ジャワ準高速鉄道、インドネシアと折り合わず

顧客の言うことを最大限尊重するのが、技術者の使命だとは思っているが、しかし、無理なモノは無理なのである。そこを曲げてモノを作ってしまうと、不幸な未来しかやってこない。

日本国内であってもそうした事例はまま起こる。しかし、国を跨ぐとさらに些細なことでも色々問題になるんだよな。

ジャワ高速鉄道 中国から日本へ

投稿日:2017/4/22
インドネシア政府はジャワ島西部の首都ジャカルタから東部のスラバヤに至る鉄道(約730キロ)の高速鉄道計画について今年5月からその実現可能性などを環境や資源など各種要因に基づいて調べる「事業可能性調査(フィージビリティー・スタディ=FS)」を開始する方針をこのほど明らかにし、インドネシアの国鉄(KAI)、科学技術応用評価庁(BPPT)とともに日本と共同で調査を実施したい、との意向を明らかにした。
去年の4月頃にこんなニュースが流れて、日本が受注を逃したバンドン高速鉄道の雪辱なるか?というような話も出ていたように思う。

個人的にはコレを歓迎したくなかったので、比較的冷めた視線で事の推移を眺めていたのだが、何やら不穏な状況になりつつあるね。
なお、バンドン高速鉄道の絡みに関しては、昨日の記事でちょっと言及しているので、こちらの記事を参考にして欲しい。
あ、そうだ、この記事で「ジャワ準高速鉄道」と表現しているのは、上の記事にあるように、ジャカルタからスラバヤの間約730kmの区間の準高速鉄道計画の話である。


高速鉄道

以前はこんな感じで、日本と支那とが入札を競った高速鉄道の受注に関して「ジャワ島高速鉄道計画」などという記事もあったようだ。が、今回はジャカルターバンドンの間を結ぶ区間のことは、バンドン高速鉄道として説明したい。

高速鉄道路線

もともとは、ジャカルタースラバヤ間730kmを新幹線方式を採用して高速鉄道で結ぼうという話だった。
それに日本が参加して2008年より調査を開始。が、お金の話で揉めたようで、2014年に新提案として第一期工事をジャカルターバンドン間150kmを高速鉄道で結ぶ提案が出され、スラバヤまでは第二期工事以降という話になった。この第一期工事分がバンドン高速鉄道である。

ところが、2015年にジョコ・ウイドド氏が大統領に就任した途端、この高速鉄道計画は中止になる。そして、2015年9月に支那がバンドン高速鉄道を受注するに至る。
控えめに言っても詐欺師だな。誰が、とは言わないが。

「まねーいずぱわー」の世界なので、支那マネーに負けた日本政府を責めるのも、アレだが、顧客の要求を読み違えた結果とも言えるだろう。

で、コレで話が終わるかと思っていたのだが、何故か第二期工事分を含めて、在来線を「準高速鉄道」という形にしたいとか言う話になった。
ルフット・パンジャイタン調整大臣は「インドネシアの高速鉄道化には日本の費用と鉄道技術が必要」として、5月からのFSを11月ごろまでには終了して、日本への発注で年内には合意する方向で政府部内の調整を進める方針を示した。
http://japan-indepth.jp/?p=34017
何かふざけたことを言っている大臣がいるな……。

ところで、この「ジャワ準高速鉄道」だが、実は在来線を利用してお安くあげたいと言う話だったようだ。
その下りはこちらの記事を参照願いたい。

簡単に言うと、在来線に新規工事で路線を追加して高速化しようという話。どうやら、バンドンを通過しないショートカットコースを考えているようなのだ。

ジャワ準高速鉄道、工事分割案を日本と協議

2017/09/27(水)
インドネシアの首都ジャカルタと東ジャワ州スラバヤを結ぶ既存鉄道の準高速化事業について、日本とインドネシアの両政府は、工事を2段階に分けて実施する計画を協議している。事業費の削減や既存鉄道の運営を停止しない工事が可能なためだ。26日付ジャカルタ・ポストが伝えた。
そして、こちらも2段階に分けて工事する話が出ているようだ。
ブディ運輸相によると、在来線を活用した工事分割案を採用する場合、第1期工事をジャカルタ―中ジャワ州スマラン、第2期工事をスマラン―スラバヤで実施する。総工費81兆2,000億ルピア(約6,791億円)のうち、距離が長い第1期工事に6割を投入する。国鉄クレタ・アピ・インドネシア(KAI)は、工事を分割することで、既存の鉄道運営を妨げずに工事が可能と強調した。
うーん、インドネシア側はかなりムシの良いことを考えている気がする。

