水道法改正案が可決され、「水道が値上げされる」と騒ぐメディア

何というか……。

水道料金「上げざるを得ない」横浜市長

12/5(水) 19:02配信
水道法の改正案が参議院で可決されたことに関連して、横浜市の林文子市長は将来的に水道料金を値上げする考えを明らかにしました。
恣意的すぎるよね?
林市長
横浜市の市長、林氏はこんな事を言っている。
これについて、林市長は「横浜市では民営化は考えていない」としました。 一方で、節水の意識が広まり水道の使用量が減っていることや、水道管の長寿命化などに費用が掛かることなどをあげ、水道料金の値上げに言及しました。
水道法の改正案が可決されたことを受けて、「民営化は考えていない」でも「水道料金は値上げしたい」という事を言っている。


野党はレッテル貼りを頑張っているが、この問題は根本の議論がおかしいのである。野党はいつもおかしいのだけれど。

水道“民間”法案 6日成立へ 野党反発「値上がりする」

12/5(水) 19:44配信
水道事業の民間委託などを盛りこんだ水道法改正案が、5日午後5時15分すぎ、衆議院の委員会で野党側が抗議する中、可決された。
自治体の水道経営強化をはかるこの法案には、運営権を民間企業に売却する方式の導入が盛り込まれていて、野党は「海外では失敗している」、「水道料金が値上がりする」などと批判している。
現在、水道事業はもうやっていけないような状況を迎えている。
それはいくつかの原因があるが、以下のようなものが挙げられる。
  • 人口減少に伴う水需要の減少
  • 人材不足
  • 水道施設の老朽化
  • 水道料金原価割れに対する対策不足
ハッキリ言うと、現在の構造では水道事業は維持できないのである。

日本国内の水道事業者は1388。うち、給水人口5万人未満の小規模な事業者が952(2014年現在)という風に言われている。
これが独立採算制で今後も成り立つのか?というのが最大の問題であって、民間に売られるとか、業務委託するとかそういう話は、今日本が抱えている問題の本丸では無い。

水道料金、値上げ続々 背景に老朽化、人口減、設備の耐震化…

2014.10.25 22:15
 上下水道の料金を引き上げる自治体が相次いでいる。水戸市が今年度から水道料金を平均7・9%の値上げに踏み切ったほか、埼玉県秩父市は10月に条例を改正して平均17・5%引き上げを決めた。神奈川県横須賀市も10月から下水道料金を平均17%値上げした。いずれも老朽化した浄水場や水道管の改修費をまかなうためだと説明する。加えて、人口減少や節水で水道事業の採算が悪化していることも影を落としている。
~~略~~
 県内のさいたま市も7月から「財政健全化」を理由に赤字が続く下水道事業の料金を一般家庭で月額300円余りアップした。

これは2014年の産経新聞の記事だが、水道事業が赤字である事は随分と昔から言われてきた話。もちろん、水道事業をやっている行政の給料が高いから問題なのだという指摘もあるのだろうが、給料や作業効率だけの問題では無いのである。
実は水道事業というのは、上水も下水も設備費用や減価償却費などの固定費の割合がかなり高い事業である。これは、人々のライフラインである水の供給という面において、容易に値上げすることが難しい性格の料金でもある為だ。
水道料金
これはほんの一例、浜松市のケースなのだが、上水も下水も固定費は9割超えである。その内訳が健全であるかどうかという点も含めて議論の余地がある話ではあるが……、人口減少で収入が減った場合もこの固定費は減らない構造になっているので、既に身動きが出来ないような状況に陥っている事業者は少なくないだろう。

そこへ設備老朽化の話が重なってきているので、長大な設備を更新する余地が無いというのが現状なのである。
そんな訳で、民間企業に運営だけ委託できるという方法を整備したというのが今回の法案の重要な点である。
で、過去にこんな記事を書いて、基本的には水道の民営化には反対なのだけれど、しかし、民営化しなければ「出来ないこと」というのも実はある。
何かというと、「効率化」だ。
この記事でそれに言及しているのだが、そもそも限界集落において水道施設の維持は並大抵では出来ない。
JR北海道の話と同じだね。

