビアの問題点は、まさに石油に過度に依存する体質である為、ここのところの原油価格の下落によって大きな経済的ダメージを受けている点にある。
これまでは国民に対して「石油があるから働かなくても良いよ」と言ってきたのだが、この構図が破綻し始めているのだ。

サウジの公務員、勤務は1日1時間? 閣僚がテレビで発言

2016.10.21 Fri posted at 16:34 JST
ドバイ(CNNMoney) 原油安による国家財政や経済への影響が懸念されているサウジアラビアで、閣僚が「サウジの公務員は1日1時間しか働かない」と述べて話題となっている。
こんなニュースが話題となったこともあるくらい、働かないで済む国だったんだけどね。



で、中東問題で話題になる国のニュースをもう一つ紹介しよう。

「最悪の人道危機」イエメン内戦 800万人が飢餓

2017年12月6日09時52分
 中東のイエメンで約800万人が飢餓状態にあるとされる「世界最悪」の人道危機が続いている。地域大国サウジアラビアとイランの思惑が絡む内戦でインフラが破壊され、国土が南北に分断されて支援物資が届きにくい状況が続いているためだ。4日にはサレハ前大統領が殺害され、戦闘の激化が懸念されている。
イエメンの内戦はかなりやばい事になっている。
2015年1月22日に、クーデターによって政権が崩壊して革命政府が誕生している。
この話に首を突っ込んでいるのがサウジアラビアで、上のニュースはこうしたイエメンの情勢とも関連が深い。

で、そんなサウジアラビアは、イスラエルと国境を接する国である。
アラブ諸国の指導者らは米国大使館をエルサレムに移さないよう警告しており、サウジアラビアのサルマン国王は、イスラム教徒が移転を「目に余る挑発」と受け止めるだろうと語った。
サウジアラビアの財政がヤバイとはいえ、イエメンの問題に首を突っ込んでいるのである。イスラエルに干渉しない、なんてのは希望的観測だろう。
そもそも、イエメンの問題にサウジアラビアが首を突っ込んでいる背景には、宗教問題がある。
シーア派とスンニ派の対立構造は、中東問題の中心にあって、イエメン国内では、イスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ」が、親サウジ政権を打倒してしまった。前政権の残存勢力は、サウジアラビアの支援を受けて、血みどろの内戦に発展。なお、シーア派の支援はイランによって行われているので、構図的にはサウジ対イランという形にも見える。
だが、2017年12月4日には、前大統領のサーレハ氏を殺害したとフーシが発表する事態に。

深まる混迷 前大統領殺害で内戦の構図複雑化

会員限定有料記事 毎日新聞2017年12月5日 21時49分(最終更新 12月5日 21時52分)
 【カイロ篠田航一】内戦が続くイエメンで4日、イランの支援を受けるイスラム教シーア派系武装組織フーシがサレハ前大統領を殺害した。もともとサレハ氏とフーシは連携し、敵対するサウジアラビアに対抗。だがサレハ氏が2日に「サウジと和平協議の用意がある」と表明したことをフーシが「裏切り」と受け止め、一転してサレハ氏排除に踏み切った形だ。サレハ氏殺害で内戦の構図は複雑化し、混乱は一層深まる見通しだ。
そもそも、フーシはサウジアラビアを攻撃した過去があり、サウジにとってもフーシは邪魔な存在なのだが、サーレハ氏はフーシと協力関係にあった。ところが、それが拗れてしまってこのザマである。



そんな争いの渦中にあるサウジアラビアではあるが、経済大国であるイスラエルとの距離を縮めようという風に画策していたようだ。

これが、今、サウジアラビア内で吹き荒れている粛清と関係がある。
イスラエルは、アラブ世界にとっては、その建国の成り立ちからして非常にややこしい立ち位置にある。これは首都の問題や、国の位置の問題に起因する部分が大きい。
そんなイスラエルが、建国以来、エジプト、ヨルダンとの友好関係を築き、UAEとの距離を縮めているのは、アラブ世界に受け入れられるという目的のためだと言われている。
これに対してサウジアラビアは、イスラエルの存在を疎ましく思ってはいたものの、最大の敵であるイランを見据えた上で、自国の経済政策の転換を迫られる事態にあって、イスラエルとの距離を縮めることを選択した。
しかしその為には、国内のイスラム教の関係者を黙らせる必要があり、それが粛清という形になって現れたという構図になってくる。