で、この話、2017年11月中に話が纏まるはずが、12月には「合意延期ねー」という話が出てくる。

ジャワ高速鉄道、費用・工法の日イ合意延期

2017/12/11(月)
インドネシア運輸省は、日本の政府開発援助(ODA)を利用し計画している首都ジャカルタ―東ジャワ州スラバヤ間の準高速鉄道プロジェクトについて、建設コストや在来線の活用方法などの決定を、来年1月まで先延ばしにすると発表した。11月中に日本と方向性を固める予定だったが、双方が提示した建設費用が当初の予想を大幅に上回ったことが大きい。7日付地元各紙が伝えた。
いやぁ、何だかなぁ。
ブディ運輸相によると、インドネシアの技術評価応用庁(BPPT)は事業費用を80兆ルピア(約6,652億円)、国際協力機構(JICA)はこれを10兆ルピア以上上回る見積もりをそれぞれ提出。政府予想の60兆ルピアを大幅に上回った。ブディ氏は「費用が100兆ルピア近くに及ぶ事業を承認することはできない。適切な技術を導入しつつ、可能な限り低い費用で事業を実施したい」と強調した。BPPTとJICAは在来線に加え、一部で新線を敷設する前提で見積もりを算出しているという。
インドネシア側の調査とJICA(日本側)の見積もりとが大幅に違うというのである。
そして、第三者の意見も取り入れるということらしいのだが……。
政府は7日、韓国とドイツからも専門家を招き、意見を聞いた。
ドイツはともかく、韓国かよ!!!

ジャワ高速鉄道、狭軌採用し19年初頭に着工

2017/12/15(金)
インドネシア運輸省によると、13日にジャカルタで行われた首都ジャカルタ―東ジャワ州スラバヤ間の準高速鉄道プロジェクトに関する会議で、狭軌(1,067ミリメートル)の採用と新線の敷設を決定した。第1期として、首都ジャカルタ―中ジャワ州スマラン区間を2019年初頭に着工する計画だ。14日付ビスニス・インドネシアが伝えた。
そして、どうやら狭軌を採用する方向性であるという。いやー、高速化するのに狭軌はオススメしないんだが……。

ジャワ準高速鉄道、日イの溝埋まらず

2018/02/02(金)
日本の支援で建設する首都ジャカルタ―東ジャワ州スラバヤを結ぶ準高速鉄道計画の建設費をめぐり、日本とインドネシアの溝が依然埋まっていない。全線高架を提案する日本側に対し、インドネシア政府は建設費削減のため一部のみ高架とすることに固執しているからだ。
更に、高架を採用することにもインドネシア側が難色を示しているようだ。

……しかし、記事を読んだ印象でしかないが、これ、計画が二転三転しているような気がする。本来であれば、在来線を高速化するという話だったハズだが、何故「全線高架」という事になっているのか。記者が正確に理解していない可能性はあるんだけど。

インドネシア、準高速鉄道事業を来年着工 工費上限などJICAに要求

2017.11.24 05:57
 インドネシアは、ジャワ島西部の首都ジャカルタと東部スラバヤを結ぶ総延長727キロの準高速鉄道整備事業について、2018年に着工、21年の完成を目指す。現地紙ジャカルタ・ポストなどが報じた。
 同国のブディ・カルヤ・スマディ運輸相は着工に向け、国際協力機構(JICA)に対し、工費を60兆ルピア(約4944億円)以内、片道の所要時間を5時間半以内にするよう求めていることを明かした。
この辺りに問題がありそうだな。

運輸相のブディ氏は、「60億ルピアで作れよ!ただし、5時間半以内な!」と、無茶を言ったらしい。で、上にある様に、インドネシア側の調査でも80億ルピアはかかる見通しで、JICA側は「90億ルピア以上かかるんじゃねーの」と言ったわけだ。



どうやら、JICA側は在来線の利用を極力避けたいようだね。
インドネシアは発展途上の有料物件。だから、基幹インフラになり得る高速鉄道に投資をケチるのは悪手だと思う。

寧ろ、90億ルピアで高速鉄道が作れるならば、日本に丸投げする方がよっぽど上手いこと行くんじゃ無いかという気はするぞ。


ただ、前大統領が汚職絡みで退陣し、クリーンなイメージで当選したジョコ氏にとって、大金を投じてインフラ整備と言うのには抵抗があるらしい。どちらかというと、ルーピー臭のする人物だしね。

ただ、そうは言っても鉄道は国の重要インフラで、現状で道路は渋滞に悩まされている。

China Railway Construction Corp to form JV with Indonesia’s Wijaya Karyato for $5.5b HST


October 2, 2015
The China Railway Construction Corp Ltd (CRCC) will team up with a consortium of Indonesia’s state own enterprises (SOEs) led by PT Wijaya Karya Tbk (IDX : WIKA) in developing the first High Speed Train (HST) in the country.
更に、バンドン高速鉄道は5.5億米ドル(=80兆ルピア相当)もかかるとい話になっている。インドネシア政府の財布は傷まないのでコレを承認したらしいけれど、ソレしたって、比べたら随分安いじゃないか。
そこもケチるのは得策なのかね。