鉄道の例を出すと問題ではあるのだけれど、公共のインフラというのは、完全に国営でやってしまうと国鉄のように内部から腐敗する。一方で、民営化すれば中途半端で終わった郵便事業のように不便になるわけで。
何がダメかって、細分化して地域性を高める一方で、縦割り行政が起因して不効率になり、その上で労働組合が強くなって、内部に親和性の高い共産党勢力が入り込むのである。そうなってくると、組織維持に巨額の税金が必要になるという……。もちろん、悪いことばかりでも無いんだろうけどね。

ともあれ、水道事業はこのまま続けても展望が無い所まで来てしまっていて、巨額の税金を投入して設備を更新するという方法もあるのだろうけれど、人口増加局面ではないので、そういった選択肢も悪影響の方が多いと考えられる。
特に、「広域化」を図るには、今のままのやり方ではダメだというのが、政府の考えなのだろう。

ところで、水道料金は、民営化されなければ値上げされないのだろうか??

水質悪化、料金値上げ危惧 民間に運営権 水道法改正案

2018年12月1日 朝刊
 政府は、水道事業への民間参入を進める水道法改正案を今国会で成立させる方針だ。自治体による水道事業の経営悪化や水道管の老朽化に対応するため、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入しやすくするのが柱。野党の多くは、料金値上げや水質悪化を招きかねないと反対しているが、来週にも成立する可能性がある。
何でも反対の東京新聞はこんな事を書いている。
あたかも水道料金の値上げは、民営化されなければあり得ない、みたいな論調だが、そんなことは無いのである。
 高度成長期に整備が進んだ全国の水道管は、約15%が法定耐用年数の四十年を超える。耐震適合率も四割弱。大規模災害時に断水が長期化するリスクがあるとされるが、経営難の事業者には対応が難しい。
 改正案は、経営改善や老朽化対策を進めるため、水道事業の広域連携や官民連携を推進する狙い。コンセッション方式は現行も導入可能だが、自治体が事業認可を返上する必要があり、水道事業で導入例はなかった。改正案は、自治体が事業認可を持ったまま民間に運営を委ねられるようにする。民間は条例の範囲内で料金を設定できる。
問題のキモはここに書かれる通りだが、水道料金値上げ無しで、今後水道事業を維持することは不可能だし、コンセッション方式であれば現行でも可能だ。
3034
これは福島県の水道料金の説明だが、見ての通り増加していることが分かる。もちろん、物価上昇しているのに応じて水道料金も上がっていくのは当然の流れではある。
もう一つ横浜市の例を。
makeilla
一日平均給水量が低下し、水道料金収入も減少傾向にある。面白い話だが、水の使用量が減ったことで、利用量と連動する収入も下がったというグラフである。これが冒頭に紹介した市長の「節水による収入の減少」というヤツだ。
なお、横浜市は人口増加傾向にあるので、人口が減っている地域ではこの影響は更に強くなる。

つまり、設備老朽化の対策を考えた時に、民営化しようと民営化しまいと、水道料金は上げざるを得ないのである。

流れとしては、電力自由化、ガス自由化に続いて水道も民間企業参入が可能となるという話なのだけれど、電力をガス会社が供給するなんて不思議な話が出るようになったように、今回の法改正によって今後は水道も似たような話が出てくるだろう。
でもね、これ、例えば検針員の巡回1つ考えても、1つの所が、電気もガスも水道も検針するほうが遙かに効率的なのだ。