そして、アメリカの話。

トランプ米大統領、パレスチナ自治政府議長と会談 

2017年05月23日
アッバス議長との会談でトランプ氏は、議長がテロと戦う姿勢を示しているのはありがたいと述べた。
イスラエルとパレスチナは3年以上、直接協議をしていない。実業家として取引をまとめるのが得意だと自認してきたトランプ氏は、こうした状況について「一番難しい取引のひとつだ」と認めていた。
トランプ氏はこれに先立ち、イスラエルを訪れてネタニヤフ首相と会談し、両国の結びつきを強調した。
トランプ氏が中東を訪れたのは5月のこと。イスラエル問題を解決する為に、イスラエルの首相、ネタニヤフ氏と会談した上で、パレスチナのトップである議長、アッバス氏とも会談している。「十分な根回し」があったかどうかは分からないが、下準備はされていた。

そして、サウジのムハンマド皇太子が、先月にはアッバス議長をサウジアラビアの首都リヤドに招待している。間違い無く今回の話絡みだろう。

サウジアラビアのムハマンド皇太子の強硬な姿勢を批判する層は、国内にも多数いて、今回のイスラエルの問題の解決にも反対する層がいる。こうした反対派を粛清して回っているのがサウジアラビアの現状だ。

その様な状況下にあって、イスラエル問題を焚き付けた形になるだろうと思われるのがトランプ氏の今回の決断である。



まあ、控えめに見積もっても、大きな事態に発展するのは避けられない。
下手をすれば、シーア派とスンニ派の全面対立という事態を迎えかねないのである。
サウジアラビアのサルマン国王はトランプ氏に対し、エルサレムの首都承認と大使館移転は「世界中のムスリム(イスラム教徒)に対するあからさまな挑発になる」と述べた。
http://www.bbc.com/japanese/42248658
サウジアラビアの国王、サルマン氏がトランプ氏に対して警告をしているが、しかしその騒ぎの中心にいるのはあんたの息子で王位を継承する予定のムハマンド皇太子なのである。

実にややこしい事態だ。

で、こんな話を朝からしだした理由なのだが、日本もこの中東の話には無関係ではいられないのである。
その理由は、日本の原油はその大半をサウジアラビア(35.7%)とUAE(24.4%)に頼っているのだが、両国とも今回の騒動の当事者なのである。原油の中東依存度は86.8%で、この騒ぎが大きくなれば、オイルショックも真っ青な騒ぎになりかねない。

何故アメリカは、あっちこっちの騒ぎに首を突っ込もうとするのか、と嘆きたくもなるが、イスラエルの建国にも関与し、北朝鮮の成り立ちに影響を与えた国である。まあ、仕方ないね。
更に言えば、北朝鮮が完成したミサイルを販売し出すと、中東情勢は非常にやばい事になる。北朝鮮を早めに叩きたい理由もそこにあるのだ。

北朝鮮問題も深刻だが、中東情勢も負けずに深刻である。そして、両者には繋がりがあるのだが、派手な中東情勢に目を奪われていると、隙を突いて北朝鮮が何かをしでかす、みたいな展開もあるだけに、忙しい年末になりそうである。

追記 (2017/12/8)
今回の記事で抜けていた視点を追記せねばならない。

プーチン大統領、米のエルサレム首都認定に「深く憂慮」

2017年12月8日 9:10
【12月8日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことに「深く憂慮」する姿勢を示した。ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)が7日、明らかにした。
ロシアである。