もちろん、インドネシアにはインドネシアの事情があるんだろうけれど、この話は拗れそうだな。今年の4月には結論を出すつもりらしいと報じられているんだけどね。



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コメント

  1. なるほどなるほど。
    インドネシアは中国に受注させて日本のそれまでの努力を踏みにじったうえに、更に価格でゴネてる訳ですね。困ったものです。
    あれだけ日本を裏切ることをやってきて、今更ゴネる資格はないとは思いますね。まあ価格が折り合うならやってやるかって気持ちで良いと思います。

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    1. 商売をやるわけですから、ネゴシエーションはして当然でしょう。
      ただ、値段交渉に固執して品質を求めないのは、悪手なのだと思います。

      日本製の全てが良いというつもりはありませんし、鉄道技術にせよ、支那の技術革新の速度はめざましいと思います。インドネシアにおいても支那製の鉄道を導入する事その事が、インドネシアにとって不幸とまでは言い切れません。

      ただ、現状の支那のやっている事を見た上で、今回のやり方を貫くのであれば、日本としてはインドネシアを相手にする必要があるのか?という気はしてしまいます。

      そこは政治なので、シーレーンの絡みなどを含めると、日本としても無碍には扱えないのかも知れませんが。

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  2. あるけむ(R.K.M)@fwbc1965_32018年2月17日 2:28

    現在までの経緯は、この記事及びシャドー氏のコメントの通りだと思います。
    なので、それ以外について。

    >高速化するのに狭軌はオススメしないんだが
    1067mm軌間でも、200km/h~220km/h程度の営業運転は可能だと思います。
    日本でも、いわゆる「スーパー特急」という案で計画されてました
    (結局、フル規格に変更されて消滅しましたが)

    >全線高架を提案する日本側に対し、インドネシア政府は建設費削減のため一部のみ高架と
    >することに固執しているからだ。
    共同通信の情報ですし、ちょっと疑問ですね。そもそも「全線高架」の意味が違うかも。
    「(盛り土築堤はメンテが大変なので)すべて高架にしましょう」という話ではないかと。
    事実、盛り土築堤を採用した東海道新幹線は、初期の不等沈下やメンテに苦労してます。
    初期費用をケチるか、メンテで楽をするかの違いではないかと考えます。
    初期費用をケチると、メンテに苦しんで使えなくなり、結局、元の木阿弥になる気がしてます。
    この辺は、実際に経験してみないと理解するのは無理ですね。

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    1. メンテナンス面で考えても、高速鉄道に狭軌を選択するというのは、良くないように思うわけですよ。可能か不可能かでいえば、狭軌の高速鉄道導入は可能なんでしょうけど。

      「全線高架」の話については、ご指摘の通り疑問ですし、意味が違う可能性は結構あるかと思います。
      ただ、そうだとしても、インドネシアの場合は季候がアレなので、盛り土でやるのはちょっと……。

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  3. もういっそ、90億ルピア以上出せないなら、作ってやんね、って言って突き放してやったらどうだろう。
    んでもって現在進行形のテキサスの高速鉄道にでも注力したらどうかしら。
    良いものにはそれなりの「対価」を払ってもらわないといかんでしょ。
    それにしても狭軌の路線に高速鉄道って・・・・。
    サンダーバードだのスーパーはくと(はディーゼル機関車なのだが)とかあたりを走らせるならともかく、200km/hかそこら出す車両には向かんと思うのだが・・・・。

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    1. アメリカの方は、それはそれでなかなか大変みたいなんですよね。アノ国は考え方が日本とは違います。日本主導で鉄道を作るのであれば、未だインドネシアの方がやりやすいかも知れません。
      アメリカはあれで製造業が驚くほど衰退している部分がありまして……。

      実際に、苦労しているみたいですしね。

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  4. 90億ルピアって日本円で7000万位なんですね。もっと高いかと思ったんですが、意外に安く感じてしまいました。
    実際この手の鉄道網開発事業は困難を伴う事が多いようですし、この路線は技術を要する難しいと聞きました。
    (アップダウンやカーブなど)
    スペインがサウジアラビアの鉄道開発で大損をしたというニュースがありましたし、ここは大中華様にお譲りしたほうが得策かもしれません。(オイ

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    1. 90億ルピア=約7100万円
      80兆ルピア=約6300億円

      新幹線が16両編成で50億円程度、地下鉄が6両編成で6億円程度という感じですかね。
      長野~金沢間の路線の総工費は約1兆7800億円といわれていますので、インドネシアの土地が安く買えるとしても、恐ろしく安い気がしますよ。
      1億円程度でも日本としては「先行投資」で、商売としては成り立たないレベルの話では無いかと思います。

      国防の話が無ければ、支那に「どうぞどうぞ」と言いたい所ですが、シーレーンの事を考えても、インドネシアがが紅く染まるのは遠慮して欲しいところです。もともと特殊な国ではあるんですが。

      削除
  5. 通貨の単位を間違えていませんか?
    「億」ではなく「兆」では?
    https://www.sankeibiz.jp/macro/news/171124/mcb1711240500021-n1.htm

    文中引用記事
    インドネシア、準高速鉄道事業を来年着工 工費上限などJICAに要求2017.11.24 05:57
    も「兆」になってますよ。

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