コンセッション方式の採用と、広域化を可能とする水道法の改正は、実は悪いことばかりでもないのが実情なのである。

もちろん、そうは言っても世界的に見れば水メジャーと呼ばれる巨大企業に食いものにされた結果、国民が割を食うみたいな話もある。

一つニュースを紹介しておこう。

あまり報道されない「水道民営化」可決。外国では水道料金が突然5倍に

2018年07月12日 13:43
7月5日、水道民営化を含む水道法改正案が衆議院で可決された。海外では水道料金が5倍に急騰するなどの問題が起きているが、日本国民には十分に周知されていない。
~~略~~
ただ、この水道事業民営化においては、海外ではいくつか失敗例も見受けられます。水道の民営化の失敗例としてよく知られているのが、マニラボリビアの事例です。
マニラは1997年に水道事業を民営化しましたが、米ベクテル社などが参入すると水道料金は4~5倍になり、低所得者は水道の使用を禁じられました
またボリビアは1999年に水道事業を民営化したものの、やはりアメリカのベクテル社が水道料金を一気に倍以上に引き上げ、耐えかねた住民たちは大規模デモを起こし、200人近い死傷者を出す紛争に発展しました。

極端な事例をもってきて「リョウキンネアゲガー!」と煽っている記事だが、しかし、マニラの事例に関してはこんな記事がある。
この記事はpdfなので、引用が出来ていないが、内容的にはコンセッション放棄でマニラ首都件の上下水道事業を東西に分けて民営化した話が紹介されている。
料金の値上げがあった事実に言及されていて、東地域を落札したマニラ水道会社(MWC)は、24時間給水率地区を26%から98%にまで上げたと紹介されている。一方、西地区を落札したフランスの水企業大手スエズは、60%程度までしか改善できていないと紹介する内容となっている。
その代償がこちらだ。
そうした反対を他所に、フィリピン政府は水道事業の民営化を強行した結果、マニラ西地区の水道料金は、公営のときの4倍に跳ね上がり、マニラの東地区に至っては5倍にも高騰してしまったのです。
水道インフラの工事は投資効率の良い地区=一定の人口密度があって中流以上の人々が住んでいる地区が優先され、貧困層では、いくら人口が密集していても、水道インフラ工事は行なわれなかったのです。
https://www.mag2.com/p/money/10990/4

民間企業に任せれば当然こういう話は出てくる。
金持ちの方を優先するというのは「投資効率」という意味では当然だし、貧困層、特に金を払わない層が後回しにされるのも、ある意味仕方が無い。それが嫌なら税金でやれという話になるのだが、「それが出来ない、スピード優先だ!」と民間企業のケツを叩いたからこその、この結果である。
実際に、1997年から2007年までの10年で24時間吸水率地区を100%近く引き上げた点を加味しても、一方的に批難されるような話では無いのである。

ハッキリ言うと、これは民間企業だけの責任でも無く、フィリピン政府の責任でもあるのだ。行政指導を行って、「貧困層の住む地区にも早急に給水施設を作っていけ」「それによって生じた損失は補填する」とやれば、解消する話なのである。


さて、水道法の改正の話に戻っていこう。
僕自身は、水道事業の民営化には基本的に反対である。
寧ろ、半官半民のような形にして、電力会社のような大きな組織にするか、寧ろ電力会社に水道事業を任せて広域化をすれば良いのである。別にガス会社でも良いが。
現状、電力会社は、電力の安定供給に義務を負っているが、水道事業だって似たような形で運用できない理由は無い。

今回の水道事業の民営化において、僕が問題だと思うのは外資が容易に介入可能と言う点である。フランスの「スエズ・エンバイロメント」「ヴェオリア・ウォーター」と英国の「テムズ・ウォーター」の3社は世界の水メジャーとして有名だが、こうした会社が介入してくることももちろん考えられる。
しかしもっと問題なのは、支那の国営企業が日本の水道事業に介入してくることだ。

逆に、日本の水道事業自体は、世界に誇れるほどの技術を有しているのだから、寧ろ日本国内で水メジャーに比肩するような巨大な企業を作れば良いのである。

逆に言えば、広域化や民間企業に運営権を任せる(民営化は誤報である)事そのものは、僕は反対しない。
そして、この話題の問題点は、きちんと報じられていないことにこそある。