プーチン氏

当然ながら、ロシアもこの中東問題には重大な関心を持っている。
 トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領との電話会談の中で、プーチン氏はパレスチナとイスラエルに「自制」と交渉再開を呼び掛けたという。
この記事の中でもロシアとトルコの会談の話が出ているが、この場面でもロシアが正義ズラをするシーンでは無い。

パレスチナのアッバース大統領、トランプ・プーチン両大統領と電話会談

06.12.2017 ~ 08.12.2017
トランプ大統領とアッバース大統領の電話会談に関する発表は、パレスチナ大統領府とネビル・アブー・ルデイネ報道官が行った。
~~略~~
ロシア政府から行われた書面発表では、プーチン大統領がアッバース大統領と行った電話会談で、中東の問題やエルサレムの地位に関する最近の進展についての見解を述べたことが伝えられた。
こんな記事が出ているが、実はこの問題にはロシアも一枚噛んでいる。

サウジとロシアが急接近、中東から締め出されるアメリカ

2017年10月5日(木)19時40分
サウジアラビアのサルマン国王は今週、サウジ国王として初めてロシアを公式訪問し、プーチン大統領と会談する。
サルマンの訪露は、2国間関係を改善する転機になる。ロシアとサウジアラビアは、内戦終結後のシリアをめぐって意見が対立しており、サウジアラビアは、ロシアが敵国であるイランに接するのを不快に思ってきた。
ロシアのプーチン氏はシリアの方向から切り込んでいる話。ロシアとシリアとの深い結びつきに関しては、それなりに皆さんご存じだと思うが、そのシリアの延長線上にサウジアラビアがある。
元々は記事に紹介があるように、サウジアラビアは、ロシアとイランの接触を快く思ってはいなかった。ところが、経済協定を軸にロシアとサウジアラビアとが協力関係に近接しているようなのだ。
サウジアラビアは政府系や民間の投資ファンドを通じて、ロシアのインフラや小売、物流、農業分野に100億ドル以上を投資している。
ここにもサウジアラビアのエネルギー問題が密接に絡んでいるのだが、脱原油政策を模索するサウジにとって、ロシアの技術は魅力的なのだ。
つまり、こうした関係の強化がアメリカを中東から閉め出す形になりかねず、それを嫌ったトランプ氏が、このタイミングでぶっ込んだという構図である。

ますます面倒な話だな。




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コメント

  1. エルサレムの件、もともと米議会で可決されたものを、大統領承認を半年単位でずるずると長年に渡って先伸ばしにしてきた案件だったはず。
    だからタイミングとしては最悪だけど、やむを得ない部分もあるかも。

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    1. いやまあ、そうなんでしょう。
      トランプ氏の選挙公約でもあり、議会でも可決されています。ただ、そもそもアメリカが首を突っ込むべき話かというと、かなり慎重に事を運んでも色々と弊害がありそうな問題です。こんな、唐突にやるべき話なのかは、疑問です。
      じゃあ、いつなら良いのか?というと、その判断は難しいのでしょうけれど。

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  2. 素人考え的には国連本部をエルサレムに設置して、世界中どの国の主権も及ばない永久中立地帯にでもしてしまえ、と思うんですけどねぇ
    宗教的にカオスすぎてどの国が押さえても火種になるのが「約束の地」とは笑うしかない。

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    1. 中立地帯ですか。
      例えば、バチカンみたいな形で独立させてしまうのもありだと思います。ただ、異なる宗教の聖地が1つの場所に集まっている事情を考えると、これもまた宗教戦争のネタになりかねない話ではありますな。

      今回のイスラエルの話は、そういう意味ではイスラエルにこのエルサレムを与えよ、みたいな話に繋がるので、「戦闘開始!」みたいな流れになり、現状では「アメリカを駆逐しろ」みたいな変な煽り方がなされている感じですよね。
      それでも、力業で無いと解決しない問題でもあります。推移を見守るしか無いのですが、ある意味、今回のやり方はアリなのだと思います。

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