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コメント

  1. 施設は行政、運営は民間委託の上下分離と言うか図書館方式でしたねぇ、コレの趣旨としては。
    民間だから安くあげられる、は幻想なんですが、収益を上げるための効率化に動きが早いのもの確か。設備自体の所有権を手放さない、かつ、バスなどと同じく料金認可方式なら問題は少なかろうとは思います。

    そして水需要が減っているのは単に人口減だけでないことも忘れてはいけないんですけどね。
    今や水を「買う」のは当然のように受け入れられていますし、何より、大口の消費者である工場が国内から減ってしまっている。
    海外に移った工場が戻ることは難しいとは思いますが、新しい需要を見つけるか、水輸出でもはじめて収益を上げる時代が来たのではないかと言う感がありますね。

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    返信
    1. 民間企業は「コストカット」という面では有利でしょうけれど、利益を乗せなければなりませんから、基本的には水道料金は高くなる可能性が高いのだと思います。

      ご指摘の点は確かにその通りで、電気にせよ水にせよ大口顧客がいなくなった結果、やっていけなくなった部分も当然あるわけです。

      時代の流れは速く、「水」だけは「聖域」というような扱いは難しい局面を迎えている様には思います。

      少なくとも「今のままではダメ」という話なのでしょう。

      削除
  2. まぁその…こちらで水資源の話で騒いできた張本人です。
    その水源地を買い漁られたり、
    ウォーターバロンが地方自治体の水道設備をてのに反対してきた訳なのですがね。
    実は木霊様の他にも冷静な意見を言うてる学者もいまして、そなれらを読んだ直後でして。
    ぶっちゃけ言うと好き勝手させないように法律で枠をつけるのは必要すが……需要が落ちてるとかは事実なんですね。
    例えば東京で地下水が豊富なのは武蔵野台台地の縁と、高度が海抜50㍍付近で、都内は地下水を汲み上げ過ぎで地盤沈下を起こしてました。木霊様や読者諸兄が幼稚園くらいの時は。
    規制をかけてン十年、も、地下水位が戻るどころかタプタプです。御茶ノ水駅の地下なんざ常時汲み上げないと水没する。
    で、それでも需要ないから、弁当工場とかに使わせてる。
    やはり人口縮小ですね。
    弁当工場で思い出したが、あーいう場所に外人は使われてますね。ゾロゾロ出勤するの見た。
    国は残念ながら縮小してゆく。
    すると財政基盤も揺らぐから、
    放置すると水道も下水もズタズタになってしまう。
    これ地方では大事ですわね。
    規制をかける事は必要ですが、インフラ維持の為には、
    民間も仕方ないのでは?と。
    問題は外国に好き勝手させない法律を追加すべきで。
    南ア共和国でウォーターバロンに売り払ったら、スラムはプリペイド水道にされて、貧しい子供がチフスだかコレラで数千人に被害者が出た事件があります。
    この時に武装解除して解散した元ゲリラOBが、「何とかしないと国外脱出した武闘派を引き入れて、武装闘争を再開する」と政府を脅したんです。
    それで真っ青になって、スラムに無料給水施設や、利用停止を猶予する制度やら
    導入をウォーターバロンに飲ませて内戦を回避したとか。
    これヤバかったらしいすよ。
    日本ですぐにそんな話になるとは思いませんが、これから縮小してゆくのは事実なので。
    今から手綱を絞る手立てを考えるべきで、聖域を維持しようというのは現実的でない。それは仕方ないよなと。
    インフラがズタズタになったら、これも簡単には戻せないですからねぇ。
    あと水を政府が輸出して外貨を稼ぐ事はできないのかな?
    半島付近までなら、長大なチューブに水を詰めて、チューブを布袋で運ぶ実験が成功してるのですよ。10年前に。
    水と食糧とエネルギーを奪い合う時代が来るのだから、逆に産油国ならぬ産水国になる可能性だって棄てるべきではないと。
    ただ資源輸出する時は、軍備を侵略に備えて充実させねば。
    丸腰ならシナやロシアに侵略されます!

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